どの会社でも、古今東西、利益の追求は至上命題で、国や東京都などの公共団体でも費用対効果を追求する時代である。
その一方で、障害者の法定雇用率は年々上昇し、様々な障害を抱える人が同じ職場で働いている。
中には、子会社を作って、そこに障害者を集め、障害の程度に応じたスピードで仕事をするようにしている会社も多くあるが、実は、これが難しい問題で、子会社に集める事が本当に良いのかという問題もある。
子会社に障害者と集め、特に何をするでもなく、ちゃんと仕事を教えるでもなく、できる仕事だけをさせている会社もあり、教えるための人件費を割くよりは、とりあえず、法定雇用率を守るために9時から17時まで居てくれれば良いとのスタンスの会社もあるらしい。
出勤すれば、夕方まですることはほとんどなく、郵便物の仕分け、開封などをして、宅配荷物の受け取り、関係部署への配達など1、2時間で仕事が終わってしまえば、あとはすることがない、なんて状態の所もあるらしい。
しかし、障害者にも人権があるし、意欲もある。
そして難しいのが、意欲があっても、健常者の中で一緒に仕事ができるのかと云う問題にぶつかる。
発達障害やパニック障害など、精神障害の場合、健常者と同じようにできる仕事もあるが、できない仕事もあり、部下を持って臨機応変に対応できるかと言えば、そこは制約が加わる。
そこで、何とか意欲を汲んで活躍の場を提供できないかと言われれば、実はそこも難しいのが現実である。
障害があっても、当たり前だが面談した際は、「将来的には昇進したいですし、企画部に行って新しい企画に関わりたいです」などと云う。
内心は、「精神的プレッシャーや激しい議論などに耐えられるの?」と聞きたくなる。
もしかしたら、厳しいやりとりに耐えられなくなり、休んだり辞めたりするんじゃないの?と問いたくなるが、そこは、意欲を否定することになるので、「そうですか」と曖昧に返事をしてごまかしている。
一般の社員であれば、企画なんて、給料に対してコスパ悪いからやめときなと、軽口をたたくこともある。
人事からは、一定数、障害者が配属されるが、教えるだけの人員は当然ながら配属してくれないし、その人件費を割くという発想は、利益の最大化という企業の目指す目標からすれば、優先順位は低い投資になっているのではと思う。
数年前、就職したい企業で上位にランクインしたことがある会社から転職してきた精神障害を抱えた人が入ってきた。
話を聞けば、9時に出勤して、ほとんどすることなく、夕方まで何か教えてくれることもなく、放置されていて、ネットを見て時間をつぶす感じの日々だった。と話していた。
なぜ、そこを辞めたのか、「意欲」はあったが、放置状態なので、もっと仕事をしている感覚になれる会社に入りたくて転職をしたと言っていた。
正直、本当に難しい問題で、法定雇用率を考えても、社会的責任を考えても、障害者雇用は必要だが、健常者並みの教育期間、生産性の確保は難しい。
障害者も人権があるし、意欲もある。
ただ、意欲を汲むほどコストはかけられない。
そして、障害者本人は何も悪くはない。自己責任にもあたらない。
まぁ、こんな感じで、答えのない感じで、うちでも何となくの雇用環境になってしまっている。
そして、この前、人事と飲みに行ったが、人事も、人によって特性に差があり、障害者の持つ「意欲」にどう応えていくか、担当レベルでは理想像すらない感じだった。
仕事をする上で、理想形や目標が描けないときほどやっかな事はない。
精神障害を持つ部下を最初に持って10年近く経つが、いまだに自分自身の中でも「こうすれば良い」との答えはない。
最近、少しオフィスで悩んでいる事である。
