清流めぐり利き鮎会で全国最多のグランプリを誇る和良川のアユ。そのアユから見えてきたのが川の流域の健全さだった。このコラムは次回に掲載予定の小国川のアユ、小国川ダム問題への伏線となっています。

 

日本一のアユの川

アユを食べるとその川がわかる。アユは石の上の藻類を餌にするが、春に数グラムで海から上り、秋に産卵して一生を終えるまで、体重は20倍以上に成長する。アユの身体はほとんど川の水から出来ている。では美味しいアユを育む清流はどこなのか、それを全国に問うた釣り人たちがいる。

 「清流めぐり利き鮎会」を主催している高知県友釣連盟は高知を中心とした友釣り愛好家の団体だ。平成11年から、今年で18回、アユの味比べを行ってきた  

その年によって川の環境は異なり、しかもライバルは全国にいる。その中で第五回から出場して3度がグランプリ、他の年も4回準グランプリという川がある。岐阜県郡上市の和良川だ。

 和良川は木曽川の支流。規模としては小さな方で山里の旧和良村の集落の中を流れている。一見なんと言うことはない川である。

 9月網漁に同行した。

川に入って最初に感じたことは、石が丸くすべすべとしていることだった。手でなでる表面に藻類が付いていることがわかる。表面には砂泥が被っていない。そして、丸い石は不安定に河床の礫の上に乗っている。土砂が流れ込むと石は砂に埋まるが、石が浮いた状態であることは上流の山林がよく管理された状態であることを示している。

漁で採ったばかりのアユをいただいた。先ほどまで餌を食べていたアユの内蔵には藻類が入っている。もし、泥や砂が混じっていたらとても食べられたものではないが、歯で感じるのは珪藻類の殻の感触と苦みだった。筋肉にほのかな甘さがあった。アユのことを英語でスイートフィッシュと呼ぶことがあるが、この内臓の苦さが身の甘さを際立たせていた。

内臓ごとアユを食べる。それは上流の山林の状況を感じることだ。アユはその川の自然を表していると味わった。

(魚類生態写真家)

 注)掲載版は誤植と改行のミスがあります。ボクの責任ですが校正を十分にできませんでした。お詫びします。