1953年(昭和28年)に開湯し、かつては 「東海の熱海」 と呼ばれた 西浦温泉街....。
日本の高度経済成長時代、温泉街へ押し寄せる人の波が途切れる事無く、それはまるで繁栄を謳歌する、眠る事を知らない不夜城の如くであったという....。
あれから半世紀近くが経ち、かつての 「東海の熱海」 は今......今回は 愛知県蒲郡市西浦にある 西浦温泉街 を取り上げます。
< 機材紹介 >
ボディ : Nikon Nikomat EL ブラック
レンズ : NIKKOR-H Auto 28mm F3.5
フィルム : FUJIFILM SUPERIA X-TRA 400
< 西浦温泉街アーチ >
西浦温泉街入り口には 「歓迎 西浦温泉」 と書かれた錆びついたアーチがあり、 「遠き昭和の風情」 を感じます。
・撮影場所 : 温泉街入り口 バス専用のロータリ前にて
入り口アーチを裏側から撮影
< 西浦温泉観光センター >
温泉街ゲートを入った直ぐの左脇に 「西浦温泉観光センター」 があります。
この場所は大型バスの乗降場所にもなっており、西浦温泉街が賑やかだった時代は、何台もの大型バスが絶える事無くこの場所に横付けし、この場所から沢山の人々が、各々目当ての温泉旅館へ向かった事でしょう。
< 中規模廃ホテル?その1 >
西浦温泉旅館共同組合の道を挟んだ向かい側にあり、温泉街入り口真正面に老朽化の目立つ建物がある。
立地場所といい建物の構造からしても、遠い昔は中規模な観光ホテルであったと思われる。
賑わいも消え風化が進んだ建物の、閉じた窓は固く締め切られており、ツタに覆われた建物内部には人の気配は無い.....。
・撮影場所 : 中規模廃ホテル?正面入り口側にて
左隣の覆いかぶさる様に立つ観光ホテルは 「和のリゾートはづ」
< 廃墟建造物 >
温泉街の高台にそびえる大規模ホテル 「東海園」 の直ぐ横には、坂の斜面に沿って建てられた廃墟が残る。
建物上部は駐車場として使われているものの、通りを過ぎる人々に、その姿を晒している。
・撮影場所 : 廃墟建造物を道沿いから
< 太平洋戦争資料館 >
個人の方が収集した、第二次世界大戦時の軍服や手帳、鉢巻に戦中千人針など500点以上の資料を集めた太平洋戦争資料館。
2008年1月15日にオープンし、年中無休・入場料無料、営業時間は午前9時~午後6時まで。
入り口脇には 「国内唯一33センチロケット弾」 「紙製鉄帽」 「貝製おたま等代用生活品」 「特攻隊員ハチマキ」 「御賜盃」 「タバコ」 と記載が残る。
ただし2015年現在は閉館中.....。
建物脇の積まれたコンクリートブロックには 「太平洋戦争資料館S.20」 と書かれていた。
・撮影場所 : 太平洋戦争資料館前にて
< 旅館 淀 跡 >
西浦半島の中心にあり、廃墟となっている 旅館 淀 です。
(昭和31年築 木造2階建て 地下付き)
他の大規模ホテルとは違い、営業していた当時は家族経営の小規模旅館でした。
・撮影場所 : 旧旅館 淀 通り沿いにて 全景
ここ西浦温泉の歴史が、1954年(昭和29年)湯元西浦温泉株式会社の設立からであり、それから2年後の昭和31年築となると、隆盛を極めた華やかし頃の温泉街を記憶する建物なのかも知れない。
放置されて荒れ果て、屋根も半分以上飛んでしまい、風に舞ったそれらが車両に当たるとの事で、2010年頃ブルーシートを掛けて養生をしたとの事だが、5年経過した今は意味を成していない。
・撮影場所 : 旧旅館 淀 駐車場にて
元の所有者の方は既に他界し、相続人と呼ばれる方も、もはや地元にはいない.....。
時と共に風化も進み徐々に原形を失っていく 旅館 淀。
・撮影場所 : 旧旅館 淀
蒲郡市有地に建つものの、建物は個人の所有物であり、行政代執行も難しいと言う事で、これからも西浦温泉の歴史を静かに見守ってくれるであろう....。
・撮影場所 : 旧旅館 淀 より三河湾
< 野島苑 跡>
野島苑(のじまえん)です。
1992年5月の 「月間ホテル旅館」 という書籍にも登場します。
内容は 「戦う小規模店シリーズ209 旅館 野島苑 愛知県・西浦温泉」 という事で、バブル崩壊後に人足が遠のき始めた時代の、生き残りを賭けた奮闘振りを感じさせる。
・撮影場所 : 野島苑正面玄関前より
しかし1990年代後期には閉鎖となり、既に15年以上廃墟として晒されている。
閉鎖となった理由として 食中毒事故 が出たとも噂されますが、実際の所は分からず。
・撮影場所 : 野島苑 道沿いから
西浦温泉に現在8つ残る大規模ホテルでも、生き残りを賭けて戦う時代.....。
閉鎖され幾年月、建物の劣化も激しく、もはやホテルとして再起を果たすのは難しいであろう。
野島苑は土地建物共に個人の所有物であり、所有者の方も未だ健在であるとの事。
・撮影場所 : 野島苑正面玄関反対 スナック前にて
人の出入りが途絶えると徐々にツタに覆われ、その緑が日に当たり美しく光る。
・撮影場所 : 野島苑 正面玄関
人々が押し寄せた時代....それは幸福だった時代....人が去り今では静かに緑が生い茂る。
・撮影場所 : 野島苑 裏側から撮影
< 野島苑前 野島苑倉庫 >
野島苑の道向かいには、古い旅館風の建物が残る。
こちらは 野島苑倉庫 だったとの事だが、構造上、昔は小規模な旅館であったかも知れない。
・撮影場所 : 野島苑倉庫
1965年(昭和40年)前後に建てられた、巨大な鉄筋コンクリート製の大型ホテルとは違い、それより遥かに前時代的な小規模かつ木造作りの旅館は、もはや珍しくさえ感じる。
・撮影場所 : 野島苑倉庫
西浦半島の先端に位置し、目前に海が広がる西浦温泉街。
海と自然は美しく これまでも これからも 姿を変える事は無いでしょう。
対して 人間が作り上げた物は これまでも これからも 時代時代で移り変わってゆく事でしょう。
かつての時代の様な、多人数が大型バスで温泉街へ乗り付け、畳の大広間にお膳を並べて舞台で余興をし、全員で歌を歌う様な、そんな時代を懐かしく感じた....そんな愛知県蒲郡市 西浦温泉街廃墟探訪記でした。
......おしまい。