東京二期会公演「チャールダーシュの女王」を観に行くので予習として
先日来日公演を見たメルビッシュ湖上音楽祭のDVDを観ました。
出演:
シルヴァ・ヴァレスク(チャールダーシュの女王): ヴェーラ・シェーネンベルク
エドウィン・ロナルト(侯爵夫妻の息子): フェルディナント・フォン・ボートマー
伯爵令嬢シュタージ(侯爵の姪):ケルスティン・グロトリアン
ボニ・カンチァヌ伯爵(エドウィンのいとこ):マルクス・ヴェルバ
レオポルト・マリア侯爵(領主):ハラルド・セラフィン
アンヒルテ(その妻、昔の歌姫):ミルヤーナ・イーロッシュ
フェリ・バーチ(貴族で大佐):フリディエシュ・ホルシャーニ
メルビッシュ音楽祭管弦楽団、メルビッシュ祝祭合唱団
指揮:ルドルフ・ビーブル
演出:ヘルムート・ローナー
収録:2002年、メルビッシュ音楽祭(ライヴ)
12年も前ですが、指揮者は先月来日したルドルフ・ビーブルご本人。
さすがに6000人の観客が入る劇場なので
やっぱりマイクで歌っていました。すべての公演はマイク付きでしょう。
来年日本で「こうもり」をメルビッシュ湖上音楽祭史上発の海外公演するそうですが
これでは演出が同じの筈がありません。違う演出のものを日本で観る意義があるのか...
それは本題ではないので割愛。
つまりこれはミュージカルです。
踊りがたくさんあって、日本人には大変だろうな~と予想されます。特に歌手で生きてる人は踊りながら歌うのは苦手が多いそうですから。【某歌手さんに聞きました】
さて、セリフ(日本語字幕)がとっても違和感があったのでそれを書きます。
劇中で「チャールダーシュの女王」という言葉が(日本語でですが)初めて出て来るのは
第2幕、開始から一時間16分あたりです。アメリカで主人公「シルヴァ」を観てきたローンスドルフ男爵が「あの女はブタペストで貴族に振られてそれ以来『チャールダーシュの女王』とあだ名がついたんだよ」と、一同を笑わせるのです。
え~っ、それって、褒め言葉じゃないの?
「女王」が侮蔑語になるとは思えない。「演歌の女王」でしょう?日本語なら。
このときセリフは『Csárdásfürstin』と言っていましたが実はこれがこのオペレッタの原題なんですね。(Die Csárdásfürstin)
これは字幕の間違いでしょう。
Csárdásfürstin というのはチャルダーシュ侯爵夫人ですよ。
(ドイツ語は漢字みたいに名詞をくっつけて新しい名詞を作れるのでCsárdásfürstinはCsárdásチャルダーシュとFürstinをくっつけただけで、Fürstinは辞書にもありますが「侯爵夫人」です)
だからここはハンガリーの歌姫が貴族(主人公エドヴィンのこと)に振られて将来の侯爵夫人になりそこねて「チャールダーシュ侯爵夫人」という渾名がついた、と嘲っている場面なのです。だからここを「チャールダーシュの女王」と言ってしまったら全然ストーリーに合わないんです。
誰が聞いてもこのセリフ(日本語の)はおかしいでしょう?
そもそもこのオペレッタで主人公「シルヴァ」はなんと呼ばれてるか(ドイツ語で)というとChansonette(シャンソネッテ=女の歌手)とかFräulein(フロイライン=お嬢さん)であって「女王」なんて呼ばれる事は一度も無いのです。フロイラインなんて今のドイツでは死語ですが昔のフロイラインは処女が当然の若い娘のことです。もしかしたらこの歌手は十代でもおかしくない。劇中で二人の事を「ロミオとジュリエットのよう」というセリフもありますがジュリエットは13歳です。
「チャールダーシュの女王」という訳をだれが書いたか知りませんが、作品の意図を決定的に壊している。
先日、東京二期会公演「チャールダーシュの女王」主役によるプレコンサートに行きましたが、そこで演出担当の田尾下哲さんはドイツ人のミヒャエル・ハンペ氏から薫陶を受けているという話をされてましたから当然このドイツ語の訳が間違っている事は気付いているでしょう。
本番でどんな訳を使うのか興味が増えました。
しかし日本の映画の字幕もヒドいものですが、この「女王」の誤訳は罪が大きいです。
【追記】実はこの誤訳をしたのが誰だか分かっているそうです。
こちらにくわしい事情が書いてありました。
どうも確信犯のようです。日本のオペレッタ普及に功績があった人かも知れませんが、個人の裁量で勝手な事をするような人は自分の行為の意味が分からない狭量な人間だと強く批難したいです。
オペレッタ自体は当時の時代背景もあって、罪の無い他愛ない筋書きですが楽しい作品であることはよく分かりました。あと、このDVDでは主人公達はホントにキスしてますねぇ。何回も(笑)。
日本のオペラ歌手はキスの演技さえできない人ばかりを見てきましたが、本番はどうでしょう。
これも興味が増えました。<<<いえホントはそれはどうでも良いですが。
あと、ネタバレになるかどうか微妙ですがこのDVDバージョンでは三幕の最後に侯爵の奥さんがコートを脱いだら○○姿でいきなり歌うというドンデン返しが待っていてお話を全部持って行ってしまうという演出でしたが、ここのところは今回はどうするのか、これは楽しみです。大笑いしました。
血圧が200を越える毎日で、来月まで持つかどうか分かりませんが、観劇できたらまた書きたいと思います。
最後までお読み戴き有り難うございました。
