創るセンス 工作の思考 | One of 泡沫書評ブログ

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創るセンス 工作の思考 (集英社新書 531C)/森 博嗣

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前回『自由をつくる 自在に生きる』の書評をした際に、これでもう森博嗣については語らないぞと思っていたのだが、その決意もむなしくつい買ってしまった。これはもうドツボにハマっているという状況だろう。こうしてまた、森氏の口座にチャリンチャリンと信者のお布施が振り込まれていくわけである。きっとレールの材料費の一部にでもなるのだろう。結構なことだ。以前私は『S&Mシリーズ』という一連の作品(短編含めて12冊くらいだったと思うが)を、一度新刊で買い、古本屋で売りさばいたのちに、もう一度新刊で買いなおしたという経緯がある。それくらいお布施をしている頭の弱い在家の信者なのである。(それ以外のシリーズは悔しいのでまったく読んでいないが)

ところで本書にしろ『自由をつくる 自在に生きる』にせよ、これはいったいなんのジャンルなのだろうか。森ファンなら本にいちいちジャンルなんか要らないさ、というかもしれない。ジャンルなどという本質的でない分類などに踊らされているようではものごとの本質は見えない。良い本は良い本、それでいいじゃないか、と。

だがわたしは断言しよう。これは「自己啓発」の本である。誰が何と言おうと自己啓発そのものである(笑)。功成し遂げた天才といえども、やはり功成し遂げたがゆえに人生訓めいたことを書いておきたくなったのだろう。要するにさいきんの若い者は・・・というような話である。しかし世に数多ある「成功者の自慢話」「おじさんたちの訓示」みたいな本を想定されると、ちょっと違うような気もする。ひとことでいえば、「ものをつくる」という点を究極まで考えていく、かれ独自のその思考プロセスを開陳しているという本なのではないだろうか。

ここまで高みにくると一種の宗教的な香りすらしてくるが、森氏のような超合理的思考の持ち主の場合は「教祖」というより「求道者」というイメージの方が近い。うまく説明できているかどうかわからないが、とにかくそういう本である。