2012年に11月15日に腰痛診療ガイドラインという、腰痛に関するデータがまとめられた文献が出ました。

 

そこから7年の時を経て、新たに腰痛診療ガイドライン2019が発表されました。

今、腰痛の理解と対処はどのような現状になっているのでしょうか。改変ポイントと共に解説していきます。

 



まず、初めに、腰痛の定義に関してですが、発症からの期間が4週未満の腰痛を「急性腰痛」、発症から4週間以上3ヶ月未満の腰痛を「亜急性腰痛」、発症から3ヶ月以上の腰痛を「慢性腰痛」といいます。

 

腰痛は、骨や筋肉だけの問題ではなく、神経や、内臓由来のものまで幅広くありますから、一概に同じ対処法と踏んではいけないのです。そして、気になる場合は整形外科で受診することを何よりもお勧めします。

 

さて、そんな腰痛ですが、2012年の腰痛診療ガイドライン(以下:ガイドライン2012)では、「その85%では病理解剖学的な診断を正確に行うことは困難である。*1」と記載されてあります。困難であるという表現は、病名がつけづらいということです。そういうものをひとまとめにして、”非特異的腰痛”といいます。しかし、ガイドライン2019では、その説が一蹴されるような記載がありました。

 

(ガイドラインの参考文献となっている元の論文)


85%→75%

ガイドライン2019では、「腰痛の原因の内訳は椎間関節症22%、筋・筋膜性18%、椎間板性13%、狭窄症11%、椎間板ヘルニア7%、仙腸関節性6%などであった。75%以上で診断が可能であり、診断不明の”非特異的腰痛”は逆に22%に過ぎなかった」と表記されています。そして続けてこうまとめられています。「今後もより高いエビデンスをもった研究が期待される。いずれにせよ「腰痛の85%が非特異的腰痛である」という根拠は再考する必要がある*2」とあります。

 

原因を特定できない85%の腰痛が今や逆に75%は特定できるという伝えています(この根拠の元の論文が、ガイドライン2012では海外論文、ガイドライン2019では日本の論文が使われています)。

 

腰痛の治療は安静がいいのか?

 

さて、腰痛になったら横になるのがいいのかどうか。ガイドライン2019では、急性腰痛では、安静よりも活動性維持のほうが有用である。と位置づけしています。ベッド上安静よりも活動性維持のほうが疼痛(いたみ)と機能の面でより優っているともいっています。

 

腰痛の治療としての物理・装具療法は有用か

このタイトルはガイドライン2019のP45に記載されている表記をそのまま借りているのですが、腰痛を扱う病院などでも様々な治療が行われていますが、その処置の一つひとつを取り上げています。今回取り上げられていたのは、牽引療法・超音波療法・TENS・温熱療法・腰痛サポート(コルセット)です。

 

まず断っておかなければいけないことは、私が今から記載することはガイドライン2019の一部を抜粋したものということです。これによって誤解を招くようなことがあってはならないと注意深い気持ちでいます。しかし、もしかするとどこかのポイントで誤解を招くかもしれません。その点はあらかじめお伝えしておければと思います。今の治療では全く効果がないのだけど、勧められているから続けるしかないのか。。と不安な気持ちでいる方が、この記事に目を通して頂いて、別の方法も試してみるか。という気持ちに"も"なっていただければ幸いです。

 

さて、前置きが長くなりましたが、早速一つずつみていきましょう。

まず、牽引療法ですが、「現在報告されている研究は腰痛(坐骨神経痛を含む)患者へ牽引治療を推奨するのに十分なエビデンスを提供していない」とあります。

 

ガイドライン2012,2019のいずれも、委員会を設置しているのですが、その有識者たちが最後に投票をします。その投票結果は牽引療法の場合、「行うことを弱く推奨する:9名(10人中)」としています。

 

次に、超音波療法ですが、「腰痛治療に対し超音波療法を推奨するには不十分である」とあります。委員会での投票結果は「行うことを弱く推奨する:8名(10人中)」に決定しています。

 

