江青に妬まれた女  | アジア読書

江青に妬まれた女 

譚 〓美
江青に妬まれた女―ファーストレディ王光美の人生

王光美の伝記なんだけど、何だか中国で山と出てるネタ本から拾い集めたという感は否めない。一応、本人にも会っているらしいが、王光美ももうだいぶボケが来てるらしく、まともな取材とはいかなかった様子。ただ、やはり著者が畏敬してしまっていて、お決まりの聖人君子仕立ての枠からは出ていない。当時の延安において52歳の党幹部と26歳の通訳の結婚が何を意味するのかはもっと掘り下げてみるべきだが、その辺は察してくれということなのだろうか。大躍進や文革についてはかなり自由に書いているのだが、それ以前のタブーは革命を否定することになってしまうので難しいところなのだろう。収穫としては、あのピンポン玉批判大会の詳細が分かったこと。何でもビデオが残っているそうで、著者は北京の放送局でそれを視たという。うらやましい。この本のメインとなるべき箇所なのだが、なぜか写真は掲載されていない。私は紅衛兵に連行されるピンポン玉ネックレスとサイケサングラス姿の王光美を捉えた写真を初めて見た時、何とも言えない衝撃を覚えたのだが、同時にそのキッチュさに惹かれてしまった事を白状しよう。中韓の青年や日本の「進歩派」の人たちはよく小泉に犬の格好をさせているので、「日本革命」が万が一成功したら、安倍とかも一緒に着ぐるみで批判大会にかけられるかもしれない。そして、「反革命」が起きたら、野中とか加藤なんかは人民服姿にされるだろうし、谷垣はチャイナドレスのダッチワイフを抱かされるかもしれない。そんな人民裁判がこの国で拝める可能性はほとんどないが、ああいう熱狂の渦に身を置いてみたいという願望は、どれだけ文革の悲惨さを聞かされても消し去ることができない。結局、戦争のメカニズムもそういうところから来てるのだろう。やはり人間とは困った生き物である。