TV画面の中、恋人が笑う。
その笑顔を側で自分に向けて欲しい………


「敦賀さんお別れしましょう。」
繰り返しみる悪夢で彼女が告げる結別。


世界でただひとりの俺を闇から救って癒してくれる奇跡のような少女。
幸せになる事を許せなかった俺のそばに寄り添ってくれた大切なひと。
俺の心を惹きつけ捕らえらて離さぬ至高の存在。


傷付き愛を拒絶した彼女が受け入れてくれた。腕に抱きしめる幸せを知ってしまったから、もう先輩への尊敬や敬愛では我慢できない。


キョーコに愛されたい。
その強い願望とキョーコから避けらている現実が、深く閉じ込めたはずの利己的で横行な闇を呼び起こそうとしている。
ーーーーサラッテ、オカシテ、シバリツケテ、トジコメテシマエバイイ。ーーーー
キョーコから愛されないなら………キョーコがもう他の誰も愛せないようにしてしまいたい。
そんな凶悪な思想の化け物を腹の中で飼いながら、ぎりぎりのバランスで敦賀蓮の外ヅラを貼り付けている限界の状態で…………キョーコを見つけてしまった。





テレビ局の倉庫近く人気の少ないその休憩スペースで。
DarkMoonの打ち上げパーティーでキョーコを美しく頭からつま先までコーディネートして、当たり前の様にエスコートしたあの貴島と一緒にいるところを。
観葉植物の鉢の陰に隠れ、割って入るタイミングを計っていると彼女が言った。


「……どう足掻いても、この恋の終りが見えてしまってるんです。」
恋の終りが見えている?
それは、俺と別れるってこと?
頭が理解を拒んで身体が動かない。
「京子ちゃん、辛いだけの恋なら忘れちゃえば?………俺が、忘れさせてあげようか?」
「………この恋を忘れる………ですか。」


そんな事、許せるものか!!
カツカツとわざと革靴の音を立てながらふたりの前に向かう。
「貴島くん、ごめんね。それは許せない。彼女は………譲れない。」
近づく俺を見てキョーコが青ざめる。
どうしたの?そんな震えて脅えた顔をして。俺が怖い?………でも、ダメだよ。君と貴島とをふたりきりにしておくなんて耐えられないんだ。
「キョーコ………おいで。」
貴島の目を意識してわざと君の本名を呼び捨てで呼びながら、手を差し出す。


そんな俺とキョーコを見やって仕方がないな、とでもいったような顔つきになった貴島が、君の耳元で何かを囁く。
その、近い距離に腹が立ちキョーコの手を取ると引きずるように連れ去る。
その背中に貴島が
「京子ちゃん、駄目だったら逃げておいで。」
と声を投げるのが、さらに俺の意識を苛立たせた。




そのまま、放り込むようにキョーコを車へ乗せるとマンションまでありえないほど荒っぽい運転で走った。一言も発さずに。
助手席で縮み上がっているキョーコを引っ張り出し自宅へと連れ込む。


ドアが閉まると同時に玄関の壁にキョーコの両手を貼り付けるように押し付けて、キョーコの見開かれた目を覗き込みながら唸るように言った。



「絶対に別れないからね………」








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