3歳男の子。

けいれんで救急搬送。

数日前から発熱あり、咳や鼻水もあったとのこと。

 

小児科ではけいれんはよく見るので、いつもの熱性けいれんかな、という印象でしたが、どうにもけいれんが止まりません。血液検査で低血糖あり。脳波にも異常があり、急性脳症と診断。けいれんが止まったあとも意識障害が遷延しました。

よくよく聞くと、たびたび抗生剤を頻用されており、このときも前日から抗菌薬が処方されていました

血液検査ではカルニチンという物質が著明に低下していました。そのためにけいれんが止まらなかったのですね。

最終的には後遺症を残さずに改善しましたが、退院までに1か月ほどかかりました。滝汗大変でした。

この患者さんは結局ウイルス性の上気道炎(風邪)だったので、結果的には抗生剤は必要ない病態でした。処方歴を見ると、その前に頻回に投与されている抗生剤も、必要ないものも多かったのではないかと予測されました。

 

抗生剤のうち、物質名に「ピボキシル」とつくものは、小児などに頻用すると低カルニチン血症となり、低血糖になったり、脳症を引き起こすことが指摘されています。「ピボキシル」基がつくお薬でよく使われるのが、以下です。

  • セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物フロモックス
  • セフジトレン ピボキシルメイアクト
  • セフテラム ピボキシルトミロン、ソマトロン等)
  • テビペネム ピボキシルオラペネム

どれも、一般的によく使われるお薬たちです。

もともと、カルニチンが欠乏しやすい子どもが、これらのお薬を飲むと、お薬が分解される過程でカルニチンも一緒に排泄されてしまい、欠乏症の症状が現れます。

このように、抗生剤の副作用として、重篤なものがあるので注意です。

 

病態によっては、抗生剤が必要な場合もありますが、本当に必要なのかどうか、(特に毎回抗生剤を処方する医師には)一言聞いてみてもいいのでは、と思います。