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2019/11/22/Fri

来年一月十一日に実施の総統選挙と立法委員選挙。総統選挙は民進党の蔡英文、国民党の韓国瑜、親民党の宋楚瑜氏による三つ巴の構図であるが、蔡氏と韓氏とによる「保台」と「親中」(売台)の対決の様相を呈し、目下支持率では蔡氏がトップを走る。

■国民党が台湾の民主を守るだろうか

香港で六月に始まった反政府デモには、蔡英文政権をはじめ、台湾でも多くの人々が関心を寄せ、声援を送っているが、その背景には「今日の香港は明日の台湾」との切実な危機感もあるだろうが、それと対照的だったのが親中派勢力の冷淡さだ。テレビカメラの前で香港情勢への見方を聞かれるや、「知らない。わからない」ととぼけて見せた韓国瑜氏の言動は、その象徴的事例となった。中国への配慮でデモを批判でもすれば、有権者から非難されるためにお茶を濁したのだが、それだけで十分、有権者の不信感や怒りを買った。

だから最近は、香港情勢に関心を抱くポーズも見せている。例えば先ごろ、香港の「二つの普通選挙」を主張した。つまり香港の行政長官選挙と立法会選挙の二つは普通選挙で、と訴えたのだが、しかしその一方で、やはり中国政府への配慮を欠かすことができないらしく、「香港独立反対」とも付け加えている。

しかもこの時、こうも言い放った。「香港人の流血を用いて台湾総統選挙で票集めするのは、香港人を尊重していないことになる」と。要するに、「香港人の民主追及を支持するのが台湾コンセンサスだ」などと、現地情勢に強い関心を示し続け、多くの有権者の賛同を得ている蔡英文氏を牽制したのである。

このように、香港の民主化支持を明確に打ち出せないのが、すでに中国政府の影響下にある国民党の実態なのだ。もしこの同党が政権を奪取すれば、台湾の民主主義も守られなくなるとの懸念が広がり、支持率で蔡英文氏の先行を許しているといった状況だ。

■国民党なら「一国二制度」へ向かう恐れが

韓国瑜氏は六月、自らの対中国路線として、次の三点をフェイスブックで挙げていた。

(一)九二年コンセンサスを支持する。
(二)台湾独立に反対する。
(三)一国二制度を受け入れない。

「一国二制度」を受け入れないというは、本当か。それぞれについて解説しよう。

(一)「九二年コンセンサスを支持する」は、台中間の「一つの中国」原則での合意を堅持するという意味で、これは国共両党の合言葉でもある。実際にはそのような合意は存在しないのだが、しかし国共両党はこの合意の堅持が台中関係を維持するための基礎だとしている(現在の民進党政権はこの合意を否定するため、中国はこれとの対話を拒否する訳だ)。

つまり韓国瑜氏もまた、「一つの中国(台湾は中国の一部)」と主張しているのである。たしかに国民党は、中国は台湾側が「一つの中国」の「中国」を中華民国と解釈することに合意していると、国内向けには強調するが、しかし中華民国体制の存在を認めない中国は、そのようなことは言っていない。そして国民党もまた、それに抗議もしていないばかりか、中国の前では「中華民国」の国名すら口にしない。

つまり「中国は世界にただ一つ。中国とは中華人民共和国であり、台湾はその不可分の領土の一部」という中国側の「一つの中国」の定義を、国民党は事実上受け入れてしまっているのである。むろん韓国瑜も例外ではない。

(二)「台湾独立に反対」もまた、国共両党の合言葉だ。「台湾独立」を文字通りで言えば、「中華民国体制の転覆と台湾国の建国」となるが、中国が定義する「台湾独立」とはそれだけではない。

例えば、現在の民進党政権のように、例え中華民国体制を維持しようと、自らを主権国家だとし、中国統一を拒否すること自体が、つまり台湾の独立の状態を強調すること自体が、中国からの分離独立を求める「台湾独立」の企てであると、中国は位置付けるのである。

したがって中国が唱える「台湾独立に反対」とは、「中国統一に賛成」と同義。しかし国民党も韓国瑜も、そうした宣伝に反論も抗議もせず、中国とともに、台湾の独立した状況に「反対」を唱え続けているのである。

(三)「一国二制度」は受け入れられない、というこの一点だけは中国と真っ向から対立する。

しかし「受け入れられない」というのは、中国統一に反対する圧倒的多数の有権者に向けたもので、中国に対する主張ではない。上で見たように、国民党も韓国瑜氏も、すでに中国の中華民国否定の考えに基づく統一の主張に抵抗できずにいる。国民党は対中関係の改善による経済の浮揚を訴えているが、その改善の前提としているのが、こうした中国の統一攻勢に対する無抵抗姿勢なのである。結局、対中関係を深化させて行けな、その着く先は「一国二制度」の受け入れしかないのだろう。

