「君はなんでここにいる?」
基地に帰ってくるなり景山は口を開いた。
「私も鹿児島の市電からある物を預かった」
杉本は机にある宝石と三日月パーツを指さした。
「鹿児島の市電って誰?江ノ電電車って?」
三神が話しに割り込んだ。
知らんぷりする景山。
ムッとする三神。
ものすごい露骨。やっぱり電車とは仲良くなるのは無理だ。
「鹿児島の市電は鈴木。江ノ電電車は田中。二人とも国連のエージェントでスパイだった。彼らはカルト教団とある企業を調査していてその過程でその遺物を手に入れた」
桑名は説明した。
「初耳だな」
それを言ったのは志村である。
「自衛隊や米軍には言っていない。政府内だけだ」
はっきり言う桑名。
「彼らが調査していたのはカルト教団「星の智慧派とゼウスグループという企業だ」
小角が重い口を開く。
「バカな。星の智慧派は六十年前に壊滅したハズだ」
いきなり割り込む和田。
「だが誰か復活させた。教祖はウエイトリー・ウイルパーだ。彼も八十年前のダニッチ村事件で死んだが誰かがクローン再生をしたようだ」
桑名が説明する。
「そんなバカな」
言葉を失うリリス。
ウイルパーといいダニッチ事件は自分の祖母たちが壊滅させた。
「その技術を研究しているのがゼウスグループなんだ。佐藤からもらった物はそれだけでなく地図も入っていた」
景山は地図を出した。それはなんのへんてつもない世界地図である。地図にはどこにも属さない言語でなにか書かれている。
おもむろに阿部は青い宝石を虫眼鏡のようにのぞいた。
長島もつられてのぞいた。
芥川ものぞく。
「クリスタルがあるのはこの洞窟だって」
芥川が地図を指さした。
「浜松市?」
ため息つく志村。彼は青い宝石をのぞく。しかしどの言語にも属さない言語で書かれて読めない。
「俺にも見せろ」
大和は志村から青い宝石をのぞく。
そこには謎の言語が崩れて日本語になっていく。
「おもしれえな言葉が訳される」
ニヤニヤ笑う大和。
三神ものぞいてみる。
見知らぬ言語が自分の知っている英語やロシア語で組み立てられ日本語になる。
「わかるのか?」
景山と桑名が口をはさむ。
「なぜかわからない。知らない言語が日本語になっていくの」
戸惑う阿部。
どうしてそうなるのか理解できない。そういう仕掛けがずっと昔から施されているとしかいえない。
「浜松市にある竜ヶ岩洞の今まで知られていない場所にあるって地図の言葉がそう言っているんだ」
芥川が言う。
「何かあったら困るから発信機を持って行きなさい」
桑名は発信機を渡した。
「じゃあその言語がわかった者同士でそこへ行くしかないだろう」
小角は言った。
竜ヶ岩洞。
赤石山脈の支脈に位置する標高三五九・一キロの竜ヶ岩山にあり洞窟を形成する石灰岩は二億五千万年に生成された秩父古生層と呼ばれる地層で形成されている。総延長一キロのうち四百メートルが一般公開されている。
洞窟近くのバス停にバスが止まった。バスから降りてくる三神、大和、長島、杉本と阿部、芥川の六人。六人とも街のどこにでもいるようなラフな格好である。彼らは入洞料を払うと洞窟に入っていく。
「僕・・・洞窟は苦手だなあ」
嫌そうな顔の長島。
何が嫌いってこの壁がせまってくるような閉塞感だ。
「我慢するしかないですね」
杉本は半分あきらめの顔で言う。
自分もこの閉塞感は嫌い。
「これなんかワニそっくり」
芥川は無邪気に笑う。
指さした鍾乳石はワニの形をしている。
「これなんかタケノコみたい」
阿部が足元にある鍾乳石を見て言う。
鍾乳石が四つタケノコのように伸びている。
「この青い宝石がはまる鍾乳石なんかあるのか?」
三神は青い宝石を見ながら言う。
