熟年男性必読!
精力減退はセックスレスの始まりではなく、
新たな夫婦生活の始まりにもなる。
以前『美熟女の秘訣』(2023年3月11日)で、還暦を過ぎてもセックスを堪能しているカップルを紹介した。その時は女性に美しさの秘訣を聞いたが、私としては男性でも未だ現役で頑張れるという彼氏さんの方に関心があった。
男性週刊誌では『現代』と『ポスト』が「死ぬまでセックス」をよく特集し、熟年男性~高齢者男性の「性の愉しみ方」を追及している。記事を読むと「なるほどね」と理解できるのだが、実際はどうなのか? 私はどうしても実践している当事者の話に興味があった。
そこで、女性から彼氏さんを紹介してもらい直接話を聞いてみた。
―― 見た目が精力絶倫というふうには見えないんですが? どちらかと言うと痩せている方だし。
「さすがにもう昔ほどガンガンいけないですよ。今じゃ年相応にスローセックスしかできなくなったし。でも、彼女にはそれが良かったみたいです。そこから急に連続イキをするようになったしね」
―― いつからセックスのスタイルが変わったんですか?
「AGAの後遺症を受け出してからです。50代の時に頭頂部が薄くなり始めたんでAGAの薬を飲み始めたんですが、数年後から射精による快感が得られなくなってしまったんです」
―― AGA治療は精子の数が減るという副作用があるそうですね。
「そうなんです。なった人にしかわからない苦痛ですよ。それからはセックスの楽しみがなくなり、彼女を抱きたいという気持ちも薄らいでいきました」
―― AGA副作用に限らず、加齢による精力減退は仲の良い夫婦でもセックスレスの原因になるといいますからね。射精時の快感がなくなったら、男性がセックスをしたくなくなるという気持ちは分かります。それでも彼女を抱き続けたのはなぜですか?
「抱いてるとすごく可愛さを感じるからです。彼女に還暦なんて関係ありません。まるで40代みたいだし。でも、自分はもうガンガンいけなくなってしまって、気持ちとは裏腹に自然とスローセックスになっていました。でも、ガンガンいかないことで挿入中に彼女のことをじっくり観察できるようになったんです」
―― 性の集中力が下半身から中枢神経に移ったわけですね。それによって彼女の姿態を冷静に見られるようになったと。
「その通り。言い方は悪いですが、彼女を車に例えるようになりました。そして、私は運転手というか操縦士。以前の私は体が勝手に欲望のまま動いていたんですが、冷静になると自分の思うように彼女を操れることが分かったんです」
―― それが運転手ではなく操縦士だと。
「どうすれば声を出すか、どうすれば反応するのか、どういうタイミングでイカすことができるか。それらが完全にわかるようになったんです。それはまるで車を運転する時と同じ感覚。運転好きの人なら、車を自分の思い通りに動かす快感が理解できると思います」
―― そうすると射精しなくていい気分がずっと味わえるというわけですね。
「逆を言えば、女性も相手の動きを察しして、わざと男性が期待するような反応を示せば、抱きたいという気持ちを起こさせることができるんじゃないですかね」
―― それがセックスレス解消のひとつの手だと?
「あ、でも無理ですね。快感を得ている最中の女性はそんなことを考える余裕なんてないですから。それをやったら風俗嬢と変わらなくなるし、セックスから愛情を感じることができなくなるので」
―― 今は快感よりも愛情を重視してるって感じなんですか?
「これは最近になって思うようになったんですが、私は彼女の中に入ってるだけで気持ちがいいんです。動かさなくて膣にじっと包まれてる感覚に快感を覚えるようになりました。
若い男性は挿入してしまうとすぐに腰を動かすことで快感を得ようとしますが、女性は繋がることで快感よりもまず愛情を感じようとするんです。
精力が弱まった今の私が、まさにそうなっています。繋がった瞬間に愛情を感じる。いつまでもあそこに包まれていたい、いつまでも彼女の体を抱きしめていたい、そう思うからすぐに動かす気がしない。
イクことを知らない女性などは、特に繋がりから愛情を味わおうとするんじゃないかな」
―― なるほど。こればかりはAGAの副作用を受けなければ永久に理解できなかったことでしょうね。男性がセックスで精神的快楽を得るにはこういうきっかけがないとわかりませんね。
「そして、抱いてあげることが大事なのではなく、どのように抱いてあげるかが大事なんです。どうやって幸せを感じるような抱き方をするかです。それは男性側にエゴがあっては無理。だからと言って女性に媚びるような抱き方では自分が満足しませんけどね。それだとただの義務になってしまう」
―― それはあなたが奉仕型のセックスをするようになったから、わかり得たことなんですよね。
「そうですね。今は彼女に“入れて欲しい”ではなく、“抜かないで欲しい”と言わせるセックスを楽しんでいます。それにより私は射精感に代わる精神的な満足を得ているし、彼女は肉体的な快感を満喫している」
―― 彼女はあなたの変化と同時に自分自身も変わっていったそうですね。
「初めは喘ぎ声を出さなかったんです。よほど私が下手なのかと自信喪失しましたよ。でも、今は素直に出ています。私は思うんですよ。喘ぎ声を出さないのは女性の問題ではないと。男性がいかに出させるかにかかっているのだと。本当に気持ちが良ければ自然に出てくるものですよ。今の彼女のようにね」
―― それもある意味操縦なわけですね。というかリードですよね。男の責任は重大だ。
「好きモノの女性は別として、本気で好きな女性を抱く時に、単なる性の捌け口としか見ていなかったら、セックスから愛情を感じるなんてことはできませんよ。肉体的な快感だけで成り立っている男女は、いつしかセックスレスになるのは必然です」
―― こればっかりは若い男性には理解が難しいでしょうね。だからと言って精力が落ちるのはイヤだし。それでもこういうことを少しでも理解していけばセックスレスは軽減されるだろうし、離婚も回避できるかもしれませんね。
熟年でも独善的で身勝手で傲慢で女性に対する思いやりがない男性には無理。若者には難しいが、セックスによって精神的な愛情を育めるかどうかは男性自身にかかっている。
それにしても、還暦過ぎた彼氏がセックスをできるというのは、彼女が美魔女だからという理由だけでなく、彼氏の体調変化に伴う発想の転換があったからに他ならない。稀なカップルではあるが貴重な話だったと思う。私も精力が落ちたら……いや、そうなる前に見習わなければ!