芥川龍之介の「大震雑記」に
「大正12年8月、鎌倉の平野屋別荘に行ったとき軒先の藤が紫の花をつけている。
手洗いの窓から外を見ると八重の山吹も花をつけている。そのうえ珍しいことには
小町園の池の菖蒲、蓮が咲き競っている。藤、山吹、菖蒲と数えてくるとどうも
これはただ事ではない。自然に発狂の気味がある。
それで逢う人ごとに『天変地異が起こりそうだ』と話したが誰も真に受けない。
8月25日に東京に帰った。大地震はそれから8日目に起こった」と出ている。
古文書にも大地震前の植物の狂い咲きの記録がある。地震の前兆の時は
震源地を中心に限られた範囲での狂い咲きと思われる。
阪神淡路大震災(平成7年1月17日)からの一例、
○私の家の庭には椿の木があります。花は毎年5個から10個程度で咲きますが、
今年は地震の以前から木の上から下までかずにしておそらく300個以上咲きました。
家内に今年はどういうことになっているんだろうと話しておりました。
地震後、ある年配の婦人に話しますとその方は一言『死に花を咲かせたんや。
椿の木も最後だろうと思ったのでしょう』(大阪市西成区 男性)