エレファント・ツーリズム Ⅰ | nezumiippiki

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アジア再発見Blog

 

スリンのゾウさん達を見て、改めてタイのゾウさん達のことを考えた。

 

タイのゾウさんを紹介するサイトはとても多く、その際に頭数の紹介もあるのだが、野生ゾウ、飼育ゾウに分けて、それぞれ 4000頭台から3000頭台とバラバラでどれが正しいのか不明。よって、WFFTの数字で紹介する。

直近のWFFT(タイ野生生物友好基金Wildlife Friends Foundation Thailand)のデータによると、タイ国内野性の象が約 2,250頭、飼育の象が約2,400頭とある。

その飼育ゾウの多くがツーリズムで働いているという。

ご存知のように、タイに来る一般ツーリストにとってこのゾウさん達はほぼ観光の必須コンテンツ。

90年代後半のパフィーのTV CMで、二人が川の中でびしょ濡れになりながら小象と戯れるものがあった。何のCMであったかは記憶に無いが、タイを知らない人にとって小象と一緒に遊べるというのは、タイを印象付けるのに大きな効果をもたらしたと思っている。

 

1989年タイ政府による自然の森林伐採が禁止され、それに伴い多くのゾウさん達とゾウ使いが失業している。

それまでトラックも入っていけない山間の急斜面は、ゾウさん達の職場だった。

この時代、悲惨な状況に置かれるゾウさん達は多かったようだ。

特に、違法伐採をするような悪者にこき使われていたゾウさん達は、薬づけ(麻薬)にされて夜中働かせられて・・・と。

 

そこで、政府はゾウさん達を観光で利用することをゾウのオーナーに推奨していく。

このゾウさん達は何世代にもわたって人間界で生活しており、失業したからといって野生に戻すことはできない相談。

 

それ以前、観光先でゾウさんに会える場所というのは限られていた。

恐らく、まとまった頭数を揃えたエレファントキャンプとして最古なのが、1973年にオープンしたパタヤ・エレファントビレッジ。

 

 

そして、1976年にオープンしたメーサ・エレファントキャンプではないかと思う。

 

 

どちらも、森林伐採で働くゾウさん達を紹介するショウを行っていた。

他の場所では、80年代までは数頭のゾウさんを置いて観光客に餌を買わせたり、乗せたりしていた程度。

南タイの観光地ではまずゾウさんを見かけることは無かった。

 

ところが、今思うとゾウさん達の失業のせいだったのだ。

ゾウさんにとっては劣悪な環境、排気ガスが充満する交通渋滞のバンコク市内を、ゾウさんがゾウ使いに連れられてノソノソと歩く姿を目にするようになってきた。

交通事故に遭うゾウさんも結構いたらしい。

ゾウさんは日に150Kgから200Kgの餌を食べるという。

野山にいないゾウさんにとって餌の確保は一大事である。

餌のためというより、ゾウオーナーの現金収入のための街歩きもあったと聞く。

 

ゾウ使いは肩にバナナを入れた籠を担ぎ、バナナを売りながら、バナナを買った客はその場でゾウさんにバナナを食べさせる。

ハッキリ言ってこれはゾウさんの物乞いであった。

事情を知らないツーリストは、さすがゾウさんの国タイだ、と喜んでいたのだが、国やゾウさんを愛するタイの人たちは、或いは、ゾウさんの一大産地であるスリン県はそこでゾウさん達の失業対策を考えるようになる。

 

 

以後、タイの観光地のあちこちにゾウさん達が急激に進出するようになったのは、森林伐採が禁止されて以後のこと。

そして、2000年以後、ゾウさん達とツーリストの関係が大きく変わってくる。

それまではエレファントキャンプでゾウのショウを見て、ゾウさんの背中に乗りトレッキングと称するものだったものが、急にそれは非道徳的でゾウの虐待に当たる、とか言われ始める。

そして、今ではお金を払い、汗水流してゾウさんのための労働をさせてもらうことが主流となってきている。

 

そのコンセプトの先駆けとなったキャンプが、チェンマイのエレファント・ネイチャーパーク。オープンが2003年。サンドゥアン・レック・チャイラート氏が不幸なゾウさん達を救助、保護する目的で設立した観光施設で、彼女は「セーブエレファント財団」の創設者でもある。すでにゾウ・動物たちの保護者として世界的な名声を得ている人物。

日本のTV番組でも紹介されたことがあったかなかったか、しかしご存知の方も多いことと思う。

https://www.elephantnaturepark.org/

小生は彼女と直接会ったことはないが、ゾウさんの話になると彼女の話が出てきますね。

(389) 映画「エレファントの叫び」予告編 - YouTube

 

彼女、レックさんの影響力は大きく、各地のエレファントキャンプが様変わりをするようになってきた。今回、確認の為にメーサ・エレファントキャンプのサイトを見てみると、まさかそんなことは無いだろうと思っていたメーサまでもが、ショウもゾウ乗りも止めてしまっているのには驚いた。

 

 

チェンマイから高速道路で1時間少々の場所、ランパーン県に「タイ象保護センター」がある。国の役所の一つ「森林産業機構」日本でいう林野庁、がオープンしたエレファントキャンプがある。ここではゾウさんの専門病院もあれば、ゾウ使いのスクールもあり、ゾウのショウもゾウ乗りもまだ行っている。

映画「星になった少年」役の柳楽優弥もここでゾウ使いのトレーニングを受けている。

 

 

ジャングルでの労働では、ゾウさんは背中に約500キロの荷物を背負い、2トンの生木を引き、4-5トンの生木の束を頭で押し、一日に6-10時間働は働いていた。しかし、観光地のエレファントキャンプでのゾウさんは背中に2人を乗せ、長い時間でも2〜3時間歩き、数十分のショウを日に数回こなすだけの軽労働に変わっている。

確かに、これは可哀そうと思うような観光施設で働かされているゾウさんを見ることがあるが、ツーリズムで働くゾウさん達が皆悲惨な目に遭っているとか、虐待に会っているとは思わない。

 

で、次回は、人間とゾウさんの究極の関係をつくっているスリンのケースを考えてみる。

 

追記:

先に「タイ象保護センターを」を紹介したなら、FAE Hospital(Friends of the Asian Elephant Foundation)を紹介しないわけにはいかない。

https://loveselephants.com/fae-hospital/

https://www.facebook.com/friendsoftheasianelephantfoundation/

 

FAEはタイ象保護センターの隣の敷地にあるので、しばしば誤解・勘違いされるが、FAEが世界初の象専門病院。こちらは民間NGO. 

NHKはFAEが救った2頭のゾウを、2000年ドキュメンタリー番組で地雷を踏んだモタラを取り上げ、2006年には同じく地雷を踏み世界で初めて義足を付けた小僧のモーシャも紹介しているので、モタラとモーシャは広く知られることになった。

 

 

 

https://www.elephant.se/?

https://www.wfft.org/projects/elephant-refuge/

https://www.elephant-village-pattaya.com/

https://thailandelephant.org/

https://factsanddetails.com/asian/cat68/sub431/item2468.html

等々、今回は小生の昔の記憶が定かでないかもと、その他多くのサイトで確認させてもらいました。