翌朝、
オレはいつもより早く家を出た。
ミナミに嫌がらせをいているヤツを
見つけるためだが、早起きは辛い。
眠い目をこすり電車に乗り、
ぼんやりと昨日のことを思い出していた。

昨日は市村たちとカラオケで盛り上がり、
帰宅後は
深夜まで弥生と LINEのやり取り。

男たちとの熱唱も
弥生とのLINEも
どちらもテンションが上がった。

市村たちに「弥生と付き合う」と宣言し、
皆に祝福されたことを弥生に告げると
ーー嬉しいけど、先に私に言って欲しいなーー
と返信が来た。

そうだった!
オレは弥生にはっきりと
「付き合ってください」とか
「好きだ」とか言っていない。
でも、こういうことは
LINEじゃなくて弥生の顔を見て言いたい。

ーー明日、市村さんじゃなくてオレと会える?ーー
ーーはい♡ーー

市村は火曜日に弥生と会う約束をしていたが、
オレの宣言により身を引いていた。

オレはデレデレしてスマホを眺める。
弥生は初めての彼女だ!
こんな素敵な人がオレの彼女だって
世界中の人に言いたい。
見た目は美人、心も美人!
可愛い弥生だ。

だが、
弥生に美由紀のことは言えなかった。
これも会って話した方がいい事だろう。
ミナミの件も言わなかった。
ミナミと弥生は面識もないし
犯人が見つかりさえすればいいことだ。

オレは会社に一番乗りをした。
さて、どうしたものか。
とりあえず、イスに座ってみる。

オレの席からミナミの席は離れている。
途中に2課と1課のデスクがあって
営業事務のデスクはその奥だ。
オレの席からだと右斜め後ろになる。

眠気もあってオレは机に突っ伏した。
そのまま顔を右に向けると…
おっ!
ちょうどミナミの席が見える。
これならオレの行動に不自然な点もない。
万が一、犯人に見つかっても
早出して眠くて突っ伏していたと言える。
バッチリだ。
このまま監視をしよう。

数分後、人の気配がした。
オレは机に頭を押し当て、息を殺し、
目だけキョロキョロと動かした。
ミナミの席に近づいていく。

女性?
課長ではない。
でも、知らない顔だ。
女性は何かを置いた。

誰だ?
まさか、社員じゃない人が出入りをしている?
セキュリティはどうなっている!
オレは犯人を見たというより
知らないヤツだったことに恐怖を覚えた。

誰だか確認しようとしたが、
その女は次に1課のデスクへ、
次に2課のデスクへと移動している。
次は3課、ここに来る!
オレの心拍数が一気に上昇した。

女がすぐ横に来た時、
オレは伸び上がって欠伸をした。
「ふぁ〜〜〜ぁぁぁ」
誰もいないと思っていた女は
ビクッと驚いた。

       《つづく》