二期会「チャールダーシュの女王」@日生劇場 2014.11.26 | リーベショコラーデ

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thoughts about music and singers

青木氷雨強風の中、水曜日の14:00からという勤め人は来れない時間帯にどうしてするかなぁの日生劇場へB組を観に行きました。湯浅桃子ファンクラブ会員としてはA組ですが、9月20日に観たプレコンサートで初めて観た醍醐園佳(だいごそのか)さんのシルヴァをということでこちらにしました。

 


日生劇場と言ったら2012年の日生劇場50周年記念公演「フィガロの結婚」を観に行く予定だったのがお目当の歌手さんが妊娠で降板したため行かず今回初めて行きましたが、素敵な劇場です。デザインが昭和レトロのモダンなんですね。サイズも大き過ぎずオペラハウスとしては理想的と思いました。平日の昼間で天候も非常に悪いのに八割方席は埋まってました。(天気が悪いから行くのはやめるという人はいないと思いますが)

アメブロのブログはどんな検索語で何人が見に来たかというのが翌日の朝分かる仕組みになっているのですが、「チャールダーシュの女王 感想」という検索語のアクセスが月曜日から激増しました。



それじゃ書かずにはいられません。

9月20日に観たプレコンサートのブログで「この演出家(田尾下哲さん)は読み替え否定論者のようです」と書きましたが、その公演はバリバリの『読み替え』だったのには呆気にとられました。

第一幕のシルヴァとエドウィン(侯爵の息子)が初めて舞台で顔をあわせるシーンでシルヴァがいきなり自分のことを「チャールダーシュの女王」と言いだすのです。

どこがおかしいかというとシルヴァのことを原典では(というか本物のオリジナル台本は無くなっているそうですが)「侯爵夫人になり損ねた」という意味でCsárdásfürstin(チャールダーシュ侯爵夫人)と呼んでいるのであって「女王」という単語は一度もどこにも出てこないのに日本にオペレッタを紹介した人が意図的にチャールダーシュの女王と誤訳したという経緯があることを書きましたが、それをシルヴァに自ら名乗らせる、というのは「日本で既に広まってしまったタイトル名を無理やり話の筋に埋め込もうとした結果の苦肉の策」であることは明らかでしょう。どこが「原典に忠実」? 

二幕でシルヴァが「私たちは決して結ばれることはない。本物の王族と名前だけの女王、チャールダーシュの女王...」という長ゼリフも説明的に冗長で違和感たっぷり。私が「チャールダーシュの女王」は誤訳だと書いた10月13日の直後、二期会はメルマガでこんな事を書きました。

Vol.217 2014.10.17. Fri.
━★『チャールダーシュの女王』特集《4》★━━━━━━━━━━━━━
 “チャールダーシュの女王”とは?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆私、つい最近まで「ちゃーるだーしゅのじょーおー」と発音していました。
 正しくは「じょおう」。そうです、「女王」を「じょーおー」と発音する
 のは間違いだったのです!

 では、タイトルになっている「チャールダーシュの女王」とは誰なのか?
 ご存じの方も、最後までおつきあいください。

 原題を直訳すると「チャールダーシュ侯爵夫人」。

 役名はシルヴァ(シルヴァ・ヴァレスク)、ハンガリー・ブダペストの
 劇場のプリマ・ドンナです。
 『チャールダーシュの女王』は、第1幕ブダペストの劇場のシーンで、
 歌姫シルヴァがアリア「山は私のふるさと」歌うところから始まります。
 まさにチャールダーシュの音楽で作られた、とても印象的な曲です!

 さて、このシルヴァには、恋人がいます。
 ウィーン貴族の御曹司、エドウィンです。
 シルヴァは、エドウィンとの身分違いの結婚を望んでいました。
 「チャールダーシュ」の「侯爵夫人」というのには、ハンガリーの歌姫が
 ウィーンの貴族の家に嫁ぎたいなんて…という、皮肉が込められてます。

 でも、このオペレッタは、そんな皮肉めいた悲しいお話ではありません!
 シルヴァもエドウィンも想いは真剣です。二人の恋は成就する…はず!
 シルヴァが誇らしく「チャールダーシュ」の「女王」となれますように!
 [Y]



私のブログを読んであわてて書いた?(^^;

この一幕の最初のシルヴァのセリフで「この公演は原典に忠実ではない」と結論が出ましたが、それに続く演出もボニ伯爵が椿姫のアリアを歌ったりブラームスのハンガリー舞曲が演奏されたり締めはカルメン。。。詳しい人向けのくすぐりという意図かもですが言ってることとやってることが違いませんか?


違ってても作品として良ければ結果オーライなんだけど、まずワルツの音楽がダメです。
ワルツっていうのは小学校で「三拍子」と習って三角を空中に描くように覚えさせられたものですがワルツは三拍子ではない。「2001年宇宙の旅」でカラヤンのブルーダニューブを聴いた時の衝撃は忘れられませんが、人間というのは「揺らぎ」に色気や魅力を生理的に感じるものなんです。


全然三拍子じゃないでしょう?


