【第21回】くりかえし言葉 | NHK・にほんこども新聞

【第21回】くりかえし言葉

木乃伊的生活.web

かつて、NHKの『連想ゲーム』では、「ワンワン・ニャンニャンコーナー」というものが設けられており、そこでは、「ドタバタ」「ガタガタ」などといっ た、同じ音を繰り返す言葉を当てるというクイズが行われていたが、筆者の記憶では、かつてガッツ石松氏がゲスト出演した際に、同コーナーが終わり、その 後、通常のクイズに戻っていたにもかかわらず、そのまま同じ音を繰り返す回答をしていたことがあったように思う。そのときにブラウン管を通して目にした 「ガッツさん、ワンワン・ニャンニャンコーナーは終わりましたから」と淡々とした口調で諭すアナウンサーの姿が、筆者にとっては実に印象的であった。

さて、そんな「同じ音を繰り返す言葉」(以下、「くりかえし言葉」)であるが、上掲の画像に出ている菓子袋もまた、そんな言葉が用いられているものの1つ である。だが、「ぽくぽく」という言葉を聞いて、みなさんは何を思い浮かべるであろうか。この際、「これ、『ぽたぽた焼き』のパクリじゃない?」といった ツッコミは、聞かなかったことにしておきたい。とにもかくにも、今は「ぽくぽく」なのだ。

そもそも、この「ぽくぽく」という言葉について考えたとき、これは「音を表す言葉」なのか、「状態を表す言葉」なのか、という疑問がある。仮に前者であれ ば、筆者の場合、まっさきに木魚の音が思い浮かぶのであるが、逆に後者であった場合はというと、読者諸姉諸兄はどのようなものを思い浮かべるであろうか。 なお、筆者の場合、正直なところ、すぐには思いつかない。

では、仮に後者の「状態を表す言葉」とした場合、「ぽくぽく」という言葉は一体どのような場面において用いられるのだろうか。ひとまず筆者は、自分なりに 思いつく限り、下記に挙げてみることにした。無論、現状、筆者はどのような状況でこの言葉を使うのかが分りかねるため、ひとまず適当なフレーズを前後に補 うこととする。


■ぽくぽくの使用例(筆者の場合)

・仔牛を乗せた荷馬車が、ぽくぽくと市場へ向かう。

・この製靴工場では、どの労働者たちも、暗い表情でぽくぽくと仕事をしている。

・暫し、その場に立ち尽くした私は、やがてぽくぽくと歩き出した。

・入れ歯を忘れたおじいさんが、ぽくぽくと夕飯を食べている。

・彼らは新婚さんということもあり、人目を憚ることもなく朝から晩までぽくぽくだ。

・あなたが「ぽくぽくしたい」と言ったから、3月2日はぽくぽく記念日。

ぽくぽくを好きになったのではない。好きになった人がたまたまぽくぽくだっただけ。

・ねえ、よかったら、今からぽくぽくしない?



…と、いくつか「それらしく」並べてみたものの、例によって途中から急カーブしてしまっている。人間のイマジネーションなどというものは、所詮はこの程度 だ。無論、ここまで長文で引っ張った挙げ句、答えらしい答えも見つからぬまま、この記事が締めくくられるということは、ここだけのぽくぽくだ。


兎角、世の中は数多くのぽくぽくで満ち溢れている。それらの多くは、我々にとってぽくぽくであり、多くの場合において、ぽくぽく以外の何物でもないことは言うまでもないが、それでも我々をぽくぽくさせるのが、ぽくぽくの、ぽくぽくたる所以である。