『オロ』
いい映画だった。
ネパールを知り、ネパールを愛する私は、立ちふさがるヒマラヤを前に、ヒマラヤの向こう側にあるチベットを想う。
この映画は、チベットで起きていることを、少年オロを通して、子どもの少し低い目線から私達に語りかけてくれる。
離れ離れになってしまった家族、しかし常に家族のことを考え想うオロに、
これが「不幸な家庭環境」と安易に片付けてはならないと教わる。
人生の経験値の少ない少年なりにも、自分のコトバを持つオロに、強い意志を感じた。
オロは実に「すこやか」な少年だ。
そしてドキュメンタリーに中立性なんていうものは存在しないのだということを改めて確認する。
編集や音楽によって脚色されたオロの世界は優しさを増した「作りもの」の世界に変容する。
下田昌克が描く優しい世界が更に色身を広げている。
監督は「チベットが好きなんだもん」と言ってカメラを回す。そこには計算なんかではない、純粋なチベット愛でカメラを回しているように感じる。
私が様々な側面を持つネパールを愛するのと、まるで同じような目線で。
http://www.olo-tibet.com/