今日の愛ルケ(#406) | にっけいしんぶん新聞

今日の愛ルケ(#406)

この記事は渡辺淳一先生の連載小説「愛の流刑地」を記者が個人的な視点で読み解く記事で、性的な描写かなり出てまいります。そのような記述を好まない方、ストーリーをブログ上で知りたくない方、並びに15歳未満の方はご遠慮ください。
と断っておりましたが、最近は性的な描写はほとんどでてまいりませんので、むしろ性的な描写をお望みの方はご遠慮なさったほうがよいかもしれません。
なお、記者がまとめたあらすじ中の灰色文字部分は、作品のテイストをできるだけ伝えるために原文をそのまま引用した部分です。



秋思 十六

============================
さまざまな思いが浮かんでは消えるが、具体的になにかを考えるではなく、独房の端で膝をかかえてもの当てもなく思いに耽る。
============================

もしかして・・・


そのスタンスで作品を書いてらっしゃったりします?


============================
もの思う秋、隔離された世界にも秋の気配は忍び込んでいる「ものの哀れは秋こそまされ」というが、捕らわれの身の菊治は一段と落魄の思いが深まる
============================

独房生活、季節の移り変わりはろくに感じられないはずでしたが・・・。
くわえて、11月の10日も過ぎて「秋の『気配』」というのも違う気がしますが・・・。


============================
膝を曲げて頬杖をつき、似た姿を詠んだ「頬杖に深き秋思の観世音」という句を思い出す。
============================

お。
お得意の俳句シリーズですね。

しかし仮に姿勢が似ていても、仏様とあなたでは物事に対する姿勢はぜんぜん違います。


============================
たしか広隆寺の弥勒菩薩像だったと思うが、秋の日の本堂の奥でひっそり頬杖をついていたあの優雅な仏は、いまも安らかにもの思いに耽っているのだろうか。
============================

弥勒菩薩像の半跏思惟(右足を左脚ももの上に乗せ、頬杖をつく)の姿勢はいすに座らないとかなり難しいと思うのですが、でもそんなことより・・・

観世音(観音菩薩)と弥勒菩薩は、ぜんぜん別物ですよね?

記者、三浦じゅんさんのような仏像フェチではありませんが、これくらいはなんとなくわかります。

もしも観音像と弥勒菩薩像がごっちゃになっているのなら・・・


それはとってもはかしいぞう


============================
親から浄土真宗を受け継いでいるが特に宗教心も深くない菊治が、なぜ仏像を思い出したのか。不安で気持が萎え、なにかにすがりたくなったのか
============================

菊治は仏に縋るとして、では読者はなにに縋ればよいのでしょうか・・・。

連載が終るまで読者は救われないような気がしますが、菊治は56億7千万年後も救われないと思いたいところです・・・。


============================
その夜、夕食後に読んだ新聞には、師走に入ってからの街の慌しさを伝え、早くも一年が過ぎようとしているとあったが、歳月の流れの速さを嘆くのは一般社会の人々だろう。獄につながれた菊治には遅すぎる。
月日の流れが速いと感じるのは幸せで贅沢なことなのか。菊治は遠くなった普通の暮らしを思い出す
=======================ここまで=

歳月の流れは速い。

ええ、たしかに速すぎますよ・・・



秋から師走に移るのが。


秋のもの思いをしていたというのに、その夜はもう師走。
しかも「十二月に入ってからの、師走の街の慌しさを伝え(原文)」って書き方は、記者には1日の夕刊ではなく師走に入って何日か経った日の記事のような印象です。

菊治、「一週間も一ヶ月も、すべてが長すぎる(原文)」などと嘆いておりますが、半端じゃなく短いですよ。
晩御飯を食べたら秋から一気に師走に入っちゃってたっていうんですから。
弥勒様の格好でもの思いをしているうちに、悟りでも開いて時間を超えてしまったのでしょうか。


・・・いや、やはり半端じゃなく速いのは、月日の流れじゃなくて・・・



作者の物忘れのスピードでしょうか?



何話か前との、あるいは前話との間にさえ時間的つながりに無理があることは以前からありましたが、今回はとうとう一話の前半と後半で豪快なスキップが起こってしまいました。
つながらない距離はどんどん縮まり、ずれる時間はますます大きくなる今日この頃、もしも明日の朝刊でこの夜降臨した冬香に第三回公判のことを報告するシーンが出てきたとしても、もはや驚いてはいけません・・・。