とてもあるように思えない。
大和は周囲を見回す。
しばらく行くと大和は立ち止まる。その鍾乳石の中央にくぼみがある。
「これじゃないか?」
大和は指さした。
阿部たちはのぞいた。
その鍾乳石は聖母マリア像にそっくりである。いや本当に手をくわえたように教会にあるようなキレイな像である。
パンフレットにあるマリア像鍾乳石を見比べても明らかに違和感がある。
「やっぱり帰った方がいいんじゃない?」
心配になってきた三神。
この謎の地図も怪しい。
「でもここからクリスタルの声がする」
芥川が口をはさむ。
「じゃあはめこんでみよう。何も起こらなかったら帰る」
三神は言い聞かせるように言うと青い宝石をマリア像の胸にはめた。その象のかたわらに扉が現われた。大和はその扉を開けた。入口は光り輝いている。
三神たちは互いに顔を見合わせるとその中へ飛び込んだ。その部屋は教室がすっぱり入りそうなほどの部屋である。しかし壁には古代エジプトのような壁画がびっしり描かれている。絵の感じがエジプトに出てくる感じに似ている。部屋の中央の祭壇に水晶の結晶が安置されている。
「この壁一面に書かれているのは太古の戦いの様子だって」
芥川は”声”に従って壁を触る。
「わかるの?」
驚く長島と杉本。
「声が話しかけてくるの」
阿部が反対側の壁を触りながら言う。
「太古の昔。邪神が地球に降りてきた。そしてそこにいじゃた古のものと戦争になった。彼らは自身の持っている科学を持って抵抗。負けはしたがこれを撃退した」
芥川は壁を触りながら説明する。
「そして同じくして太古の昔に邪神を追って来た者たちがいた。次世代ミュータントの祖先である彼らは地球人たちに文明を教え邪神との戦い方を教えた。彼らは世界から違う世界へ渡り歩きそれを教えた」
阿部は説明した。
「なんか教科書と違う」
反論する杉本。
「図書館にもないよ」
つけくわえる長島。
黙ったままの三神と大和。
「邪神を追って来た彼らは同じく世界から世界を渡り歩いてはその世界にある惑星を飲み込んで支配する生命体を追って来た。
その生命体の名前はロイガー族である。彼らは紫色の実体のない高度精神体である。別の世界に十人。この世界には三人いる。彼らから地球を守りなさい」
芥川がトランス状態で言う。
「相手は宇宙人ってこと?どうやって戦えって言うんだ」
ため息をつく三神。
今の地球の科学力では無理だろう。
正気に戻る芥川。
阿部は水晶をバックに入れた。とたんに元の洞窟に戻った。
「あれ?」
戸惑う大和たち。
「あの部屋は存在しなかったんだ」
長島は辺りを見回す。
さっきの扉もなくマリア像も教会にあるようなものではなくなんとなくマリア像に似ている鍾乳石になっていた。
「基地へ戻った方がいいな」
三神は言った。
ー一時間後ー
待合室に入ってくる桑名と小角。
部屋にいる三神たち六人が振り向く。
「今からTフォース本部へ行く。君らに見せたいものがある」
桑名は手招きする。
彼らは二人のあとについていく。
黙ったままの三神と大和。
Tフォースの本部は国連ビルとアーカムにある。アーカムはマサチューーセッツ州エセックス郡に属しインスマスやダニッチにも道が通じている。昔は貿易で栄えたが現在では繊維工業が盛んである。また旧支配者や魔術に関係する研究する機関であるミスカトニック大学が存在する土地でそのそばに基地があるのだ。
彼らはいくつかの部屋を抜けて倉庫へ出る。倉庫にはコンテナが山積みになっている。
「今から見せる所はもう一つの本部だ」
桑名はそう言うとテレポート台に乗った。
