Sa・To・Ri | なつみのブログ

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お引越ししてきました。過去作でよろしければどうぞ(笑)
Yahooブログ『シンチェ大好き凛のブログ』

「なぁ、おい!見たか?」

雑誌に目を落としていた俺の肩をぐいっと引き、耳元でそう告げるヤツを…俺は思い切り冷たく見つめ返す…

「お~こわいこわい…氷の皇太子には男女の何たるか、ってのは通用しないのか?」

肩を竦め、徐に手を引いたヤツに俺は更に冷たい言葉を投げかけた…「何のことだ?」

「美術科のシン・チェギョンが通ったんだよ!!あの、芸高1のオルチャンの!!」

…シン・チェギョン?
その名前の響きには聞き覚えがあった…

「まさか、シン!?シン・チェギョンを知らないわけ?か~~~~まじかよ??」
「皇太子ってのは頭はカチカチなのか?おれっちなんてシン・チェギョンのコト考えるだけでアソコがカチカチになるぞ?」

悶える様にアホ面でそう告げる目の前のチャン・ギョンの頭を…
俺は軽く叩いた…

「いてっ!!暴力反対!!」そう告げるギョンを無視し…俺は読んでいた雑誌に視線を戻した…

「ギョン、馬鹿言ってないで、早くしないとシン・チェギョンが通り過ぎるぞ!!」
クラスの窓には黒集りの人影…その中からギョンを呼ぶのは、カン・インだった…

…イン、お前もか?そう思いながらも俺は雑誌に意識を集中し…ザワメキを無視しつづけた…

「お…おい!!シン・チェギョンがこっちを見たぞ!!」
オトコの黄色い声なんて…気持ち悪いだけだ…そう思いながら俺はぱらりとページをめくった…

俺にとって異性とは単なる飾りであり…恋愛の対象でもなんでもなかった…
…大体、俺が恋愛なんて…出来るはず、ないからな…

大韓民国皇位継承第一人者である俺には…自由に人を好きになることすら出来やしない…

そんな俺の目の前に、すくっと立ち尽くす、ジャージが見えた…

「ぎゃ~~~!!シン!!お前っ!!何冷静になってんだよ!!」
周りのザワメキが更に大きくなったことにすら気がつかなかった俺は…目の前のジャージを下からねめつけるように視線を、上げた…

そこには腕組みして仁王立ちになった、シン・チェギョンが立っていた…

「ちょっと!!顔貸して!!」
いきり立った様子のそのオンナは俺に向かってそう命令してきたのだった…

「断る…何故俺がお前に指図されないといけないんだ?」
そう告げる俺…そんな俺に彼女は真っ赤になって口ごもりながら、告げた…

「あんたが…あんたが悪いんだから!!!」

そう言って踵を返し走り去るオンナを…俺はボー然と見送って、いた…

「おい!!シン!!お前…シン・チェギョンとどういう関係だ!!」
俺の傍には人垣が出来ていた…

「知るか!今初めて会話したんだぞ」
勤めて冷静にそう告げる俺の言葉なんか…周りの人垣には通用しなかった…

「やっぱり皇太子だからな…あっちだっておれっちたち一般市民より…」「皇室の力に屈したのか?あんなに可愛いのに…」

俺に対する羨望と…
あのオンナに対する嫉妬と絶望の心が…その人垣からもやのように吐き出されて、いた…

「本当に知らない…んだ…」
ぼそりと誰に言うでもなく、俺はそう告げていた…


宮に帰った俺は上殿へと呼び出された…
「ただいま戻りました、どのようなご用件ですか?」
自分の両親と祖母であるのに…この人たちと俺の間には遠くて深い溝がある…

そんなことを俺が感じていることすら気付かぬように…皇帝である父が口を開いた…

「シナよ…そなたはもうすぐで高校を卒業する…卒業後直ぐに婚礼の儀を行うこととなった」

「なっ!!ペア…僕はまだ未成年ですよ!!せめて…成年してから…」
そんな俺の言葉が終わる前に目の前の父の体はぐらりと揺れ…

周りから現れた翊衛司(イギサ)によって支えられた…

「ペア!!大丈夫ですか?」
上殿は騒然となり…皇帝はそのまま太医院へと運ばれていった…

雑然とした上殿に残された俺に…祖母である皇太后が声を掛けた…
「シナよ…ヒョンの体はかなり危険な状態なのだ…安静を必要としている…この李王朝を途絶えさせぬため、この婆を安心させるために一刻も早く結婚し…子をなしてほしい…」

