妄想小説です。BLの意味が分からない&不快に感じる方はブラウザバックでお願いします。
けれど同時に、この猫を失ったことで悲しんでいる誰かの姿が頭に浮かび、その邪な考えを払拭するように首を横に振り、
「やっぱ・・・ダメだよな・・・お前だって・・・飼い主のトコ・・・戻りたい・・・よな」
優しい声色で声を掛けながら猫の頭を撫でていた翔の動きが徐々に緩慢になり、
「・・・・・・」
その手がパタリとマットに落ちたことに気がついたブルーグレーの被毛を持つ猫が、首を上げて翔の顔を見つめていた。
*****
翌朝の午前6時、いつもの時間にアラームが鳴り、翔は頭から布団を被ったままで手探りでスマホを探す。
器用にストップの位置をタップして、
「・・・今日は休みなのに・・・アラーム解除しとくの忘れた」
ブツブツ言いながらそのまままた眠ろうとして、
「・・・あ!」
昨夜、拾った猫のことを思い出して慌てて飛び起きて、掛け布団の中の不在を確認した後で室内を見回し、
「あれ・・・?バスローブがない」
昨日、適当に脱いだはずのバスローブが消えていることを不審に思った。
ベッドルームの扉の開きが少し大きくなっていて、猫はリビングに出たのかとその姿を探そうとして寒さに震える。
猫に不評だった迷彩系のスウェットは諦めて、改めてクローゼット漁ってシンプルなグレーの上下のそれを着て。
リビングに向かおうとして、
「・・・は?」
浴室の中から物音がしていることが翔の耳に届いた。
「・・・猫・・・の、気配じゃない」
その音はどう考えても人為的で、猫みたいな小型の動物が出している音だとは到底思えず。
「・・・泥棒か・・・変質者か?!」
部屋はオートロックで確実に施錠はされたはず。
・・・でも、このご時世。
ハイテクな強盗団的な存在がいても不思議ではなく、翔は何か武器になりそうなものを探して、クイックルワイパーを見つけてそれを手にして身構える。
「・・・誰だっ!?」
意を決して、浴室の扉を勢いよく開けてから威嚇するように声を出した翔。
しかし、
「・・・は?」
そこにいたのはアンニュイな表情で翔が着ていたらしき白いバスローブ を羽織って床に座り込み、片膝を立てて自分を見上げるとんでもない美形。
「・・・エロ」
じゃ、なくて!!
「いやいやいや・・・お前、マジで誰?」
とりあえず攻撃力が低そうなその男に、翔は警戒は解けないものの少しだけ冷静さを取り戻し、けれど距離を保ったままで質問する。
「・・・潤」
「・・・潤って、お前の名前か?っていうか、そういう意味じゃねーんだよ!!」
翔は微妙に会話が成立しないことに気がついて、脱力しそうになった。