三神たちも互いに顔を見合わせながら乗る。すると青白い光に包まれて消えた。次の瞬間現われたのはどこかのロビーである。そこには世界各地の軍隊の兵士や魔術師、Tフォース隊員たちが忙しく行き交っていた。
「ここは?」
三神はたずねた。
「ここはエリア51だ。我々Tフォースは魔物、邪神とそれを復活させようとする者達を取り締まる他にエイリアンも監視するんだ」
桑名はニヤリと笑う。
「だって宇宙人なんてガセネタでしょ」
長島が言う。
「実は存在する。ロズウエルや甲府事件。そして相次ぐUFO目撃事件。あれはエイリアンを見たという目撃例はたくさんある。エイリアンの存在を知っているいるのは政府上層部と国連、Tフォース、魔術師教会だけ。邪神ハンターや魔物ハンター、魔術師もその存在を知らせてある」
小角は説明した。
「そんなバカな」
言葉を失う杉本。
SF映画でよく出てくる場所が実在するとは初耳だ。
「ここと俺はなんの関係もない」
しゃらっと言う大和。
「来れば君にも関係があるんだ」
桑名はピシャリと言う。
彼らはロビーを抜け地下へ続くエレベーターに乗る。エレベーターは高速で降りていく。
「早いな」
感心する三神。
どのエレベーターよりも早い気がする。
ドアが開いて部屋に入る。
「次元ブリッジの中に我々はいる。あのクリスタルの部屋も次元ブリッジの中にあったんだ」
小角は言う。
「空間をつなげる魔術かそれとも自分であれがやっているのか」
声を低める大和。
速水から聞いたことがある。あいつも次元ブリッジを造り出すことができた。
部屋の中心におしゃれな酒場によくあるジュークボックスのようなものがある。高さは五メートル。音楽やネオンサインを出す中央部からぬうっと出てくる女性の上半身。青白く光沢がある。
大和はおもむろに女性に触る。
まるで硬質ゴムを触っているかのようだ。女性に見えるだけである。
三神たちはそれ以上近づかない。
どうやら彼女は精神体に近いものなのだろう。ジュークボックスに見えるのはどうやら入口と入口を結ぶものだろう。
「ファンタム。要所要所、歴史の合間に出てくる生命体だ」
桑名が言う。
「クリスタルに選ばれた者たちよ。よく来た。戦艦大和。巡視船「こうや」君らは邪神と戦わねばならぬ。そしておまえたちも協力して戦わねばならない」
ファンタムは厳かに口を開く。
「本当にそんなことできるのか?」
三神は疑問をぶつけた。
相手は高度知的精神体である。どうやって戦うのか?
「なんで俺を選ぶ?」
大和はドスの利いた声で言う。
ファンタムは両手を高く差し上げた。
彼らの前にホログラム映像がうつしだされる。それはどの3D映画よりもリアルで映像の中に自分たちは漂っていた。
自分たちがいつも読む新聞が出てきた。
”世界各地で大型の魔物現る”
”各国都市壊滅”
”タコに似た生命体出現”
第一面にその文字が躍る。そしてビジネス雑誌がでてきて”世界の終わり”という文字が踊っている。
そして邪神を見て見物する人物。
「あの人・・・ゼウスグループの社長の御曹司よ」
指摘する阿部。
「確かリチャード・マークスっていう名前で社長に孤児院で拾われた人だろ」
三神がふと思い出す。
確か社長には息子がいなくて娘ばかり。会社を継いでくれる息子がほしくて孤児院へ言ったのである。そうでなくてもゼウスグループは医療、製薬会社、不動産、工場、軍事工場など世界中に会社を持つ大企業である。三菱や東芝、日立についで日本でも有名だ。
その御曹司の姿が歪み崩れ、紫色の実体のない精神体に変わる。赤く光る目に紫色の半透明な体に濃い紫色のまだら模様がある。その生命体は鮮やかに装飾されたUFOに乗って去っていくという映像になった。
「おいファンタムとやら。俺になんか関係があるのか?」
つっけんどうに言う大和。
