被災地アチェへの支援と現実~スマトラ島沖地震・津波関連 | 国際協力・NGO情報ブログ:別館

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真の英雄は犠牲者であり、生存者だ。ボランティアでも、役人でもない。ボランティアになることは、人道的な義務によって導かれるもので、ほかの目的のためではない。役人や政治家たちは、これが任務だからおこなわなくてはならないのだ。彼らは国家、つまり国民から給料を得ている。彼らが政治的義務と任務を果たしたからといって、英雄的なことでも何でもない。もし彼らが、自分たちを優先権を得るべきエリートと位置づけ、それによって、もっと重要な使命を帯びた人びとが出発を延期したり中止したりせざるを得ないことになるなら、いま苦しんでいるわたしたちの友人を裏切ることになるのだ。
インドネシア民主化支援ネットワーク<NINDJA>ウェブサイトよりアチェで活動している現地のNGOからの報告を引用)



スマトラ島沖地震・津波による被害と、世界中からの支援の手が伸びていますが、なかなか届かない地域もあります。このブログでも何度か紹介してきた、インドネシアのアチェ州です。

アチェでは、1970年代半ばから独立運動が起こっています。この地域にある豊かな天然資源(天然ガス)を巡って、インドネシア政府との間に衝突が起こり、一般市民が数万人規模で殺害、誘拐、拷問、不当逮捕などの犠牲になってきました。この天然ガスの精製工場は日本のODAで建設されているものもあり、その中には国軍のキャンプが展開されています。そこは「拷問センター」と呼ばれるものです。またそこで精製された天然ガスの多くが日本に輸出されています。

そうしたなかで、独立を求めるゲリラ「自由アチェ運動(GAM)」や市民たちは立ち上がり、行動を起こしているわけですが、インドネシア国軍との和平交渉が一昨年春に破綻し、戒厳令・非常事態が出されています。現在もまたその中にあります。そのなかで前述の大量虐殺などが行われているといいます(政府系である国家人権委員会も言及)。

またそこにはもちろん、世界のNGOやジャーナリスト、研究者などの外国人が自由に入ることができず、制限されています。今回の地震のような事態に陥ったとき、その被害状況や支援に必要なものを考えるにあたっての重要な情報すらも手に入りにくい状態であったのが、アチェでした。(ここまでアチェの状況などについては「インドネシア民主化ネットワーク(NINDJA)」ウェブサイトを参考にしました。是非ご覧下さい。)

現在、アチェの犠牲者は社会省の発表では8万人を越えたと言います。州の中でも被害の大きかった都市のひとつである州都のバンダアチェを中心として、町の8割が破壊されたという西アチェ県のムラボやアチェ・ジャヤ県などへ、外国のNGOの現地入りを29日から認めると発表しました(共同通信)。また国軍側、GAM側ともに攻撃停止を事実上宣言しています(共同通信)。しかし、現実には上記のNINDJAのサイトによると、迫撃砲やロケット弾による攻撃が続いていたり、食糧の国軍による強奪なども続いているようです(こちらのNINDJAのサイトを参照してください。ワシントンポスト紙などでも報道されているようですが、日本のマスコミでは……みないですね)。

一方で、援助がそれでは行えるのか?といわれると難しいのも現実のようで、インフラの整備が十分に行われておらず、その上、地震・津波によりライフラインが破壊されたアチェでは、断水が続き、電気も20%しか供給されていないと言います。また遺体や流木の散乱により衛生状況が極度に悪化していると言います(産経新聞@Yahoo!ニュース)。また世界中から送られてきた医薬品や食糧などの物資が空港で止まったままでもあるようです。

そんななかでも徐々に支援の手は伸びています。少量とはいえ、支援物資をピース・ウィンズ・ジャパンなどは届けることができたり(共同通信2日)、日本赤十字社も医療器材をアチェに向けて発想され、同社のスタッフの医師や看護士らないより運ばれているようです(読売新聞@Yahoo!ニュース)。

また、以前も紹介しましたが、上述の日本のNGOであるNINDJAはこうしたアチェの現状とこれまでの歴史を鑑みて、「アチェ人道支援キャンペーン」を行っています。こちらのNINDJAのサイトに紹介されているように、例えばジャパン・プラット・フォーム(JPF)のようなNGOよりもこうした問題を追ってきたNGOは外から見ると強く政治色があるのも事実です。しかし、NGOがこうした杞憂をわざわざウェブサイトで表明しなければならない社会であるというのは、すごく悲しい気がします。

国連機関や日本政府が関わっているNGOができないことをこれまでやってきて、現地への支援のみならず、政策提言もずっとやってきたこうしたNGOにも、支援を行うための資金が集まって欲しいと本当に思います。

「政治的」という言葉を必要以上に避けるよりも、今自分が何を求めて何を行いたいか?ということを真剣に考えたときにぶつかる「政治的」なものにうち勝つだけの「市民」でありたいと、このサイトを見ながら改めて思います。頑張って欲しいです。そして、アチェでの情報を正しく、しっかりと伝えてもらいたいです。それにしても、支援金・募金の使い道をしっかりとウェブサイトでこうして紹介しているNGOというのは実はすごく少ないかもしれません。そういう意味でも信頼に足るな、という気がしますし、同時に募金をしてなお僕たちはその団体や国際機関がどのような援助を行っているかも責任持って見ていかなければならないだろうと思います。

追伸:アチェの状況についてはこちらのページにもあります。こちらのページの最下部に「インドネシアの援助団体の紹介:アチェ災害援助出張所」の情報があります。参考まで。