患者さんを、何気なく発した一言で、意図せずに傷つけてしまっていることがある。



以前いらっしゃった、小学校5年生の女の子の患者さん。


実は、あまり歯を磨くことが上手ではない。

なので、歯医者さんに行くと赤く染めて磨き残しを見つけるような、染めだす薬を使って、
実際にどれだけ磨き残しがあるのか。
毎回チェックをしたりしていた。

虫歯になると大変だよね。
削らなきゃいけないしさ。
歯を磨けるようになると、その分リスクも減るし。
きっともっと大人になった時にも磨けているとエチケットだったりマナーというところからも、今から習慣づけておいた方がいいしね。


医療者としては、患者さんのために何かしたいという想いがあります。




でもある時。
同じように赤く染めだした途端。
治療する椅子の上で泣き出してしまった。




動揺したのは、担当する歯科衛生士。

何で泣き出したの。
何かいたかったのかな?
やなことしたかな?
どうしよう。
なんとか泣きやんでもらいたい。
何があったのか聞きださなきゃ。





泣いている患者さんに、動揺しながらも。
患者さんが泣きやむように安心させて。
泣きやんでから、やっと聴き出せた心の言葉。





『私、一生懸命やってるのに。』





彼女は、歯並びを治す矯正治療もやっていた。
事実、他の子よりもかなりまじめにやっていて平均のスピードよりも早く治療が終わるくらい、自分のことに取り組める。
だから、歯磨きも、彼女の中では、かなりやっていたことだった。


でも、実際には。
医療者の方が、その状態、彼女のことを汲むことができなかった。

一生懸命やっている。
でも、磨けていない。

それに対して、どういう彼女を受け取れば、より、彼女がもっとやりたいかもと心が動いたか。






それに気がついた、担当の歯科衛生士は。
それをきっかけに、歯磨き指導をすることも抵抗が無くなったそうです。



そして、患者さんに何をしたのか・・・
その場では歯磨き指導をしなかったようです。
でも、その後、今までよりもしっかりと磨けている患者さんへと変化をしました。