とたんに場面が変わり広島の街が映る。それも今の原爆ドームではなく原爆ドームになる前の建物になりビル群ではなく昔の家々が立ち並ぶ戦前戦時中の姿になる。そこから港が映し出された。戦時中は自衛隊の基地ではなく旧日本海軍の基地だった。そこの呉工廠に大和型戦艦がドック入りしている。
戦艦大和の周りに古賀峰一連合艦隊司令長官や有賀艦長の姿や警備の日本兵の姿が見えその兵士に交じって黒ずくめの魔術師が数人いる。桟橋から艦内へ入る速水誠少尉。そしてまばゆい閃光と光とともに合体した。
大和に旧日本海軍の幹部たちは米軍は敵であると教えていた。そしてトラック島では嫌がる戦艦大和を無理矢理ドックに閉じ込め何かを艦内に埋め込む改造をしていた。ドックのそばで黒ずくめの魔術師がいて彼らが呪文で大和を押さえつけている。そのかたわらで旧日本海軍の将校と一緒にあの御曹司もいた。
場面が変わり米軍のミュータントたちと戦う戦艦大和。そのパワーでミュータントたちを蹴散らしていた。
黙ったままの大和。
暴れだしたら止まらない大和に近づく葛城裕子。一人の巫女の前におとなしくなる大和。
戦艦大和を支配しているのは戦艦大和の法で速水は意識の奥でほとんど閉じ込められていた。
敗戦が濃くなり旧日本海軍の艦船も沈められることも多くなり栗田艦隊のなぞの反転と言われた影に黒ずくめの魔術師の指示で反転していく艦隊。ミュータントだった戦艦武蔵は米軍のミュータントと邪神ハンターにやられてコアを抜かれて沈んでいった。
また画面が切り替わると沖縄特攻で出撃する大和の部隊が映る。米軍の空襲にさらされる部隊。そして米軍機のあとに待つのは米軍のミュータントたちである。持てるパワーのすべてをぶつける大和とミュータントたち。死闘の末に大和はコアを抜かれて沈没。雪風はそのコアをこっそり拾って他の残った艦船と一緒に帰っていった。
だまったままの大和。
「ファンタム。なんで俺が選ばれたんですか?」
三神が口を開いた。
ファンタムが三神の方を向いた。
映像に十二才の三神少年と会っている老人。
が映る。老人は三神少年のおじいさんである。
名前は三神茂という。場面が変わり茂老人は邪神ハンターである。世界各地へ飛んでは邪神復活をもくろむ者たちと戦い魔物と戦い呼び出した下級邪神やアラジンに出てきそうなランプの魔人を倒していた。六十年前に復活しそうになった邪神クトウルーと戦って倒して元の世界へ戻していた。でも彼一人だけで倒しているのではなく仲間が常にいた。
「あれは僕のおじいさんだ」
長島が茂老人のそばにいた人物に気づいて指をさした。
阿部も殺人事件のニュースを見て誰だかわかった。ニュースでは白髪だったが顔立ちは若くても変わらない。
「あれは私の曾祖母だ」
杉本が指摘する。
長島の祖父の隣にいるのは自分の曾祖母である。彼女は客船と合体していた。
「よくわからないけど僕たちは”つながっている”と思う。だから選ばれた」
芥川は口を開いた。
難しいことはわからない。教科書に乗っていないことだらけで混乱しそうだけどこれらはすべて”つながり”があるのだ。
「俺たちがやんねえと他に戦える奴がいねえってことか」
大和は何かを決めたように顔を上げる。
一度死んだのに雪風のきまぐれで自分は蘇った。他にやることは思い当たらないから邪神退治も悪くない。
「だけどどうやって邪神なんかと戦うんですか?」
三神がたずねた。
「心配するな。おまえさんのおじいさんが残した武器がある。ファンタムからもらった武器がある。そして大和。おまえさんにもあるんだ」
今まで黙っていた桑名は口を開く。
ファンタムはうなづくとジュークボックスに似た扉の奥へ消えた。