涙ながらにそう訴える祖母に…俺は深いため息をひとつ、ついていた…



何も、考えたくない…そう思い床に就いた僕だったが…
そんな時に限って頭の中にはいろんな妄想が、浮かんでは、消えていく…
昔から口に出して自分の思いを伝えることが下手だった僕は…
いつしか自分の世界の中で自由気ままに暮らすことを覚えたのだった…

…現(うつつ)の女に、恋などしない…そんな思いもこの性癖から生まれたモノなのかも、しれない…

浮かび上がったのは…仁王立ちになって僕を上から見下ろしていた、あの女の姿…そう、周りの男子たちが口々に学校一のオルチャンとはやし立てていた、シン・チェギョンだった…

「…はっ…訳の分からない言いがかりをつけて…僕に取り入ろうとでもしていたのか??」口に出してそう言えば…真っ赤になって走り去った彼女の行動が思い起こされ、た…

「…何故…あいつは僕にあんなことを言い捨てて行ってしまったんだろう??」考えても、浮かばないそんな疑問を胸に…
僕はいつしか眠りへと、落ちて、いた…

次の日、登校中の車内から、あの女が自転車で立ち漕ぎしている姿を、見た…

「あれのどこがオルチャンなんだ?」そう思いながらも丁度信号待ちで止まった彼女を見かけ、僕は運転手に声を掛けていた…

「止まってください…知人がそこにいるので…僕もその知人と共に登校します」最初は頑として首を縦に振らなかった運転手に…

小さく舌打ちする…

その舌打ちが聞こえたのだろう…運転手は一気に青ざめ…後部座席のドアを、開いた…

信号待ちしている彼女の、肩をぐいっと引く…
「何!?誰よ!!」そう言って必死の形相を僕に向けてきた彼女に、僕は言った…

「昨日のあれはどういう意味なんだ??大体…」そこまで言いかけた時、彼女は悲鳴を、上げた!

「きゃ~~今日は課題を提出しなきゃならない日なの!!悪いけれど…今は時間がないから!!説明は放課後するわ!!」
そう言って僕の手を振りきって…彼女は学校へと自転車の立ち漕ぎで走り去って、いった…

「…一体、何なんだ??」そうひとりごちながらも…掴んでいた肩の柔らかさ…そして近付いた時に感じた、彼女特有の、香り…

思わず僕はその残り香を探し求めるように…先程肩をつかんだ手を…見つめて、いた…


放課後、僕が帰り支度をしている時に彼女は現れた…

「おい、シン、シン・チェギョンが来たぞ」インのその声は心なしか興奮していた…
「またかよぉ~昨日のアレは夢だったと思いこもうとしていたのに!!」ギョンがそう悔しそうに悲鳴を上げた…

そんな周りを気にすることなく、チェギョンはつかつかと僕の前まで歩み寄り…「昨日は悪かったわね…」そう告げた…

…謝るくらいなら…一体何のために…そんな思いで僕はシン・チェギョンを見上げ、た…

肩を竦め、彼女は言う…

「ごめんごめん、雑音がすご過ぎて…って言っても納得してもらえなさそうね…」ん~~~と言った表情で唇に人差し指をあて…考え込む彼女の姿は、確かに学校一のオルチャンという称号にふさわしかった…

「あは、勘違いだったんだけれど…今度は私があなたに興味が湧いたわ…ちょっと付き合ってよ!!」
そう言って僕は彼女に腕をつかまれ…引き上げられた…

「おいっ!!シン!!」そんな声を後ろに聞きながらも…
僕はこのか細い女子に腕を引かれ…校舎内を走って、いた…
そう・・・皇族は走ってはならない、という法度すら侵して…



「はぁはぁはぁ…」息を切らしながらも僕をリードし、走り続けた彼女の向かった先、そこは学校裏にあるスンデの店だった…

「このままだと、目立つわね…」そう言って鞄の中からダテ眼鏡を取り出し、「はい」と差し出す彼女を…僕はボー然と見つめて、いた…

「んもう…察してよね!!話、したいんでしょ??」
確かに僕はこの突拍子もない女子と…話がしたい、そう望んだ…
だからと言ってそれが彼女に分かるわけが…ない…

「…だ、か、ら…仕方ないでしょ?わかっちゃうんだから!!」

…は???今何と???

「私ね…人の妄想とか、考えることが、わかっちゃうの…」
ちろりとピンク色の舌を出し…そう言った彼女の顔を…

僕は穴が開くほど…見つめ返して…居た…