この指揮者(三ツ橋敬子さん)は、そのウィーンの本物のワルツを歌手が歌うときに演奏してしまった。本場のワルツはテンポが揺れ揺れで、タメて伸ばして緩急自在です。それを歌唱の伴奏でしてしまったら歌手と呼吸が全然合いません。ズレズレです。どっちが主役なのかわからない。あのテンポで歌われたらなんだか演歌を聴いているようです。都はるみの「アンコ椿は恋の花」という歌はアンコーをどこまで伸ばすか分からない、というところにサビがあるわけですが、シルヴァが演歌歌手というのは、チャールダーシュも演歌だからそれを狙った、とは到底思えず。。。この指揮者はワルツだけ演奏させたら素晴らしいが伴奏は勉強不足(経験不足)と思います。

あと、ダンサーのまずさ。
楽日だというのに振りを間違えてるのがいるし、シルヴァを男性たちが持ち上げるシーンが第一幕にありますが、いかにも重そうにジリジリとやった。あれはダメでしょう。あれはキレ良くスパッ!と持ち上げなければ。御神輿を持ち上げてるんじゃないんだから、男性の力強さとシルヴァの華やかな姿を見せるシーンなのに本当に重いのか(つまり男性の力不足)今まで練習中にうまくいかなくて慎重になったのか、あれはシロウトのレベルでした。

などなど一幕で立て続けに(セリフを噛んだ歌手もいるし)ボロボロでひきこまれる所がありません。

個々の歌手は悪くないんです。しかし、使い方がよろしくありません。オペレッタというのはハチャメチャな楽しさがどこかになければいけない。最後に恋人たちが結ばれる感動シーンが目的ではない。このオペレッタだって戦争の時代にそれと真反対の楽しさを求めて人々が見に来たという時代背景があるんだから、楽しさに観客が巻き込まれるような「刹那的な=明日死んでも思い残すことのない」演出をしなければならないはずです。(そこがオリジナルに忠実という事の本来の意味のはず)

その事をわかっていたのは高田正人さんと峰茂樹さんです。アドリブも上手く、この二人が主役かのように演技してくれるのでエドウィンなんか存在感が霞んでます。みなさん、歌手は総じて「真面目すぎ」。ちょっとコミカルさがうまかったのは青木エマさん。この方は今ひとつ「自信」というものを発散していない人ですがそれは本人にそういう指導をする人がいないからで、やらせればもっと輝く人だと思う。華もあるし「なぜ青木エマにシルヴァをやらせなかったのか」と思います。ミスキャストと感じました。

踊りも歌手さんが一生懸命練習しただろうのはわかります。みなさん真面目ですから。でも、ワルツは足運びがまったくできていなかった。ワルツって、踊りの中では非常に難しいんです。日本人でワルツを踊れる人はプロ以外にほとんど皆無でしょう。生活の中にまったく無いし、半年や一年の練習でできるようになるものではありませんから。この演目は日本人にはとってもハードルが高くて、今回は越えられなかった、というのが実感です。

一方、良かったのは合唱。あれだけは舞台が晴れやかで清々しくなりました。二期会の最良部分です。

それから、二期会の歌手が舞台上でキスするのを初めて見ました。私が「日本のオペラ歌手はキスの演技さえできない人ばかり」と書いたのをお読みになったからさせました?(^^;

最後にアンヒルテが初めて歌ったのがカルメンですが、最後の高音が出ませんでした。明らかに「もう声が出ません」という舞台姿です。あれで「これで現役復帰」とは説得力ありません。

演出がみんな力不足の公演でした。感想は「まあまあ良かった。でもハチャメチャな楽しさは全然なかった」同行のにゃーも頷いてました。(本当は彼女はもっと厳しいことを言ってましたが「書かないでね」と言われたので割愛します)


なお、冒頭は「シルヴァがアンコールを8回歌わされて倒れる」という、見たことのない演出でしたが一流の興行師は稼ぎ頭の歌姫をそんな使い方するはずがありません。歌手のちからだけに頼って「興行を支えるスタッフがいない」という東京二期会の現実を反映したプロダクションのように思えてなりませんでした。



厳しいことを書きましたが「歌手を伸ばす」ことを二期会に考えて欲しいというのが趣旨です。
30歳で二期会デビューていうのは遅いでしょう。「上が詰まってるから」ではダメなんです。
スターを意図的に創らないと新しい観客は掘り起こせませんよ。
私が将来スターになれると思う二期会の歌手は、




秘密にしておきます。


最後までお読み戴き有り難うございました。



■ 追記
ハチャメチャの楽しさ、これが本当のCsárdásfürstin!という映像があったので載せます。
なんとWien Volksoperの日本公演!1985年東京文化会館での公演だそうです。


見たことありませんでしたが、これぞ本物。
楽しくてノリノリになって、感動して涙出ます。