訴 状
平成31年4月12日
神戸簡易裁判所 御中
〒665-0057(送達場所は別)
兵庫県宝塚市大吹町1番8号リオステージ大吹102
原告 原 博義
電話090-7489-1600
(送達場所)
〒100-0014
東京都千代田区永田町一丁目11番28号
合人社東京永田町ビル6階
あさなぎ司法書士事務所
電話 03-6550-9710
FAX 03-6550-9711
(送達受取人)
司法書士 加陽 麻里布
〒650-8567
兵庫県神戸市中央区下山手通5丁目10−1
被告 兵庫県
代表者 知事 井戸 敏三
不当利得返還請求事件
訴訟物の価格 600,000円
貼用印紙の額 6,000円
請求の趣旨
1 被告は原告に対し、金60万円を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする
との判決、並びに仮執行の宣言を求める。
請求の原因
第1 当事者
1 原告は、告示日が平成31年3月29日で投票日が平成31年4月7日の兵庫県議会議員選挙伊丹市選挙区(以下「本件選挙」と言います。)に立候補した個人です。
2 一方被告は、本件選挙を実施した地方公共団体です。
第2 本件提訴に至る事情
1 原告は、平成30年12月17日に大阪府から兵庫県尼崎市に転入しました。その後本年1月11日に尼崎市より現住所に転入し現在に至っています。
2 原告は、本年3月15日、本件選挙に立候補するため、被告が本件選挙の事務作業を委託している伊丹市選挙管理委員会に立候補できるかどうかについての事前審査(以下「事前審査」と言います。)をして頂きました。
3 事前審査の段階では、原告が本件選挙に立候補する資格があると判断されていたので、原告は選挙ポスターや選挙チラシや選挙公報の印刷など本件選挙に向けて準備を行いました。
4 ところが、本年3月18日、被告選挙管理委員会担当者より原告に電話がありました。電話の趣旨は「原さんには被選挙権がないので、仮に当選しても当選権がないので県議会議員にはなれませんが立候補なされますか?」というものでした。原告はそもそも本件選挙で当選するのは難しいと思っていたので、当選権がないことについて些か疑問は感じていましたが、その事はあまり気にしていませんでした。しかし本件選挙に立候補の届け出をする際に原告が被告に支払う60万円の供託金は、法律で定められた一定の得票数(以下「供託金返還ライン」と言います。)を超えると後日被告から原告に供託金の全額が返還されるので、原告は「私の得票数はキチンとカウントされるのですよね?」と被告選挙管理委員会担当者に尋ねたら「それは大丈夫です。」という回答だったので、原告は立候補するかどうかについて検討しますと言って切電しました。
5 4日後の本年3月22日再び、被告選挙管理委員会担当者から原告に電話がありました。原告は被告選挙管理委員会担当者に「選挙に立候補します」と意向を伝えました。そうすると、被告選挙管理委員会担当者は、立候補の事前審査に不足している「選挙ポスター」と「選挙チラシ」と「選挙公報」と「60万円の供託書」を持参して下さいと言われたので、原告は日程を調整して不足している書類を後日伊丹市選挙管理委員会に提出しますと約束をして切電しました。
6 原告は、本年3月28日(本件選挙の告示日の前日)に伊丹市選挙管理委員会に出向きました。そこには伊丹市選挙管理委員会の担当者だけではなく、被告選挙管理委員会担当者も同席していました。
7 被告選挙管理委員会担当者は、「県議会議員選挙における住所要件を満たさず、被選挙権がない場合の取り扱いについて」(甲1)を示しながら「原さんは立候補出来ますが、原さんへの投票はすべて無効になり供託金は没収されます。」という趣旨の説明をし(甲1)を原告に手渡しました。
8 原告は、当選できないことは覚悟していましたが、まさか供託金が没収されると思っていなかったので、立候補するかどうか悩みましたが、既に翌日から本件選挙の選挙運動が始まることもあり、立候補することを決断しました。
