労働者は会社に身を委ねて生きていけない

労使結託の清算で分社化・転籍・総非正規職化に走るJR東日本

 

 JR東日本とグループ会社の労働者のみなさん。JR東労組がストを通告したことに始まり、冨田社長ら経営陣は、声明をくり返しだして東労組からの脱退を迫り、脱退は1万5千人を超えたと言われています。詰所に監視カメラをつけ、社長声明が乱発される会社とは、まさしく異常な会社です。会社と東労組が一体になって社員管理=労働者支配をしてきた職場の常識は崩壊しています。今は、私たち労働者とはどんな存在なのか真剣に考えるチャンスです。JR東日本に就職して、当たり前のように東労組に加入してきたことを根本的に考え、自分が何をなすべきか、どう生きるべきかを考える好機です。JR東日本が何を考えているか! 組合の分析を表明します。

 

●「大きな転換点、変革期」とは?
 3月1日に冨田社長が出した声明の「大きな転換点、変革期」とは何でしょうか。
 JR東日本は「経営構想Ⅴ」で、今後は「少子高齢化」による鉄道需要の減少は避けられないと言ってきました。そのために「鉄道車両製造事業の海外展開」を新たな経営の柱に据えました。安倍政権の「インフラ輸出戦略」と一体で推進されてきました。価格が半分以下と言われる中国や世界の鉄道会社との激しい国際競争として展開されています。
 しかし、冨田社長自ら「試金石」と言ったタイ・パープルラインは、100億円の赤字を出しました。そのためにJ‐TREC(総合車両製作所)は、外注先をコストがより安い下請会社やフリーランス(個人事業主)に切り替えています。一方では、全業務の外注化を進め、駅業務は分社化寸前まで来ています。郡山総合車両センターもJRTM(JR東日本テクノロジー)などへ全面的な外注化が進んでいます。さらに、メンテナンスの省力化をめざして山手線の新型車両E235系にインテロス(列車情報管理装置)を搭載、自動ドアの設置でワンマン運転を急いでいます。冨田社長は「自動運転化」をめざすと公言し、乗務手当の剥奪まで打ち出しています。
 「大きな転換点・変革期」とは、社員構成も意味しています。あと6年で国鉄採用の労働者がいなくなります。平成採用の労働者と違う点が、団結して会社と対決する経験を持っている点です。国鉄分割・民営化という労働組合破壊を経験して、労組の所属の違いはあっても労働者が団結することの大切さを身にしみて感じた世代です。こうした世代がいなくなることを見越して、労働者の団結を根絶やしにしようという変革期だというのです。
 際限のない人員削減は安全の崩壊をもたらすことは明らかです。一切が「会社(資本)の利益の拡大」に他なりません。JR東日本は、資本として生き残りをかけた危機に直面しているのです。

 

●「業務改革と生産性の向上」とは?
 その突破の道が、同声明の「業務改革と生産性の向上」です。これは「水平分業」「集中と選択」の徹底した推進です。
 鉄道業務を部門ごとの子会社に分社化し、社員を出向・転籍させ、いずれは総非正規職化しようとするものです。ほんの一部のエリートだけの「持ち株会社」=ホールディングスとして、子会社から利益を吸い上げるのが狙いです。
 ますますグループ会社へコストダウン要求を強めるに違いありません。

 これを私たち動労総連合は「第3の分割・民営化」と呼び、反対して闘っています。私たちのJR(JR東日本)‐NTS(JR新潟鉄道サービス)非正規職解雇撤回闘争は、この「第3の分割・民営化」との対決そのものです。外注化された新幹線の検修業務は、4割が非正規職労働者にされ最低賃金ぎりぎりで、JRとNTSは儲けをあげているのです。それは、「第3の分割・民営化」が何をもたらすかを明白にしています。
 解雇された八代組合員の声は、外注化と非正規職化を告発し、東労組からの大量脱退情勢の中で、青年労働者がどう生きていくべきかを明らかにしています。競争をやめて団結しよう、会社の違いを越え、正規職と非正規職が団結すれば、分社化攻撃を打ち破ることが可能です。

 

