に行ってきました(本日)
二期会デジタリリカ【Digitalyrica】というのは初めて聞く名前ですが、強力メンバーです

全詠玉(ちょんよんおぎ)・高田正人・井上雅人・彌勒忠史 エレクトーン清水のりこ
歌手さんは四人ともよく知っています
四人とも何度か聴いた事があって、初めて聴いたときから「この歌手は素晴らしい」と思った人ばかりです。その四人が揃うなんて、やはり有望な面子なんだと思います。ただし高田正人さんと彌勒忠史さんは有望と言うより既に声楽界のポジションを確立している人ですが、活動が若々しいという意味でやはり素晴らしいです。
歌は期待通り、また、全さんと井上さんは期待以上の歌唱だった。
全(ちょん)さんは二期会オペラ研修所第55期修了生 成績優秀者によるコンサート(2012.9.4)でも抜群に素晴らしい歌唱でしたけれど、この人は聴衆を引き込む歌い手さんです。音楽のコントロールが素晴らしい。音楽のコントロールとは何か、というと、譜面通り上手に歌うのではなく、「その曲を自分のモノとしている」「自分だけの世界を創っている」という事です。パフォーマンスしているのです。「ここをこう歌うからよく聴いてください」と、聴き手を引っ張りよせる魅力を持っているのです。譜面を再現しているのではなくて自分の歌を歌っているのです。
わたしはそういう歌手が好きです。それに加えて、全さんは歌っていないときの表情がまた素晴らしい。何も声を出していないのに、表情の変化に聴衆は目が釘付けです。全詠玉、ソプラノ、この方はこれからどんどん延びるに違いないと思います。
次に井上さん。聴くたびに良くなる方です。声が良い。声量が凄い。連れのGFも「素敵な声」と言いました。真摯な人間性がにじみ出る歌唱です。人間、真面目な人が結局伸びるものだと思う。この人の、歌への姿勢、真摯な歌う姿、歌唱を聴いて、何も残らない人はいないと思います。感動するような歌唱をする人というのは滅多にいません。すべてのバリトン歌手を聴いた訳ではないけれど、日本人のバリトンでは井上さんは図抜けて有望だと思う歌唱でした。
高田さんはベテランですから、得意のレパートリを余裕で歌ってました。ので割愛。
彌勒さんは本日はナビゲータ役だったはずなのに最後のステージのアンコールでなんと乾杯の歌を四人で歌いました。サプライズ。これが一番受けてましたかね。
さて、歌唱の満足度に比べてとっても気になった事があります。
デパートなどで無料で行われる声楽コンサートというのはあちこちであるらしいですが、実は初めて観ました。ひどいです。雑音が。
なにしろ周りはショッピングに来ている人たちですから子供は騒いでるしガヤガヤ場内はウルサいし、その為にPAが使われているのですが「生の声」の素晴らしさが殺されている。ひどいものです。ついたてをするとかできないものかと思う。これは「声楽に縁のない人でもフラリと訪れてその素晴らしい歌唱を聴いてもらって魅力を知ってもらう」という主旨で行われているから衝立ても何も無い、と言う事なのだろうと思いますが、その主旨は成功しているかどうかは非常に疑わしいと感じました。
何故かと言うと、コンサートが一日に三回、二時間おきに行われましたが、座席には荷物などが置かれていて同じ人が二時間後にまた同じ席に全員が座っているのです。つまり固定ファンが無料コンサートを知ってわざわざこれを聴く為に電車に乗ってやってきた、ということです。全員がそうです。フラリと立ち寄って座って聴いてみた、という人は一人もいない筈です。(席が空いてないんだもの)しかも、関心の無かった人がフラリと立ち寄って聴いても、いくら歌唱が良くてもこの雑音の中ではその素晴らしさを満喫できるかと考えるとそれは無理でしょう、分からないだろう。これはとても残念な事です。
★そもそも席を二時間前から荷物を置いて取っておく、という行為がズルイと思う。座って待つ人に限定したらどうなのか?

もうひとつとても気になったのは、会場で座って聴いているのは年寄りばかりということです。推定平均年齢は60歳。二期会の新人コンサートでもびっくりしましたが、白髪の人が多いのです。これは、以下のどれが理由なのか?
(1)若いときから声楽が好きな人たちが年を取り、若い人に声楽が好きな人が生まれない為
(2)年を取らないと声楽を理解できない為
(3)声楽のコンサートが面白くないので若い人が興味を持たない為
(4)声楽のコンサートの切符が高くて若い人は聴く機会が少ない為
お気づきかと思いますが、若い人にも無料で聴く機会を与えるという主旨がこのデパートあるいは二期会にあったとしても、本日の成果を見れば一目瞭然、それは失敗しているのです。
やはり、本物の良さを伝えるには無料でこんな雑然としたところでPAを使ってやるという方法では不可能だと言わざるを得ない。この無料コンサートが二期会としてのプロモーションのつもりなら、こういうやり方は間違っていると思います。
若い観客層を掘り起こす方法、それを実行しないと声楽家の将来は先細り必至です。観客を見ればそれは必然でしょう。危機感が無いのか?二期会。
一番拍手が大きかったのが年配の婦人たちが高田さんにしたものだった事が、この催しを象徴していました。
★若い男性がこんなに美人の全詠玉さんを見に来ない、若い女性がこんなに素晴らしい井上雅人に拍手をしに来ない、そういうのはおかしい、と思わない主催者に未来を託さなければならないのは気の毒だ、と思いつつ買い物をして帰路につきました。