以上のように韓国瑜氏が自ら掲げる対中路線とは売台路線以外の何物でもない。これほどの露骨な売国的な政党、政治家が実際に存在するだろうか、と日本人なら疑いたくなるが、しかしこれが台湾の現況なのだ。

国民党の中国系の人々(あるいは中国人化した台湾人)には、民進党という台湾人政権の支配下で故国である中国と対立して血を流すより、故国に併呑され、その支配を受け入れた方がまだましだ、との心理が広く持たれているのである。ここ二十数年来の国民党による所謂「聯共制台」(共産党と提携して台湾人を制圧する)は、正にそうした思いに基づく売国政策だ。

ちなみに親民党から出馬する宋楚瑜氏もまた中国系で、やはり「九二年コンセンサス支持」と「台湾独立反対」を明言している。それでは「一国二制度」についてはいかなる見解か。五月に習近平氏と会見した際、「一国二制度について話し合わなければならない」などと台中協議の必要性を語ったと、中国メディアは報じている。本人はそれを否定するが、実際の発言はどうあれ、台湾が中国とは別個の存在であるとの現状を否定する以上、売国度で言えば韓国瑜氏に勝るとも劣らない。

■中国にとっても落とせない一戦

「聯共制台」をわかりやすく言えば、K氏(国民党)が対立するM氏(民進党)を牽制するため、親戚である暴力団員のC(中国)に力を借りてM氏やその仲間を威嚇するようなものだK氏は暴力団の力を借りている以上、その言いなりになり、見返りを渡さなければならない。

かくして国民党の中国への従属が行われるのである。同党は国内では中華民国への愛国心を煽ることに余念がないが、しかし中華民国の存在を否定する中国に対してはどうか。

例えば中国の要人と会見する際、国民党は中華民国の国名は口にせず、国旗は覆い隠し、「中華民国総統」を「台湾のリーダー」と呼び変えるほどの従属ぶりだ。

こうした売国勢力に政権を取らせたは、やがて台湾は中国に呑み込まれ。「第二の香港」になると警鐘を鳴らすのが民進党だ。「抗中保台」を叫び、統一を望まない国民党支持者をも取り込もうと、今回の選挙戦では中華民国旗を前面に出し、支持を呼び掛けている。

かつては中華民国体制からの脱却を訴えた民進党だが、現在、本当に中華民国体制の護持を訴えるのは国民党ではなく民進党ではないだろうか。

台湾独立の理念は今やどこに。台湾本土派の若い世代の多くは、戒厳令時代以降の民主化時代に生まれ育ち、中華民国体制に抑圧された経験がないため、この体制にはそれほど違和感もないようだ。そしてこうした層が、蔡英文氏の現状維持路線=中華民国路線を最も力強く支えているかに見える。

蔡英文政権のこうした路線は今始まったものではなく、やがてはこれまで民進党を支持してきた台湾独立派の失望を買い、味方を減らすだけかも知れない。昨年の統一地方選挙で民進党が大敗を喫した原因の一つにも、こうしたどっちつかずの蔡英文路線があったと思われる。

選挙戦では国民党カラーであるブルーのジャンパーを着用し始めた蔡英文陣営。副総統候補の頼清徳氏が、ブルージャンパーの下に民進党カラーであるグリーンにネクタイを締めるのは、中華民国路線を突っ走る蔡英文氏へのささやかな抵抗か。何とも痛々しい姿であると、おそらく多くの台湾独立派は感じているはずだ。

いかに「抗中保台」を唱えても、中華民国(チャイナ共和国)の名をいたずらに強調することは、台湾自らが国内外に「一つの中国」を強調するのに等しく、そしてそれが中国に台湾統一の口実、機会を与え続けることになろう。

いずれにせよ、蔡英文氏の「抗中保台」路線の勝敗は、アジア太平洋地域の安全保障に大きく関わる。したがって国民党に影響力を行使し続ける中国政府にとっても、決して落とせぬ一戦。蔡英文氏が「抗中」を叫ぶように、中国もまたこの選挙の「当事者」といえるだろう。国民党を後押しする中国はすでに「選挙に毎日介入している」(蔡英文氏)状況だ。そして介入には目に見えるのと見えないのとがあるが、先ごろの中国海軍の国産空母の台湾海峡通過という威嚇などは、目に見える介入だ。目に見えないものとしては中国に進出する台湾企業、ビジネスマンの操縦、フェイクニュースの発信等々、様々な工作が警戒されている。

したがって地政学的に台湾とは死活的に繋がる日本にとっても、台湾の総統選挙、そして立法委員選挙はもはや単なる外国の選挙とは言えないはずだ。台湾の選挙を、まるで中国の内政問題であるかのように報道するマスコミも、そのあたりをしっかりと伝えていただきたい。

(つづく)
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