●あらわとなる経営者=資本家の本性
 冨田社長ら経営陣のやっていることは、明らかに労働組合つぶしです。これは東労組という御用組合ですら邪魔になって切り捨てるものです。同時に、東労組が経営者と結託して自分たちだけ、うまい汁を吸うという路線の破綻が招いたものです。
 今回の事態の核心は、労働者は会社(資本)に未来を委ねては生きられないということです。資本に頼って生きようとしても、資本とは「無制限な利益」を追求します。その人格となって現れたものが資本家=経営者です。目的のすべてが「利益の拡大」です。労働者を過労死するまで働かせ、賃金・労働条件を切り下げ、逆らう者を情け容赦なく切り捨てます。安倍政権が「生産性の向上」を掲げた労働法制改悪を企んでいることと一体なのです。だからこそ、労働者はこの攻撃から身を守るために、資本家から独立して労働組合に団結してきました。東労組はこの鉄則を捨てたのです。資本家に未来を委ねる点では、JR連合も、国労も同じ道を歩んできました。この対極にあって資本と闘ってきたのが、動労千葉と私たち動労総連合です。

 

●「史上最高の利益」? 進むJRの深刻な危機
 「JRは史上最高の利益」と宣伝されています。しかし日々職場で起こっている危機を見据えねばなりません。
 利益の大半は、駅周辺の商店が廃業に追い込まれるほどの「駅中ビジネス」の推進、駅、設備、検修業務まで果てしないほどの外注化が進んだからに他なりません。団交で「外注化によるコスト削減は20%にもなる」と公然と言っています。
 また、北海道・九州をはじめとして地方ローカル線は、廃線となるか、トキめき鉄道のように第三セクター化で自治体へ負担が転化されてきました。さらにワンマン運転を拡大し、車両を軽量化して電力消費を減らしました。こうした止めどころがない「利益の拡大」は、新幹線「のぞみ」の大惨事一歩手前の台車亀裂事故から、「信越線立ち往生事故」(写真右)に至っています。とても公共交通機関を担う会社とは言えません。
 私たち鉄道労働者の誇りは「安全に次の駅(係員)に列車(業務)をつなぐこと」です。この誇りを持てない現実ではないでしょうか。
 もちろんこれは個人の責任ではなく、国鉄分割・民営化で生まれた7つの地域別JRという体制=JR体制が生み出した結果に他なりません。そもそも、JR東日本・東海・西日本の利益は、貨物、北海道、四国、九州のような「赤字」部門を別会社にしたからに過ぎません。国鉄分割・民営化から30年に及ぶ新自由主義による非正規職の増大は、青年たちに低賃金を強いて「少子高齢化」を招きました。それが鉄道需要の衰退をもたらし、JR体制はのっぴきならない危機に直面しているのです。
 しかも、08年には、リーマン・ショック(世界金融大恐慌)で、すべての資本家が大損しました。今、トランプや、安倍が叫ぶ「景気回復」の実態は、公的資金の大量投入による証券バブルであり、崩壊は必至です。こうした中で、トランプは「貿易戦争」と呼ばれるように「アメリカ第一主義」をあらわにして、朝鮮戦争など新たな世界戦争をもたらそうとしています。安倍が改憲を急ぐ理由もここにあります。

 

●資本家なしでも労働者の団結で社会は運営できる

 動労千葉は、ローカル線切り捨てに反対して、千葉県内の地域住民との団結が拡大しています。また、放射線量が高くほとんどの住民が帰還せず、乗務員を被曝させるだけの常磐線全線開通に反対する動労水戸・福島のストライキに多くの共感の声が寄せられています。動労神奈川では非正規の青年労働者が解雇撤回を闘っています。
 これは、「利益の拡大」しか考えない資本家の支配が、社会の発展にとって足かせになっているからです。地域住民がその解決を労働組合に求めています。被曝労働強制への怒りや非正規解雇への怒りを労働組合が体現しています。資本家が存在しなくても、労働者が団結すれば、むしろ立派に社会を運営していくことはできます。労働者の団結こそが、資本の攻撃、支配をうち破り未来を切り開きます。
 韓国の民主労総(民主労働組合総連盟)のゼネストが示したように、労働組合は社会を根本から変える力を持っています。私たちと連帯する韓国鉄道労組は、03年鉄道民営化反対闘争以来の解雇者98人全員の職場復帰を勝ち取りました。原則を貫き、朴政権打倒の政治闘争の先頭に立ち上がった結果がもたらしものです。
 JR東日本とグループ会社で働くすべての労働者のみなさん。動労総連合に結集してこの道を進みましょう。「9条改憲発議絶対反対!朝鮮戦争をとめよう!3・25大行進 in HIBIYA」(13時東京日比谷野外音楽堂)に結集しよう!