誰にでも苦い思い出はある。
誰にも言いたくない、話せない話しがある。
そんな話し。
最初に言い訳しとくけど、風俗は好きではない。
初めて会う、どんな人か知らない異性とあんな事やあんな事をするなんて、許せない。
そんな事するなら、やはり互いの事を知ってる気の知れた恋人か奥さんとするべきである。
学生時代の仲間達と、卒業後も年1回定期的に家族ぐるみで集まり、一泊旅行をしていた。
やがて、子ども達が中学・高校に入ると、部活などで忙しくなり、家族ぐるみで旅行に行く事も難しくなっていた。
年1回の旅行がなくなってしまうのは淋しいと、誰かが、家族抜きの野郎どもだけで集まり、旅行をしようということになった。
その事件が起きたのは、今から20年くらい前のこと。
有名な温泉地に泊まった時のこと。
その時の参加者は5人。
昼間は観光、夜は宴会、一般的な温泉地でよくある宴会風景である。
バカな野郎どもが集まり、酒が入るとロクなことはない。
1人が、ニヤリと笑いながら「行こう」と言い出した。そう風俗へ。
「行ったことないし、乗り気じゃない」と伝えた。
同級生で上下関係はないので、却下する事も当然できる。
しかし、1人、2人と賛同した。変な連帯感だ。もう1人は酔い潰れている。
言い出したヤツが、「風俗行ったことないなんて..... 」と変な同情してくる。
余計な世話だ。今考えると「ヨメとのセックスで満足してる」と言えなかった自分が情け無い。
さて、
どうする。
..........断れなかった。
外へ出ると、すぐにその店はあった。
バカな野郎どもがゾロゾロ入っていく。まるでゴキブリホイホイだな こりゃ。
店には他の客は居なかった。
受付のオッさんからシステムの説明を受け、女性を選べとアルバムを見せられる。
時が止まった。
事件その1
そう、一目でわかった。酔っててもわかる。
目に飛び込んで来たのは、間違いなくヨメさんのイトコの写真。
言葉が出ない。
酔いが覚めた。
ヨメのイトコは離婚したと聞いていた。たしかにこの温泉街はイトコの住む隣り街だ。
受付で写真を見てるほんの数十秒がスローモーションのようだ。
いろんな事が頭によぎった。
すげ〜偶然。こんなんあるんだな。運命の再会。
いや違う。
ヨメイトコと鉢合わせたら、なんて挨拶する?
「お久しぶりです。お元気にされてますか?いつぶりですかねー。」
いや違う。
「お仕事お疲れさまです。こんな時間まで大変ですね〜」
いや違う。
挨拶なんてできるわけない。
ヨメイトコも「あなたの夫を昇天させてあげたのよ」なんてヨメに話せる訳がない。
その前に勃つのか?
いや違う。
この場で顔を合わせたら、今後親族の集まりの度に気まずいに違いない。
とにかく、ヨメイトコと遭遇しないよう、友人達より先に女の子を決めてしまわないといけない。
つづく