スマホ全盛でiOS, Androidアプリで定評のあるiRealBがジャムセッションの特に歌伴で重宝しているようです。理由としては、コードが大型に表示され見やすく、且つ移調が容易だからだと思います。
しかし、よくできたツールも使い方を間違ったり頼りすぎたりすることで本来のジャムセッションやジャズの演奏、ジャズの勉強に支障をきたすことが懸念されるので少し書きます。
1. 知らない曲をiRealBで演奏することのリスク
これは、あくまで曲を知っている上でコード進行のみ曖昧な場合のツールとしては最適ですが、曲を知らない場合は絶対に使うべきではないと思います。似たような例で、音符が一切書いていないコードのみ記述のリード譜を渡されたときのようなことで想像できます。
譜面を渡したボーカリストやフロントが、途中で曲の入りを間違えたり1行飛ばしたりというようなミスを犯した場合、その曲を知らなけらばどこを同間違えたのかが判断できないため、完全に曲が崩壊します。アドリブの場合は、使っているフレーズである程度はコード進行を判別する能力のあるピアニストもいるでしょうが、ボーカルにいたっては単音で長く音符を取るためほぼ判別不可能と思います。
2. 長尺の曲に関してリピート指示がかなりわかりにくい
1コーラスが32小節より少し多いくらいなら問題ありませんが、64小節となどになってくるとどうしても1ページに収めるためにリピート記号を使わざるを得ません。リピート記号は回数間違いなどを誘発するのでそもそも好きではありませんが、仕方なく書くとしても3番カッコまで現れたりするとかなり混乱します。最も混乱するのはABAのパターンの最後のAをダカーポやダル・セーニョで記述し、リード譜の真ん中にフィーネがあったり、コーダに飛ぶような譜面は、そもそもどこがワンコーラスなのかの判別も困難になります。Invitationなどが良い例です。コーダが最後だけなのか毎コーラスなのかもわかりません。
リード譜はたとえ2ページになったとしてもリピート関連記号を多用しないことの方が大切だと思います。
3. コード進行をインターバルで覚えなくなる
かつてiRealBが無いころは、曲のコード進行や転調パターンをインターバルで覚えざるを得なかったと思いますが、iRealBを安易に使うことによってその感覚が完全に抜け落ちることが問題です。
例えば転調が無かったり、平行調のみの場合は、1-6-2-5とか1-4とかでコード進行を覚えたりすると思います。また、転調がある場合は、例えば「サビから4度上に転調して3度のマイナーコード」とかで覚えるのではないかと思います。
そのあたりの前からの脈絡で曲を覚えない場合には、仮にiRealBで演奏できたとしてもそれぞれのコード、パターン、転調部分がバラバラに存在してしまいます。以前にも書きましたが、譜面に頼りすぎる演奏は運転で言うところのカーナビに頼って運転するのとよく似ており、カーナビにしたがって運転しても、どのようにして目的地にたどり着いたかの記憶も印象も皆無となってしまいます。
現在自分もピアノを練習しているところです。また歌伴でスタンダードの移調したものを即時に演奏する機会も増えました。緊急でない限りはできるだけiRealBに頼らず、脳内で移調する訓練をしようと思いますし、今後セッションホストなどを行うことのある人にはiRealBを捨てていくことを目指してもらいたいものだと思います。