前回の記事は、こちら─、
『「 将棋とは○○のゲームである 」( 米長邦雄 / 将棋名人 ) 』
運と言うと─、
通常、我々は「 運が良い ( 悪い ) 」などと言うように、
偶然の産物であり、
自分の窺い知れないところで生じる、
自然現象だと考えがちだが、
ある勝負師の方の話によると、
運には実は、二種類あると言う。
天運と地運 ( 自力運 ) と呼ばれるもので、
天運とは、先ほども述べた、
我々が通常「 運が良い ( 悪い ) 」などと言うような、
その時、その場に持ち合わせた運、
偶然の巡り合せであり、
数学の確率論などが扱うのも、この領域と言える。
それに対し─、
地運 ( 自力運 ) とは、
与えられた状況の中で、足固めを行い、
意図する方向へと、
物事を変化させて行く取り組みの中で、
自ら築き上げて行く運の流れのようなもので、
野球などで、よく「 試合の流れ 」などと言うのも、
まさに、選手たちが試合運びの中で、
自分たちのチームに勝機を引き込んで行く、
運の流れのことを述べていると言える。
米長名人によれば、
その日の対局に勝てるかどうかは、実力5割、
後の5割は、当日のカミさんのご機嫌次第と述べ、
会場の笑いをとることも忘れなかったが、
将棋のタイトル戦ともなると、相撲と同様、
全国各地で巡業を行うことになる。
その際─、
米長名人はまず、訪れた土地の氏神様に、
挨拶に行くと言う。
そうやって─、
まずは、その土地に受け入れてもらうことが、
運を引き寄せる第一歩だと語っておられた。
いやはや─、
トッププロともなると、我々が思いもよらないところで、
勝負を繰り広げているのだと、驚嘆した次第である。
最後になるが─、
米長邦雄名人は 2012 年に急逝された。
私も将棋界のことについては、
それほど詳しいわけではないが、
私のイメージの中では、
かつて、升田幸三、大山康晴といった、
剣豪のごとき将棋指しの風采を継承した、
最後の生き残りのような存在で、
米長名人の死は一つの時代の終わりを、
告げるものであったようにも思える。
心からご冥福を、お祈りする次第である。