私が最後に京都に戻ったのはちょうど2年前の今頃でした。また春が巡って来たので日本にいた時の気持ちを思い出したくなってその頃に書いたブログ記事を少し読み返してみました。


そうだったなぁ、京都に着いた翌々日には母と兄と一緒に軽井沢へ向かい、その昔、家族4人で夏中過ごした思い出の森の家で過ごしたのでした。浅間山がほど近いその家の近くで京都では既に終わっていて見られなかった桜に出会えて嬉しかったんだった。兄は突然、野鳥観察に目覚めてバルコニーで仕事をしながら鳥を探していたっけ。。

 

5月末に母と私は京都に戻り、あまりお出かけもせずに家でのんびりと過ごしていました。出不精で運動不足が続いたある日の夕方、母は家にいたいというので一人でお散歩がてら二年坂、三年坂の辺りまで歩いて行きました。帰りは祇園からバスに乗ろうと思って大通りに向かう途中、偶然、古民家風の美しい建物がそっくりそのままカフェになっているのを見つけました。祇園のど真ん中からわずか一筋入っただけで、そこにはひっそりとした別世界が広がっていました。

 

夕食の時間が近づいていたので少し店内を覗かせてもらうだけにしたのですが、すぐにここは母を連れてくるべき!と察知しました。中庭に猫がたくさんいたからです。母がとても可愛がっていたピーちゃんに少し似た毛色の子も。

 

カフェを見つけて、後日、母と一緒に行った時の様子はこちらの記事に書いています。たまたまオーナーさんと話す機会もありました。


 

 

 

これを読んでから、ふと胸騒ぎがしてお店を検索してみたら、、

 

 

 

住所の上にあるPermanently closed 「永久に閉店」という赤い文字がゆっくりと目の奥の奥まで、網膜まで赤く染まるんじゃないかと思うほど深く浸透していきました。

「やっぱりダメやったんや~」というやるせな、悔しさで一杯です。

 

これからは京都に帰る度に母と、友人と、それからひとりでも行こうと楽しみにしていたのになぁ...。心あるフランス人のオーナーさんも観光客の激減でお店を続けることができなくなったのでしょうか。

 

すごく心配になることが一つ。

カフェには行けなくてもこの建物が別の人の手に渡って使われるのならまだいいのですが、壊されてビルでも建てられやしないか...


これほどきれいに残っている町屋は京都でもあまり見ないレベルなんです。いわゆる京町屋とも建て方が違う、農家風古民家で、保存状態もいいから建築史的にも明らかに遺すべき建物。でも有形文化財認定の申請はしていないようだったから新しい所有者次第で簡単に取り壊されてしまいます。

 

その昔、東山魁夷は知人であった川端康成から「京都の景色が無くなる前に描いておいてください」との依頼を受けて現地に赴き、古都の風景シリーズを描いています。この一連の作品を京都で開催された東山魁夷回顧展で直に目にした時には、京都の美しい街並みはいつまでも存在しないと分かっていた川端康成の先見の明についても感じ入ったものです。

 

Gion Cafe の中に入るとひと昔前の日本が感じられて漆喰壁や吹き抜けの天井や急な勾配の階段などが、もはや会うことは叶わない先人の暮らしぶりを伝えてくれていたのに何とも残念です。


いつかまた京都に住めれば文化財保存の為に何か活動したいという気持ちもこういうことが重なり、日増しに強くなっていきます。大切なものは見過ごさず守らねば。。


 

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アップ アメリカで30年近く行きつけだったお気に入りのカフェもロックダウンで去年の秋に閉店してしまいました。好きな場所での空間と時間も永遠ではないのですね。