前回、額田王(ぬかたのおおきみ)の歌を取り上げました。
あかねさす 紫野行き 標野行き
野守は見ずや 君が袖振る
これに対して、大海人皇子(のちの天武天皇)は、こんな歌を返しています。
紫草の にほへる妹を 憎くあらば
人妻故に 我れ恋ひめやも
紫草が匂い立つように美しいあなたが、人の妻になってしまったからと憎いなら、
どうして私が恋しく思うだろうか。
彼女の夫 天智天皇の前で、けっこう大胆な態度ですね。よく言えば、豪胆で、悪く言えば、先のことまで考えない、軽はずみな人なのでしょうか。天智天皇によって粛清された人は数知れず、この天皇は怖い人です。怒らせたら、命の危険もあります。実際に、一触即発の場面もあって、中臣鎌足が仲裁したと記されています。
でもまぁ、それだけ、額田王への愛情が大きくて、王朝ロマンなのよ、と言われれば、そうなのかもしれませんが、、、![]()
他には、こんな歌を詠んでいます。
み吉野の耳我の嶺に時なくぞ 雪は降りける 間は無くぞ 雨は降りける その雪の 時なきがごと その雨の 間なきがごと 隈もおちず 思いつつぞ来こし その山道を
淑き人の 良しとよく見て 好しと言ひし 吉野よく見よ 良き人よく見
我が里に 大雪降れり 大原の
古りにし里に 降らまくは後
み吉野の 御金が岳に
間なくぞ雨は 降るといふ
額田王に捧げた返歌の他は、上記のように
「よき、よし、よく、よし、よし、よく、よき、よく・・・」 と、いわゆるオヤジギャグのような駄洒落か、
「雪は降る・・・」「大雪が降る・・・」
「雨は降る・・・」 という湿っぽい![]()
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淋しい歌です。
「・・・人妻ゆえに 我恋ひめやも
」の歌の、ロマンティックな情熱は全く感じられませんね?
吉野から、兵を挙げて、壬申の乱を戦った、勇ましさもないです。本当に、あれは本人の作だったのか、それとも、小説のように創作して演出したのか、と疑ってしまうくらいです![]()
天武天皇の、世間の評価は、ちょっと持ち上げ過ぎで、実際は、
しっかり者の 讃良(さらら)妃(持統天皇)に、お尻を叩かれていたような気がします。
壬申の乱も、そうで、讃良妃率いるヤマトの勢力や、加勢した東国の兵に担がれた戦いだったかもしれません![]()
夫唱婦随ではなく、婦唱夫随、と、武澤秀一氏も、古代史の著書にそう書いておられました。
私もそういう印象です。
吉野に行くのも、壬申の乱の戦いも、讃良妃は、夫と行動を共にしていて、
さすが、天智天皇の娘だけあって、だ~いぶんしっかりした行動的なお妃様だったことがわかります。
それに対して、何事もあんまりやる気は無くて
「奥さんが言うならそうしようか、、、しょうがないなぁ、どっこいしよ」なんていうタイプが、私の思い描く天武天皇のキャラです。
本人には、本当は戦をしてまで、天下を奪い取るような、野心は無くて、天智天皇亡き後、
未亡人になっていた額田王が帰ってくるなら、まぁ、それもいいか、というくらいだった、かもしれません?![]()
飛鳥浄御原宮も、お飾りの夫に代わって、若いお妃様がテキパキと取り仕切っていたような気がします。想像ですけれど。
いかがでしょうか?
お読みいただいて、ありがとうございました![]()