3つ目のTENSですが、これは日本語で経皮的電気神経刺激というものです。TENSは連続的な電気刺激により皮下の末梢神経を興奮させることを促す方法です。さて、これに関しても「行うことを弱く推奨する:7名(10人中)」に決定しています。

 

4つ目の温熱療法は、「腰痛に対する温熱治療を推奨する高品質のエビデンス(根拠)は存在しない」とされています。そしてここでも「行うことを弱く推奨する:10名(10人中)」。

 

最後のコルセットですが、「腰椎サポートは、慢性腰痛治療に益をもたらさないことを示唆した」とあります。(個人的には、学生時代腰痛で病院で作ったのにと残念です。。)

そしてここでも「行うことを弱く推奨する:10名(10人中)」という結果でした。

 

 

腰痛に対して運動はどうなのか?

さて、ここまで、「行うことを弱く推奨する」の連発でしたが、腰痛に運動療法は有用か?ということについてみていきましょう。

こちらでも委員会が投票(11名)しています。なんとここでは、行うことを強く推奨する(10名/11名中)とあります。

ようやくすっきりした気持ちになったかもしれません。

 

以下このように続きます。

「日本における全国的なRCT(←ランダム比較試験:検査の方法)では、運動群(体幹強化とストレッチを10回、1日最低2セット)と対照群(非ステロイド性抗炎症薬[NSAIDs]内服)を調べたところ、腰痛の強さやFFD(テスト方法)に差はなかったものの、腰痛関連QOL(生活の質)が運動群で有意に改善しており、国内においても慢性腰痛に対する運動療法の効果が示された。*3」とあります。続けて「したがって、慢性腰痛に対する運動療法は強く推奨される保存治療のひとつといえる。ただし、現時点では効果的な運動療法の種類を明確に示す論文はなく、運動療法の長期的な効果は明らかになっていない。」ともあります。

 

これは、私から見れば、そりゃそうだ。というところでして、腰痛の原因が様々なのだから、”ある”運動をさせてみんなが一様によくなるなんてことはないはずです。もしかすると、体幹を鍛えてしまうことによって、痛みが増強した人もいるかもしれません。

ここに書かれている体幹強化とは一体なにものなのか興味があります。ストレッチも一体何をおこなったのか?体の前側なのか、後ろ側なのか。反り腰のひとに体の前側の筋をストレッチするとさらに反り腰になってしまって、腰痛が悪化する可能性があります。

そもそも体幹を強化して、腰痛を防ごう!は少々難ありかと。病院では、身体の痛みを”部分”でみるケースが多いと思われますが、そこが原因ではない場合もあります。例えば腰痛が股関節から来る場合も十分に考えられます。痛みの発症ポイントと、原因は違うのです。結果=原因ではないということです。なので、フィジカルトレーナーとしてみた時には、部分ではなく、全体でみることがあります。

 

さて、ここまで長々と書いてきましたが、最後にまとめ… 


とはいけないものです。


まとめると十把一からげとなり、偏った見解になってしまいます。はっきりさせて過激な表現の方が分かりやすくてスッキリするとは思いますが、ここはあえて(というよりも私のポリシー)ぼやっとした形で幕を閉じたいと思います。


ひとつ言えることは、身体に関することは「変わりつつある」ということでしょうか。常にキャッチアップしていこうとする中で、悩んでいる人たちを手助けできる可能性が少しずつ広がるのかなと思います。

 



 Navigate 早田

 

 

 

参考文献: 腰痛診療ガイドライン2012 南江堂

腰痛診療ガイドライン2019 改訂版第2版

 

*1 Deyo RA, Weinstein JN : Low Back Pain. N Engel J Med 344(5) : 363-370, 2001

*2 Suzuki H, et al. Diagnosis and Characters of Non-Specific LOW Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study. PLoS One 2016; 11: e0160454

*3 Shirado O, et al. Multicenter randomized controlled trial to evaluate the effect of home-based exercise on patients with chronic low back pain: the Japan low back pain exercise therapy study. Spine(Philadelphia Pa 1976) 2010; 35:811.