収蔵庫は満杯、寄贈はお断り──。
そんな時代に、コレクターは何を選ぶべきなのか。

根付の資料を整理していたら、懐かしいチラシがひょっこり出てきました。2018年に掛川二の丸美術館で開催された「ウニコール根付展」のものです。あの時は新幹線に揺られて掛川まで行ったなぁ、としみじみ思い出しました。


当時コレクションを出品していたコレクターの方とも、先日の国際根付ソサエティの会合で久しぶりにお会いしました。
その時に聞いた話が、ちょっと衝撃的でして──
掛川二の丸美術館にコレクションを寄贈しようとしたら、断られてしまったとのこと。
理由はもちろん「収蔵庫がもう満杯だから」。
しかも美術館側の話では、
「収蔵庫を増築するなら1,000万円ほどかかるので、そこまで負担していただければ…」
というニュアンスだったそうで、僕なんかは思わず
「え、美術品を寄贈する上に金まで取られるの?」
と目が点になってしまいました。


最初は寄贈の約束をしていたのに、最近になってどんどん渋りはじめたらしく、やっぱり口約束はろくなもんじゃないですね。(笑)
結局、長年の念願だった寄贈はあきらめて、お孫さんがコレクションを引き継ぐことになったとのこと。これはこれで、なんだか救われる話でもあります。


ちょうどNHK「クローズアップ現代」でも“文化財クライシス”が特集されていましたね。
日本中の博物館・美術館が、寄贈希望の品で溢れかえっている。
中には、収蔵品を“廃棄するかどうか”というギリギリの判断を迫られている施設もあるとか。
骨董コレクター界隈なんて、寄贈希望者は山ほどいそうです。
長年集めた宝物を散逸させたくない気持ちは、痛いほど分かります。
でも僕は──
「売って、次の“好きな人”に託すほうが幸せなんじゃないかな」
と思うタイプです。寄贈できたとしても、展示される可能性は低い。
研究対象になる確率も低い。そして多くは、光の当たらない収蔵庫で眠り続ける。
それなら、次の持ち主のもとで愛でられたほうが、品物も嬉しいんじゃないかと。もちろん、これは価値観の問題なので正解はありません。
僕自身が終活の境地になるには、まだまだ時間がかかりそうです。
それまでは、コレクションとの日々を楽しみたいものです。
根付は、手のひらに収まるほど小さな存在なのに、
持ち主の人生や時代の空気を、そっと吸い込んで生き続けます。

どこへ行くのが幸せなのか──
海外旅行好きな根付が多いので、海外コレクターの掌に収まるヤツもきっと多いでしょう。
日本人コレクターの僕らはただ、その声に耳を澄ませながら、
今日もひとつひとつの出会いを楽しんでいきたいものですね。
