現代ビジネスより 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180911-00056867-gendaibiz-int&p=1

 

 

長文ですので一部転載です

 

大きな違い、ペットショップという存在

ここまでドイツ、ギリシャの実態を紹介してきたが、さらに両国ともに「犬猫の生体販売をするペットショップがほとんどない」ということはご存じだろうか。

 ドイツにはペットの食料やグッズなどを販売するペットショップはあるが、生体販売はほぼ皆無である。犬や猫などが入れられるケージの広さに基準となる数値が、法的に定められているからだ。違反者には法的に罰則が設けられている。これによって実質的にペットショップでの生体販売は難しくなる。なぜなら、採算がとれないからである。

 

 

ブリーダーも存在はするが、繁殖の制限は法律で定められているので、劣悪な状況下で繁殖が行われていることはまずない。また8週齢未満の子犬や子猫を親や兄弟から引き離してはならないという「8週齢規制」が定められている。そしてブリーダーやペットショップはライセンス制であり、資格がある者しか動物取扱業を営むことはできない。

 ギリシャでも2004年アテネオリンピックの前年に犬の繁殖の制限や8週齢規制、動物取扱業のライセンス制などは法律化された。厳しい罰則が定められていなかったために生体販売を行うショップは存在していたが、12年、14年の動物保護管理法の法改正で飼育条件の細則が定められ、違反に対する罰則が強化された。

 

法改正後、全国で犬猫の生体販売をするペットショップは年々減っていき、現時点においてはほぼ見当たらなくなった。また、2012年の法改正では、欧州で初めて、サーカスなどでのすべての動物の商用利用を禁じた。これはドイツ連邦動物保護同盟にも高く評価された。

 一方、日本はといえば、多くの先進国で定められている繁殖の制限、8週齢規制、動物取扱業のライセンス制がいまだに実現していない。つまり、大量に犬猫を殺すことになりかねない流通過程や構造的な問題点が規制されていないままなのだ。よって悪質な業者が何度も繁殖をさせて、“大量生産”し、行政に売れ残りを持ち込むという事態が起こっていた。

 

法改正で行政に持ち込めなくなると闇の「引き取り屋」に持ち込んだり、大量に遺棄するという犯罪行為を行う業者もいる。「動物の命を大切にする」という感覚よりも、いかに売りさばき儲けるかというビジネス感覚が支配している。

 2016年5月、NHKの「クローズアップ現代+」でもペット流通の問題が取り上げられた。それによれば、犬猫を合わせたペット市場の規模は年間1兆4000億円にも達するという。最近の出版業界の市場規模と同程度であることと比較すると、いかに巨大な市場なのかがわかるだろう。2020年にオリンピック・パラリンピックを行う日本で、このアニマルウェルフェアの意識の低さを見て、世界の人々は何を思うだろうか。日本は動物保護のための法規制に向けて舵を切らなければいけない時期にきているように感じてならない。

 

 

東京五輪を前に、日本人が考えるべきこと

もちろん、日本でも動物保護の機運は一部で高まって来ている面もある。

 動物保護に対する基本的な法規制がなされないなかでも、日本では、多くの動物愛護団体の人々が保護犬や保護猫の施設を運営し、日々レベルの高い保護活動を展開している。

 

どこの団体にも所属しない個人ボランティアの地道な活動も忘れてはならない。多くの著名人が呼びかけ人として名を連ねる「TOKYO ZEROキャンペーン」のように社会にインパクトを与えるものも多い。日本の動物愛護運動に関わる人々は、アニマルウェルフェアの知識も深く、法規制の必要性を世間にアピールしている。それなのに、8週齢規制などは 毎回頓挫する形に終わっているのは、なぜなのだろうか。

 私なりにその理由を考えると、日本では、犬猫を飼っている動物好きな多くの“普通”の日本国民を巻き込む形で殺処分ゼロ運動が展開されていないように感じる。私が日本で取材した動物愛護団体のなかには、驚くことに、「菜食主義ではないと動物保護活動をする資格がない」という考えの人もいた。しかしそんな考え方では、大多数の動物好きな国民を動物保護運動から遠ざけてしまうだけだ。

 

ギリシャで取材をした動物保護団体には、徹底した菜食主義者もいたし、肉食はするが、犬猫の殺処分や不必要な動物実験には反対だというように、様々な意見の人々がいた。それは当然のことである。たまに激しい議論を交わしつつ、どこまでを許容するかという線引きは異なっても、わだかまりを持たずに一緒に活動している。

 また、アテネ市の場合は、市役所の動物保護課が民間の動物保護団体、獣医師会などと協力して、反対派市民に根気強く説得を行っていた。財政危機のさなかでも、官民一体の協力体制が殺処分ゼロを支えている。時には行政がリーダーシップを発揮したり、民間の動きに呼応することも大切なのだ。

 

日本の行政の動物愛護センターや民間の動物愛護団体の活動がどんなに意義のある活動をしていても、バラバラに活動を続けていては、広く日本国民の理解と共感を得て大きなムーブメントにしていくことは難しい。法改正を実現するほどの社会変革を成し遂げるには、動物保護活動が官民一体の協調的な運動にまとまっていくことが必要不可欠だと感じる。行政や経済界も、命に関わる問題については、国際感覚を持ち、経済性優先の感覚から脱却していく必要がある。

 

・パラリンピックを前にして、そろそろ日本人も真剣にそのことに向き合うべきだと思うのである。オリンピックもちろん、私は単純に「ドイツに学べ、ギリシャを見習え」と唱えているのではない。ドイツやギリシャにも負の側面はあり、本書ではそれらについても記している。外国の良い例だけ引っ張ってきて紹介し、それと比較して日本の状況を批判するのは公平ではなく、犬猫殺処分ゼロを目指していく上で、本当に役立つアイディアが生まれて来るとは思えない。いかにして外国から良いヒントを得て、日本の現状に合った法制度を構築していくのか。2020年の東京

 

 

 

 

有馬 めぐむ

 

 

 

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