「来い。渡すものがある」
小角は手招きする。
彼らはさっきのエレベーターに乗った。
数秒後。どこかの倉庫へ着いた。
「三神。これが君のおじいさんが着用していた物だ」
桑名は両腕に装着するタイプの篭手や眼とレットを渡す。
「大和。葛城家に伝わっているものを渡す」
小角は箱を渡した。
大和は箱を開けた。中には胸当てや篭手が入っていた。
「おまえさんたちはこれだけだ」
桑名は杉本や長島に腕輪や指輪を渡す。
長島と杉本は指輪や腕輪をしてみる。
「大和と三神以外はロビーで待機だ」
桑名は笑みを浮かべる。
「ついて来なさい」
小角は長島たちを連れ出して倉庫から出て行く。四人が出ると扉が閉まった。
「ファンタムが次世代ミュータントを選ぶ理由はな。人間やミュータントではどうしても限界があった。だから我々を選ぶ。それを着けたらある物を見せてやる」
桑名は重い口を開く。
三神と大和は深くうなづくと装備を身に着けた。せつな三神の腕や二の腕にプラグが食い込み奥へ入っていく。火であぶられるような痛みにくぐくもった声を上げて床に転がる三神。両腕から緑色の液体がしたり落ちる。
大和にも異変が起こっていた。何か冷たいものが体内を突き上げプラグやコードが入っていく。
大和の脳裡に米軍のミュータントと戦って何度も砲撃をくらってコアをえぐられるそんな映像がよぎる。あのむなしい気持ち。くやしい気持ちは忘れられない。彼は胸をかきむしり床に倒れた。
「ぐはっ!!」
大和は口から緑色の液体を吹き出す。
二人の体内から肉が割れ、骨がきしむような耳障りな音が響く。大和は胸やのどをかきむしりながら叫び声を上げた。
その頃。小角たちは別の小部屋にいた。
「クリスタルをこの台に置いて」
小角は嘱台をさした。
阿部は指示どうりにクリスタルを据えつける。クリスタルが淡い輝きを放つ。
阿部たちの脳に直接声が響く。
”あの電車からもらった地図は張古代遺物を示すものである。それを狙う者たちから守るのが役目である”
その声は男性の声だ。ファンタムの声ではない。
「私たちに選択権はないんですか?私は家庭もあるし仕事をやめるのは難しい」
思わず反論する杉本。
まだ子供が中学生と小学生がいてまだまだかかる。おまけに仕送りしないといけない。
「僕だって生活がかかってる」
困惑する長島。
急にはやめられない。
「それなら心配するな。大和はともかく三神と君らは呼び出しがあったときに基地へきてもらい仕事をしてもらう」
小角はフッと笑う。
「でもそんな受け入れられるものでもないよね。いきなり連れて来られたからね」
杉本は思ったことを言う。
うなづく長島。
「そうよね」
納得する阿部と芥川。
考えてみれば自分たちも巻き込まれるとは思ってなかった。
「日本支部の本部はこことここだ」
小角はホログラムに出す。映像に日本地図が出て赤い点が示される。
「茨城の百里基地と神奈川の妙見市の自衛隊の補給廠である。電車で行かなくても呼び出しがあればファンタムが空間をつなげてくれる。これがクリスタルゲートのある場所だ」
四人とも映像をのぞきこむ。
「へえ。東京駅の銀の鈴ってあれはクリスタルゲートだったんだ」
驚きの顔をする芥川。
「クリスタルゲートってけっこうあるのね。魔術師や隊員が各地にいることを考えれば当然ね。オブジェになっていたりシンボル的なものの奥に隠れているのね」
阿部はつぶやくように言う。
「これが鍵。持っているだけでいい」
小角はペンダントを阿部に渡す。
芥川、杉本、長島の三人にキーホルダーを渡した。ペンダントもキーホルダーも小さなクリスタルがついている。三人は携帯電話にくっつけた。
何時間たったんだろうか?