9 本件選挙は予定通り本年4月7日に実施され、有権者2992名が投票用紙に原告の氏名を記載してくれましたが、被告の(甲1)の説明通り2992票が無効票として取り扱われ、原告が獲得した票は0票という結果になり原告が被告に支払った60万円の供託金は返還されませんでした。
10 ちなみに、2992票は供託金返還ラインを超えています。
第3 被選挙権のない原告の立候補届出を受理し60万円の供託金を受領した被告には不当利得返還義務がある(主位的主張)
1 本件選挙において、被告は、(甲1)の全体の趣旨より、原告を公職選挙法68条1項5号「被選挙権のない公職の候補者」と考えていたのだと推認されます。
2 そして、被告は、(甲1)1ページの2において、「公職選挙法上、1の規定を満たさない場合においても、書類上の形式審査において不備がなければ受理することとなる。」という判断で、原告の立候補の届出を受理したのだと思料します。
3 しかしながら、いくら書類上の形式審査において不備がなかったとは言えあらかじめ(本件選挙の告示日前日)被選挙権のない事が判明している原告の立候補届出を受理する義務は被告には存在しません。また、被選挙権のない事があらかじめわかっている原告の立候補届出を受理する被告の行為は、公職選挙法の立法趣旨や社会通念上間違っていると思料します。
4 もしそのような行為(書類上の形式審査において不備がなかった場合は立候補届出を受理する行為)が認められるとすると、年齢満25歳未満の者も書類上の形式審査において不備がなかった場合、「被選挙権のない公職の候補者」として選挙に立候補することが可能になるからです。
5 よって、被選挙権のない原告の立候補届出を受理することにより、被告が原告から受け取った60万円の供託金は、不当利得と言わざるを得ません。
6 よって、被告は、民法703条(不当利得の返還義務)により、原告から法律上の原因なく徴収した60万円の供託金を、原告に返還する義務があります。
第4 原告は兵庫県の県民として連続して3か月以上兵庫県内の市町村に居住しているので被選挙権がある。よって原告が得た票は有効であり原告が被告に支払った60万円の供託金は返還されるべきである(予備的主張)
1 原告は、主位的主張として被告に60万円の不当利得を原告に返還するよう上記3のとおり求めていますが、原告の上記主位的主張が認められなかった場合に備え、次の通り予備的主張をさせて頂きます。
2 被告は、(甲1)の全体の趣旨より、原告に被選挙権がなかったことの理由として、原告が市町村を包括する都道府県の区域内の一の市町村の区域内に引き続き三箇月以上住所を有していなかったから、原告には被選挙権がないと主張していると解されます。
3 たしかに、公職選挙法9条2項乃至同3項や同法10条1項3号の条文をそのまま読めば、原告に被選挙権がなかったと解されます。
4 しかしながら、公職選挙法の都道府県の議会の議員の被選挙権についての立法趣旨は、各都道府県の住民が、その都道府県の住民の中から選挙で都道府県の議会の議員を選ぶと解するのが妥当だと思料します。
5 つまり、原告のように兵庫県内の一の市町村に3箇月以上住んでいなくても、兵庫県内の複数の市町村に連続して3箇月以上住んでいれば、兵庫県の議会の議員選挙の被選挙権があると解釈するのが妥当だと思料します。
6 したがって、本件選挙において、原告は供託金返還ラインを上回る得票を得ているので、被告が原告から受け取った60万円の供託金は不当利得と言わざるを得ません。
7 よって、被告は、民法703条(不当利得の返還義務)により、原告から法律上の原因なく没収した60万円の供託金を、原告に返還する義務があります。
第5 結語
よって原告は被告に対し、民法703条の不当利得返還請求権に基づき、請求の趣旨1記載の金員の支払いを求めるものであります。
付属書類
1 訴状副本 1通
2 第1証拠説明書 正副各1通
3 甲第1号証 正副各1通