こんにちは。

研修コーディネーターの飯島こと日本酒です。

 

講師という職業柄、「説明力」というのは大切なスキル。

私が最初に「説明力」を学んだのは、今から20年以上前になります。

 

新入社員として入った会社では、「制度の内容を契約者に説明する」

機会が多く、ある書店で説明力の本を探していたところ、一冊の本が

目に入りました。

 

そして、その著者が説明力の無料セミナーを行うという情報が耳に入り、

早速申し込み。それが私にとってコミュニケーションの師となる

福田健先生との出会いです。

福田先生からはいろいろなことを教わりましたが、その中で一番印象に

残った話が「旅人と村人」という童話です。

 

『旅人と村人』

 

ある外国の山間の小さな村のできごと。その村は石垣で囲まれており、

その村の入り口には門がありました。そして、その門の横で、一人の

村人が座って休んでいました。

 

すると、向こうから旅人らしき人が歩いてやってきて、休んでいた

村人の前で立ち止まり、こう尋ねました。

 

旅人「すみません。私はこれから、この村を通って、あの向こうの

山の中腹にある村に行きたいのですが、どれくらいの時間がかかるか、

教えていただけませんか。」

 

村人「いいですよ。ただ、その前にちょっとお願いがあるのですが。

あそこに木がありますよね。あそこまで行って戻ってきてもらえませんか。」

 

確かに、少し先に木がありました。

旅人は「何だろう?」と不思議に思いながらも、「わかりました」と言って、

その木に向かって歩み、そして村人のところに戻ってきました。

 

戻ってきてすぐに、村人はこう言いました。

「1時間で行けますよ」

 

これが「正しい説明なんだよ」と、福田先生は話され、続けて言いました。

 

もし、皆さんが村人だとします。そこへやってきた旅人に

「どのくらいの時間で行けますか」と聞かれたら、時間を答えるかもしれません。

 

でも、その時間は誰の足の速さの時間ですか。

 

恐らく、村人である皆さんの速さを想定して答えるでしょう。

しかし、今から山の中腹に見える村に行くのは村人であるあなたではありません。

旅人なんですよね。

 

説明の主語は「相手」。

 

つまり、「相手が知りたいことを、相手がわかるように伝え、相手が正しく

理解できた」ことによって成立するのです。

 

しかし、多くの人は「自分が知っていることを、自分が知っている言葉で伝え、

自分が主体として話す」ケースが多く、「自分」を主語にしてしまいがちです。

 

先の村人がなぜ旅人を木まで歩かせたのか。もうわかりますね。

そう、旅人の歩く速さで説明するからこそ、正しい説明ができるのです。

 

私は20年近く研修講師をやっていますが、この福田先生の話は今でも

私の講師としての基礎となっています。

 

どのようにしたら、相手に伝わるだろうか。相手が理解してくれるだろうか。

常に「相手」を意識した説明を心がけています。

 

 

一方、日本酒は「説明はいらない。飲めばわかる」

という、矛盾な考えを持っている私でございます。