平成28年(ワ)第7351号 放送受信料請求反訴事件
反訴原告 日本放送協会
反訴被告 視聴者
反訴準備書面1
平成28年10月14日
大阪地方裁判所第20民事部2B係 御中
反訴被告
視聴者
第1 放送受信契約の締結について
反訴被告は、平成7年7月ころ、反訴原告と放送受信契約を締結したと記憶している。
時期は不明だが、平成7年7月より以前に、反訴原告の担当者が反訴被告の自宅を訪問し、契約の締結を求めたことがあったがこのときには反訴被告は放送受信契約を締結した記憶はない。その後は反訴原告担当者からの訪問はなく、平成7年7月を迎えた。
平成7年7月、反訴被告は、反訴原告担当者を名乗る中年の女性の訪問を受け、「名前の漢字を教えてほしい」「一か月分だけ払ってほしい」「本当はもっと以前から支払ってもらわないといけないけれど、一か月分払ってくれたらこれまでの分は支払わなくていいようにする」などと言われて、一か月分の受信料に相当する代金を支払った。反訴被告は、このときに放送受信契約が締結されたと認識されている。
反訴原告は、昭和63年10月に反訴被告が放送受信契約を締結
し、その後放送受信料を支払っており、最後、平成7年6月30日に、反訴被告が放送受信料として一か月分の放送受信料として金1360円を支払った後、放送受信料を支払っていないと主張する(乙2)。
しかし、毎年6月期は2か月分(6月分7月分)の放送受信料が徴収されるはずである。本件では平成7年6月30日には1か月分しか放送受信料が支払われておらず不自然である。
反訴原告が、昭和63年10月から、反訴被告が放送受信料を支払い続けてきたと主張されるのであれば、このような不自然な放送受信料の徴収をした理由を明らかにしていただきたい。
第2 時効による消滅
1 反訴被告は、平成7年7月に放送受信契約を締結しその際に一回だけ1か月分の放送受信料を支払った後は、一度も放送受信料を支払っていない。
2 放送受信料は、放送受信契約締結期間中、2か月に1回もしくは半年に一回もしくは一年に1回放送受信料が支払われるものである。
よって、放送受信債権が定期金債権に当たる。反訴原告もこの点については争っていないようである。
3 次に、放送受信料債権に民法168条1項が適用されるかを検討する。
(1)反訴被告の主張
この点、反訴原告は、賃料債権や永小作料債権のように、賃料や永小作料が契約の本質的な要素であるにも関わらず、民法168条1項が適用されるとすると、永小作料や賃料を支払わなくてもよい無償の永小権・賃借権の存在を許すことになってしまうので、これらの債権には民法168条1項の適用はなく、同じく放送受信料債権についても、放送受信料は放送受信契約の不可欠の要素であり、また、賃借権等と異なり、受信設備が
撤去されない限り解約することができず、受信設備が設置されている限り、放送受信料債権が発生し続けるため、債務不履行解除により消滅させることができないので公平負担の観点に照らし、永小作権・賃借権以上に民法168条1項の適用を否定すべき必要性があると主張する。
(2)消滅する権利
民法168条1項の消滅時効により消滅するのが債権なのか契約そのものなのかを考えるに、そもそも20年以上契約が継続することが予定されているような定期金給付契約については、一方が消滅したら他方も消滅させ、契約自体を消滅させてしまうのが、公平である。債権のみを消滅させ、反対給付義務を残す意味はないと考える。
(3)放送受信債権について
民法168条1項を適用して、放送受信契約を消滅させたとしても、放送法により、視聴者が放送受信機を設置している以上契約締結義務があり、契約が消滅したとしても新たに契約を締結し直せばすむことである。
なお、仮に、債権のみが消滅するとしても、放送法の法改正などにより、放送受信債権の消滅により放送受信契約は解約となり、再度放送受信契約の締結を求めるよう対処することも十分可能である。
(4)公平性の観点
反訴原告は、放送受信料債権の意義を、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かでかつよい放送番組による国内基幹放送を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務などを行うことを目的として設立されたものであり、営利目的の業務および広告放送を禁止する代わりに唯一の財政的基礎を確保する方法として放送受信契約及び放送受信料の制度を採用し、受信できる受信設備を設置した者に放送受信契約締結義務を課し、広く国民に公平に放送
受信料の負担を求めることとしている旨を主張しており、反訴
被告もこの点を争うつもりはない。
そして、反訴原告は、放送法16条により設立された特殊法人であって、既述の目的のために、内閣総理大臣が任命した委員により構成される経営委員会が受信料について定める受信契約の条項(受信規約)について議決権を有しており、受信規約は総務大臣の許可を受ける必要があることからすれば、受信料の徴収権を有する被告が、国家機関に準じた性格を有しており、このことは、さいたま地方裁判所平成28年8月26日平成27年(ワ)1802号放送受信契約締結義務不存在確認請求事件でも同様に述べられている。
広く国民から国家機関に準じた反訴原告が、受信料を徴収するのであれば、その受信料の負担は公平に利用者が負担すべきである。
20年間もの長期間にわたって、定期金債権が行使されない場合には、権利者である反訴原告の懈怠は明らかであって、そのような場合に権利の行使がもはや認められなくなるのは、権利の上に眠るものは保護しないという時効制度の趣旨からみてやむを得ない。
権利者である反訴原告が権利行使を懈怠することで放送法所定の被告の既述の目的に反する結果を招くものであることは明らかである。
大阪高等裁判所平成26年(ネ)第433号放送受信料債権控訴事件も同様の趣旨を述べている(甲2)。
本件は、平成7年7月以降、1円も受信料が支払われていない事案であり、その間、反訴原告は、受信料徴収のために訴訟提起は一切しておらず、反訴原告に懈怠があることは明らかである。
また、本件では、放送受信契約締結時期にも争いがあるが、同契約締結時期が不明となってしまったのは、反訴原告が放送
受信料の徴収を怠り、20年以上放置して、裏付けとなる放送受信契約書などが処分されてしまっていることが大きな理由である。
このように20年以上、放送受信料の支払いや請求がされていない。
よって、放送受信料債権に民法168条の適用がないという反訴原告の主張は誤りである。
第3 169条による消滅時効(予備的主張)
仮に、放送受信料債権に民法168条の適用がないとしても、反訴被告は、民法169条の消滅時効を援用する。平成23年8月期より以前の放送受信料債権は消滅している。
以上