現在公開されている映画の『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』がすごくいいと友達に言われて。

でも、ちょっと斜めに聞いていたのです。

特攻ものでしょ、現代の少女が昭和の太平洋戦争時にタイムスリップして、特攻隊の青年と出合って、恋して、でも彼は特攻隊として出撃してさよならで、で、現代にまたタイムスリップして戻る。ありきたりだなあ。もう展開、見る前からわかるじゃん。

恋して泣いて、現代に戻って、タイムスリップの思い出を胸に少女は生きていく、でしょ。

一応小説書きの私としては、「なぜかよくわからないけどタイムスリップした」という安易な設定はあまり好きではない。

なぜ、タイムスリップしたかに意味をもたせている作品は好きだけど。

それに、シニア愛犬の看護や仕事の締め切りで忙しくて映画館にいく暇なんてないわよ~腰も痛いし~アマゾンプライムで配信始まったら見るかな~なんて言っていたのです。

 

でも、原作小説がKindleで読めるとわかり、ちょうどアマゾンのポイントがたまっていたので、ポイント使って電子書籍を購入。(ちなみにKincle Unlimitedの読み放題対象になっていますからUnlimitedの会員なら追加料金なしで読めます)

で、さっそく読んでみたのですが。

 

もう。

号泣。

感動。

一気読みでした。

 

人気がでたのもわかります。

汐見夏衛さん、すみません、なめてました。ありきたり展開なんて言って申し訳ございませんでした(平謝り)。

 

現代の少女がタイムスリップで昭和20年の終戦直前の日本にタイムスリップして特攻隊の青年に恋をする。けれど青年は特攻隊として出撃し、二人は結ばれない。そして少女は現代に再びタイムスリップ。

ストーリーはその通りで、確かに意外性はないのですが。

そのタイムスリップした戦中の日本の様子が、生々しく、悲惨で、可哀そうで・・・。戦争の悲しさがひしひしと迫ってくるのです。

確かにタイムスリップでもさせないと現代の私達があの昭和の戦争の悲惨な現実を実感はできないですよね・・・。

甘め恋愛小説と思ったら大間違いでした。戦争への批判が随所に織り込まれています。

 

そして特攻隊といっても、皆がお国のために潔く散りますと死んでいけたわけではなく。本音としてはやっぱり「死にたくない」だったと思うわけです。特攻という戦法について、いろいろな考えや選択を、示してくれています。これが、この小説を奥深いものにしていると思います。

 

それからこの小説のクライマックスは最後にあると思います。主人公の少女、百合が現代に戻ってきてから、恋した特攻隊員の彰青年の手紙と出合うシーンと、彰青年が特攻隊として出撃してから敵船につっこんでいくまでの彼の思い。

ここで、読者は百合と彰の心の結びつき、彰の本当の気持ちを知り、心が揺り動かされて、涙が止まらなくなります。

ネタバレになっちゃうから詳しくは書きませんが。

アラフィフの私が夜中にラストを読んでひーひー号泣。ティッシュで鼻かみまくり。

本を読んでこんなに泣いたのは久しぶりでした。

翌朝、泣き過ぎてまぶたが腫れてひどい顔になりましたが・・・。サングラスして隠さないといけないくらいでしたが(笑)。

 

悲しいけれど、でも勇気をくれる、心が洗われる小説です。

そう、汚れ切ったアラフィフの私の心も洗われましたよ~。

 

昔、鹿児島の知覧の特攻平和会館を訪ねた時のことを思い出しました。

みんな青年というよりも少年という顔をした若い特攻隊員たちの写真がたくさん展示されていて。

その手紙も・・・。

作者の汐見さんも、この特攻平和会館を訪ねていますね。

こんなに多くの若者が、死ぬとわかっている攻撃に片道燃料で出撃していったなんて。

苦し過ぎる現実に直面する場所なのですが・・・。

そんな攻撃を推し進めた軍本部の冷血と無謀さには本当に腹が立ちます。参謀本部や将軍たちは、自分が特攻してみろってのよ。

 

特攻で命を散らした人達の犠牲の上に、私達は今を生きているということを忘れないようにしないと。

そうあらためて思わせる小説でした。

こういう本こそ、文部省推薦マークで、少年少女達に読んでもらった方がいいと思うわ~。

 

ちなみに、知覧はとてもいい所です。風光明媚で。

特攻平和会館を訪ねるかどうかは置いておいても、ぜひ、機会があったら訪れてほしい、美しい場所です。

そして私は知覧茶が好きです。爽やかな味の日本茶です。