三神は目を覚ました。しかしそこは倉庫である。かたわらに大和が倒れている。
「気がついたか?三十分倒れていただけだ」
桑名は三神のてを引っ張り立たせる。
三神はそでをまくった。篭手や眼とレットっがなくなっている。
「君らが装着したものは体内に組み込まれた。クリスタルに選ばれた者だけに反応して少々改造をくわえるように出来ている。君のじいさんはその武器を置いて行方不明になった」
桑名は説明する。
いきなり跳ね起きる大和。
「そういう便利なものなのか」
大和はうれしそうに言う。
大和の電子脳の片隅に現在の体内の状況と周囲の情報が入ってくる。
「おもしれえ」
「おまえさんは旧日本軍の周波数を使わなくても通信できるようになっている。二人とも新たなパワーがくわわったはずだ」
小角は言う。
うなづく三神。
巡視船なのは変わらない。その代わり武器が魔光弾に変わっている。魔光弾は別名魔弾銃と呼ばれ魔物ハンターや魔術剣士が使う武器でさまざまな魔術効果を詰めた専用武器のことをいう。これを装備するのは魔物ハンターや邪神ハンターと魔術剣士だけだ。
満足げな顔の大和。
「では見せたいものがある。そこでは阿部さんたちも合流することになっている」
桑名は言った。
三人は倉庫を出ていくつかの部屋を抜けて階段を上がり司令室のそばを通り別の部屋に入った。その部屋は何かの観測室になっているのが巨大な望遠鏡があった。
望遠鏡のそばに阿部、芥川、杉本、長島の四人と小角がいる。
「ここは観測室だよ。私はシド・オルバスよろしく」
五人のそばにいた米国人が名乗った。
「あのノーベル賞候補のシド博士だよ。なんかの雑誌で見た」
三神はつぶやいた。
数々の論文を出していてノーベル賞にもっとも近い男と言われている学者だ。
「いやそれほどでもないよ」
後ろ頭をかくシド。
「君らには見てもらうのはこれだ」
シドはそこにあったテレビをつけてCDを入れる。
画面に南極のオーロラが映る。緑色の光の帯が夜空を彩る。
「オーロラだ。キレイ」
無邪気に笑う芥川。
場面が変わって今度は黄金色の帯が映っていた。
「これもオーロラ?」
長島がわりこんだ。
「これは”亀裂”だよ。バミューダトライアングルにおもに現われるんだ。これに飲み込まれると船舶や航空機は行方不明になり二度と帰ってこない原因がこれ」
シドが重い口を開く。
「ファンタムはこの亀裂を通ってやってきた。それがロズウエル事件の真相だね」
シドがしゃらっと言う。
「ええええ!!」
三神たちは驚きの声を上げた。
「大昔からクリスタルとの接触は報告されていた。でも本格的な接近遭遇は初めてだった。それまでは声だけだった。例えば聖書エレキゼル書の供述は宇宙人遭遇やファンタムとの接触を描いている。昔の聖人と呼ばれる人々はファンタムやクリスタルと接触していた可能性があるのだ」
シドは望遠鏡の周りをくるくる歩きながら説明した。
「それは解釈にすぎない」
はっきり否定する杉本。
「都合よくないですか?」
長島がつけくわえる。
「ノストラダムスもその”声”を聞いてあの本を書いた可能性があるのだよ。彼らは何らかの形で接触してきた。それだけはいえる」
シドは報告するサラリーマンのように言う。
「あの亀裂の向こうはどうなっている?」
大和が話を切り替えた。
「ファンタムに言わせると別の世界がある。そこにはもう一つの地球があったりする。でも世界は一つだけでなくさまざまな世界が存在する」
桑名がモニターに映る亀裂を見ながら言う。
「えっ?」
「さまざまな世界では次世代ミュータントのことを機械生命体と呼んだり別の世界では共生種と呼ばれていたりする。そして邪神と戦うための組織があったりする。次世代ミュータントの先祖は旧神と一緒にやってきてそこの人々に邪神との戦い方を教えたようだ」
小角は複雑な顔で説明する。
「僕たちの先祖はエイリアンだったんだ」
思わず声に出す長島。
「なんだか信じられないよ」
杉本は戸惑う。
「そうかもな。人類がサルから進化したのを考えれば俺たちは何から進化したのはずっと不明だった。ずっと遠い昔にやってきたエイリアンと考えればわかるような気がする」
三神はうーんとうなりながら納得した。
「君たちはもう一人の仲間をくわえてはじめてチームといえる。もう一人は和田保安官なんだ」
桑名は写真を渡す。
「え?」
「あんな落ちこぼれでも役に立つぞ」
小角は言った。