イギリスのとある香水ショップの、ダブの香りのそっくりさん。ダブと言えば、日本でも身近な存在だ。ダブシリーズは種類が豊富なのだが、その中でも1番歴史の古い、固形石鹸の香りを模したのが、今回のそっくりさんだ。如何にも石鹸らしい、グリーンが強調された清潔なホワイトフローラルの香りに惹かれる方は多いのではなかろうか。そして誰もが、こんな香りの香水が欲しいと思ったことがあるのではなかろうか。その夢のような香りを手に入れた。だから、今回のレビューの責任の重さをとても承知している。


早速、肝心のレビューに入ろう。身に着けた瞬間にはまさにダブに似ていると思った。真っ白いホイップのようにきめ細かく泡立てた、あの時の香りだ。今すぐ、あのなめらかな泡に顔をうずめたい気分になる。しかし、そもそも香りは泡と一緒にすぐに洗い流してしまうものだ。今回のそっくりさんは、香油という形態だから香りの持ちがよく、泡のように流したら一瞬で香りが消えてしまうことはない。つまり、普通なら一瞬しか香らないものを、延々に嗅いでいることになる。そうしている間に、違和感を感じてしまった。

バスタイムにふわっと漂った後に、洗い流して失われてしまうからこそ、ダブの香りには魅力があるのだ。調香技術でも、 洗浄料の香りはあくまでも瞬間の美を追求して設計する。桜はぱっと散るからこそ、花火は一瞬で燃え尽きてしまうからこそ、魅力があるのと一緒かもしれない。刹那的だからこそ惹かれる現象は、嗅覚にもある。これが今回の大きな気付きだった。

そしてこの時初めて、お風呂場でのダブの香りには、二つのフェーズがあることを理解した。
1.石鹸を手に取って、泡立ててから洗い流すまでの、勢いのある香り。
2.洗い流した後に肌に残る、ほのかな香り。これは更に2種類に分かれる
2-1.自分の肌に残った香り、甘く感じる
2-2.お風呂上がりの家族が通り過ぎた時の香り、爽やかに感じる

筆者が期待していたのは 、1の香りがずっと続く製品だった。結果はずっと1の香りが長続きした。ずっと泡に包まれている気分でいることが、良いことか悪いことかは別として。まさに夢のような製品だ。そしてお風呂場の湯気の助けが無いせいだろうか、本物より少しだけドライな香りに感じる。ちなみに、手首につけて空気にさらして香らせると、あっという間にタルカムパウダーのようなムスクの残骸になってしまった。永遠にダブの香りを維持するには、服に隠れる部分の肌に付ければ良い。もしもお試しになる場合は、ここにご注意いただきたい。

ここで、高校時代の一つの思い出が蘇ってきた。お風呂上がりの父から石鹸の香りがしたことがあった。反抗期真っ只中で、まさに父親を鼻つまみにしていたが、この時だけは、いい香りだな、ずっとその香りがしていたら、娘としてはうれしいのにな、と思った。

そう、ダブはそもそも男女共用、しかも対象年齢もお子様からお年寄りまでのトイレタリー製品だ。香水のマーケティングでは、清潔感あるホワイトフローラルは若い女性用に分類されがちだが、実は誰にだって似合うのではなかろうか。これはアナイスアナイスの功罪かもしれない。

つまりダブは、自分自身が持っている固定観念を知るための、教材になりそうだ。 ダブの香りを嗅いで、老若男女のどのグループにはふさわしいが、どのグループにはふさわしくない、と考えているならば、それがあなたの持つ偏見だということになる。その偏見を自分の個性として大事にするか、変えたいと思うか、どうするかはあなた次第だ。ダブを使うのが自由なら、自分の考え方をどうするかも自由なはずだ。自分自身の考え方を素直に受け入れるということは、異なる考え方の存在も尊重することにつながる。 あなたはそうなのね、私はこうだけど、と。十人十色ということだ。もしも逆に、私はこう考えるから、あなたも同じにしろと言われたら、誰もが反発するだろう。

とりあえずドラッグストアに走って、今すぐダブを手に入れて、皆で考えようではないか。もちろんビオレでもメリットでも牛乳石鹸でも、代用可能だ。