「潤君は少しカウンセリングを受けた方がいいんじゃないかと思って、私の友人の錦織を連れてきたよ。
病気の事だけを考えていても心は成長しない。
外に出ていく勇気持たなきゃ。
まあ、彼等の君に対する溺愛がブレーキをかけているのは否めないけど」
今日はパパもおとーさんも来ない日。
しょーくんも来れないって。
「初めまして、松本潤君」
「はじめまして、こんにちは」
「じゃあ、任せたよ」
え?ひがしやま先生行っちゃうの?
あわてて白衣をつかんだら、新しい先生にやんわりと外された。
「お部屋においで、潤君」
ボクの手をにぎった先生はぴーたーのごほんをみて、
「先生のお部屋でその本を見せて?
あったかくて美味しいミルクも用意してあげるから」
ってにこにこ笑った。
そう、あの時、ボクは先生が中庭に現れたから勘違いしたんだ。
おねーさんが来てくれたって思っちゃったんだ。
似てたから。
でも、先生は違ったんだ。
「先生、いつもペンダントしてる。
かっこいいね」
「これ?とても大切なものを入れて肌身離さず持っているためのものだよ」
「何が入っているの?」
「見せてあげようか」
あの中身はなんだったんだっけ?
でも、
「もっと早く気付いていればあの子は【ミートパイ】にならなかった。
【ミートパイ】にしたくない人がいるなら早めに手を打たないとね。
そう思わないかい?」
その言葉はボクをがんじがらめにして……しょうくんにお願いをして買ってもらったペンダントに、
【にしきおりせんせいしょーくんの中のボクをなくして
ミートパイにしないで】
って小さく折った紙を入れた。
とても苦しくて死んでしまうならしょうくんには忘れて欲しいと。
【ミートパイ】イコール死ぬことだから。
でも、今、先生のお墓の前でボクは全てを思い出した。
呪いのようなあの言葉。
あの先生のペンダントの中に入っていたのは、
先生の妹さんのお骨と【君がミートパイだよ】という言葉。
そして診察室にあったのは先生とおねーさんの笑顔の写真だった。
「しょうくん、ボク全部思い出したよ。
そして、先生の考えていたこともわかった気がする。
悲しいね、先生」