カボチャがでんでん飛んできた。
お目目ぎらぎら。お口耳までバックリこ。
 奥歯の奥からがきがき言った。
 「のっぱら全員 よくお聞き 今日はハロウィン 悪魔の日」

 

カボチャにかにか皆んなを待った。
あれあれ、だーれも出てこない。
おかしいなったらおかしいな。
 「のっぱら全員 も一度ね 今日はハロウィン 幽霊日」

 

のっぱらあくまでシーンとしてて、虫の音さえ聞こえない。
カボチャそれでもじーっと待った。
も少しも少しじーっと待った。
とうとうお尻がささくれ立った。

 

カボチャ泣きべそ引き返す。
でんでんでんでん引き返す。
 涙といっしょに残った種が
 ポロリとお池に落っこった。

 

するとお池の水面がゆらり
 どろりとなんか出てきたぞ。
 池ガメどろりと出てきたぞ。
 「種が旨いぞ。もっとくれ」

 

カボチャ泣きべそひっこんで
 にかにかお口でこう言った。
 「池ガメ 池ガメ よくお聞き 今日はハロウィン 魔モノの日」

 

池ガメどろりと上がったぞ。
 「種が旨いぞ。もっとくれ」
 首を縮めて体当たり
 カボチャにグレンと体当たり

 

カボチャ泣きべそ逃げ出した。
でんでんでんでん逃げ出した。
 涙といっしょに残った種が
 ポロリとまたまた落っこった。

 

池ガメのかのか出てきたぞ。
 種をかぷかぷいただいて、もっともっとと追っかける。
カボチャでんでん でんでんでん
池ガメ のかのか のかのかのん

 

カボチャと池ガメの後ろから
何かずらころ付いてきた
 ころげるように付いてきた
「なんかいいことあるんかな」

 

カボチャでんでん でんでんでん
池ガメ のかのか のかのかのん
後ろをころがる ずらころなぁに?
 野ざらし侘びサビしゃれこうべ

 

カボチャでんでん でんでんでん
池ガメ のかのか のかのかのん
 ずらころ ずらころ しゃれこうべ

 

すると小さな水溜り
 そこからお皿が浮かんだよ
 お皿じゃないよ 氷かな
氷じゃないよ 迷子だよ
「ねぇねぇ お家へ連れてって」
 月の光の子どもがね
迷子になって浮かんだよ

 

カボチャでんでん でんでんでん
池ガメ のかのか のかのかのん
 ずらころ ずらころ しゃれこうべ
月の子どもは ぺっかぺか

 

なぜかお空が掻き曇り
一転ざらざら鳴り出した

 

カボチャでんでん でんでんでん
池ガメ のかのか のかのかのん
 ずらころ ずらころ しゃれこうべ
月の子どもは ぺっかぺか
雷さんが ざらざらざん

 

からころからころ落ちてきた
 いっぱいいっぱい落ちてきた
風がひとふき一万個
 風がふたふき百万個
からころからころ落ちてきた
 いっぱいいっぱい落ちてきた

 

カボチャでんでん でんでんでん
池ガメ のかのか のかのかのん
 ずらころ ずらころ しゃれこうべ
月の子どもは ぺっかぺか
雷さんが ざらざらざん
 どんぐり椎の実 からころ津波

 

ぐるぐるぐるっと回ってきたら
 のっぱら案山子 ぼろ布ぱたぱた
案山子の周りに集まった
 カボチャ 池ガメ しゃれこうべ
月の子どもに 雷さん
 どんぐり 椎の実 キノコにアケビ
 ウサギにねずみにイノシシ うりんぼ
 ヤマイヌ ヤマネコ テンレック
 ムササビ モモンガ センザンコウ
 なんでもかんでも 集まった

 

カボチャでんでん でんでんでん
 お目目ぎらぎら。お口耳までバックリこ。
 奥歯の奥からがきがき言った。
 「のっぱら全員 よくお聞き 今日はハロウィン 悪魔の日」
カボチャにかにか 皆んなもにかにか。
 皆んなでいっせにがきがき言った。
 「今日はハロウィン 悪魔の日 今日はハロウィン 魔モノの日 今日はハロウィン 幽霊日」

 

皆んなのにかにか笑い声。
のっぱら にかにか笑い声。
 風が遠くへ 運んだよ。
  (おしまい)