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『 イヴ・サンローラン ~ かつて「 帝王 」と呼ばれた男とは思えない、その実像 』
私は、そんな、サンローラン氏の姿を眺めながら…、
かつて TK のイニシャルで親しまれ、
日本のミュージックシーンを席巻した、
人物のことを思い返していた。
私も、その人物のサウンドは、
少なからず好んで聴いてきた人間の一人だが、
確かに端整なルックスは、みとめられるものの、
テレビ画面を通して観る彼の姿もまた、
得てして肉食系のギラギラしたものとは対照的に、
取り立てて覇気が感じらるわけでもなく、
ミュージシャンとしても、それほど、
声量があったとは言い難い。
このような、線の細い男の一体どこに、
これほどのバイタリティが潜んでいるのか?
と訝しく感じたものだ。
私も、決して内向的というわけではないが、
社交性に関しては、
それほどポイントが高いとは言えず、
それゆえ─、
ハリウッド映画の主人公みたく、
ウィットに富んだ、粋な会話のできる人物像などに、
ある種の憧れを感じてもきた。
しかし─、
たとえ、人との対話において、
言葉足らずな人間であったとしても…、
むしろ─、
そうであるがゆえに、
自分なりの "表現手段" においては、
卓越したものが築かれて行ったのではないだろうか?
もちろん─、
彼ら天才たちと自分とを、
対等に並べて論じることはできないが、
"自分は自分だ…"
それを体現して見せた彼らに、
心から拍手を送りたい気持ちでいっぱいだ。
TK 氏にいたっては、その後、
紆余曲折もあったようだが、
去年、デビュー 30 周年を迎え、
かつてのユニットで再び活動を開始しているようだ。
もう一度、彼のサウンドに浸ってみるのも、
一興であろう。
「 おれたちは皆、自分とは違う人間になりたいと思うもんだ。
だが、アーティストの仕事は自分自身になることだ。」
(『 FOOLING FOUDINI 』Alex Stone )