乾くるみ イニシエーション・ラブです。

文春文庫から。


イニシエーション・ラブ (文春文庫)/文藝春秋
¥600
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【裏表紙から】


僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。


やがて僕らは恋におちて・・・。甘美で、ときにほろ苦い


青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説――


と思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)


で、本書は全く違った物語に変貌する。


「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。



【ひとこと】


乾くるみ「イニシエーション・ラブ」です。

どんでん返し、というよりは巧妙な叙述トリックで有名な作品です。


それほど新しい作品ではないので、ネタバレも書いてしまいます。


ジャンルとしては普通の恋愛小説になるでしょう。

前半のside-Aでは、主人公の鈴木くんがマユと合コンで出会い

恋愛に発展していくきわめて普通の恋愛小説を描いたものです。

後半のside-Bに入りますと、主人公は鈴木くんのままなのですが

読み進めていると少しずつ違和感が生まれてくるでしょう。

少しワイルドになり、変わっていく鈴木くん。

マユに対する態度も変貌していきます。

数々の伏線を解き放っていくとクライマックスの段落で、読者にとっては

大きな落とし穴が待っていました。

私もすっかり穴に落ちてしまいました。


最後まで物語を読み進めると、side-AとBのお話がまったく別の顔を持つ

ことに気がつくでしょう。途中で気づく方も当然いるでしょうが。


1本のありきたりな青春恋愛小説ではなく、2本のイニシエーション(通過儀礼)

的な恋愛模様を描いた作品だということが分かるかと思います。

ときどき出てくる固有名詞(TV番組名やヒットした音楽)はトリックについての

ヒントにもなっているようです(古すぎてピンときませんでしたが)

本当の物語に気づけば、時系列が整理されもやもやしたエンディングも

ハッピーエンドだったことが理解できます。


叙述的トリックの効果はものすごかったですが、恋愛小説の部分は

よくある退屈なストーリーです。

ミステリ的な読者として、騙されたいという方にはおすすめできます。

濃密な恋愛小説を読みたい方にはおすすめできません。


オススメ度 ☆☆☆




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平山夢明「独白するユニバーサル横メルカトル」

です。

光文社文庫から。



独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)/光文社
¥600
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【裏表紙から】


タクシー運転手である主人に長年仕えた一冊の道路地図帖。


彼が語る、主人とその息子のおぞましい所業を端正な文体で綴り


日本推理作家協会賞を受賞した表題作。


学校でいじめられ、過程では岐阜の暴力に晒される少女が


絶望の果てに連続殺人鬼に救いを求める「無垢の祈り」


限りなく残酷でいて、静謐な美しさを湛える、ホラー小説史に


燦然と輝く奇跡の作品集。



【ひとこと】


平山夢明の全8編の短編集です。

ジャンルはホラー。グロテスクな表現もかなり多いので苦手な方には

おすすめできません。


「ニコチンと少年・乞食と老婆」


ホームレスと少年の出会いから別れまでを

描いた作品・・・だと思います。

個人的には意味不明。


「Ω(オメガ)の聖餐」


人ならざるものに変貌してしまった元人間のΩ(オメガ)の物語。

グロすぎます。


「無垢の祈り」


あらすじのとおりです。

まだ救いのある物語。


「オペラントの肖像」


近未来SFもの。

条件付け(オペラント)という方法で、人間を管理しようとした世界。

ミステリテイストでなかなか面白いです。


「卵男(エッグマン)」


説明が難しい話です。

連続殺人鬼に全ての犯行を自供させるため、心理学的手法で

殺人鬼との対話を図る・・・物語。


「すまじき熱帯」


言葉のほぼ通じない国へと出稼ぎにいく主人公。

そこでは独裁が行われており、囚われた主人公たちは

処刑の憂き目にあいそうになります。

これもかなりグロテスク。


「独白するユニバーサル横メルカトル」


やはりこれが一番面白いと思います。

地図帖の心情を綴った物語。

ホラーテイストではありますが、モノには魂が宿ると信じた

日本人的な感覚を共感できます。

主人への忠心がなかなかよいです。



「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」


男が女を拷問する話。

意味不明でした。



おおむねグロテスクなのでかなり人を選びそうです。

表題の作は一読の価値があると思います。

一部映像化されている作品もありますが・・・・

見るには少し勇気が要りそうです。


オススメ度 ☆☆

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高野和明:グレイヴ・ディッガーです。

講談社文庫から。



グレイヴディッガー (講談社文庫)/講談社
¥700
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【裏表紙】


改心した悪党・八神は、骨髄ドナーとなって他人の命を


救おうとしていた。だが移植を目前にして連続猟奇殺人事件が


発生、巻き込まれた八神は白血病患者を救うべく、命がけの


逃走を開始した。


首都全域で繰り広げられる決死の追跡劇。


謎の殺戮者グレイヴ・ディッガー〈墓堀人〉の正体は?




【ひとこと】


ジャンルはホラー。

ですが、警察での死体消失事件、連続殺人事件など

ミステリ的な入り方で物語りは始まります。


主人公の八神は、悪党で通っているが根っこの部分では

ホンモノの悪党になりきれない人物。

過去に犯した罪に対する自責の念から、骨髄ドナーとして

登録、移植を希望し新たに生まれ変わろうと決意します。


患者も決まり病院へ向かおうとすると、突然襲ってくる謎の集団。

八神の悪党仲間を殺し、八神を執拗に追いかけます。


また、謎の集団を追って、’グレイヴ・ディッガー’なる人物が

八神へと近づいてきます。

謎の集団はグレイヴ・ディッガーにより一人またひとりと殺されていく・・・


謎の集団は何の組織なのか、グレイヴ・ディッガーっていうのは誰なのか

クライマックスまでなかなか明らかにならないので結構やきもきします。


グレイヴ・ディッガーの登場からようやくホラーテイストな感じになって

きますが、大筋はミステリ。

ラストも謎を解消し、うまくまとまっています。

逃走中の八神の疾走感、絶望感そして無敵感、いろいろ心情は変化しますが

最後まで人を助けるためにあきらめない決意は素晴らしい。

一般人なら3.4回は死んでます。


最近でしたら逃走ものは、伊坂氏のゴールデン・スランバー。

東野氏のプラチナデータと詠みましたが、本作が一番面白かった気がします。



オススメ度 ☆☆☆☆


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