阿部、芥川、杉本、長島の四人は暗視スコープをつけた。つけないと辺りは薄暗くて見えないのだ。
三神、大和、和田は暗視スコープがなくても周囲が見えた。
この夜刀浦にはJR線、私鉄、道路は通っていない。したがってひと気はない。
七人はひときわ大きな洋館に入った。
三神は合図する。
三神と大和、阿部、のチーム。和田、杉本、長島、芥川のチームに別れた。
三神と大和、阿部は展示物が展示されている大きな部屋に入る。
アンティークの調度品や絵画がいくつか飾られている。正面にある絵画は人肉を貪り喰う食屍鬼が描かれている。題名もそのまま「食事をする食屍鬼」である。
他の絵画も巨大タコや神殿らしいものが描かれていた。
阿部は基地でもらったライトスタッフという魔術杖をかざす。
杖の先端部が輝く。周囲を辺りを照らす。
フッと映像がよぎる。
屋敷や町を闊歩する半漁人の姿が映る。
「俺から離れるな」
三神は片腕を機関砲に変形させた。
「来たな」
大和も片腕をバルカン砲に変えた。
壁や天井を這う半漁人。蛙のように飛び出した眼球。エラ、水かきとウロコを持つ水生生物である。彼らは深海で生活しており苦闘ルーを信仰している。老化で死ぬことはなく繁殖力も高い。人間とも結婚して子供を作ることができる。その場合ははじめは人間、ミュータントそっくりだが成長してくるとインスマス面という蛙めいた顔になっていく。顔も体も深きもども・・・デイープワンと呼ばれるものになるのだ。
しかしその半漁人は防弾チョッキを身に着け顔に小型マイクとスコープをつけている。
彼らはサバイバルナイフを投げた。
三神が動いた。その動きは阿部や半漁人たちには見えなかった。彼はナイフを払いのけジャンプして飛び蹴りしてひじ打ち。天井と壁に這っていた半漁人は床に落ちた。
大和は振り向きざまに飛びかかってきた半漁人を殴った。半漁人は数メートル離れた壁にたたきつけられた。
部屋の奥から数十人の半漁人が飛びかかる。
大和と三神は阿部を守りながらクルクル回りながら機関砲やバルカン砲を連射。青白い光線が半漁人たちを貫いた。
「トライアングルアタック」
奥から女性の声で呪文が聞こえた。
大和はとっさに阿部と三神を突き飛ばしたせつな燃え上がった瞬間に凍り、稲妻がまとわりついて感電。三姉妹のナイフが大和の胸を突き刺しとっさによけた三神の背中や腕を突き刺した。
雪風が宙を舞い跳ね起きた三神を蹴り飛ばし殴って阿部をつかみ抱えて闇に消えた。
三姉妹も部屋を出て行った。
三神は顔をしかめ腕に刺さっていたナイフを抜いた。
「大和。大丈夫か」
三神は倒れている大和に駆け寄る。
大和の胸にナイフが深く突き刺さっている。しかし彼は口からしたたる緑色の液体をぬぐいナイフを抜いた。
三神は驚きの顔をする。
この戦艦・・・すごい。三姉妹の必殺技くらって軽症だ。あの三姉妹は海保やTフォースも苦戦してきた相手だ。
部屋に駆け込んでくる和田たち。
「阿部さんが連れ去られた。このままの方向で行くと小笠原諸島の先端にある地図にない島へ行く」
和田はモニターを見せた。
「志村さんたちには知らせた」
長島が口をはさむ。
「船へ戻ろう。俺たちをも追おう」
三神は言った。
三姉妹と雪風は航行する貨物船に着地した。
雪風は抱えていた阿部を放した。
甲板には米国人とミュータントがいる。
ひと目見てマークスとウイルパーというのはわかった。
「君が阿部君か。なかなかキレイだね」
マークスはなめまわすような目線で見る。
「生贄にするのはもったいないよ」
ウイルパーは阿部が持っていたバックをまさぐって金メダルを出した。
「この金メダルはもともとは十個あったのだよ。残りの九個はどこにあるか知らない。私も探しているんだ」
マーカスは金メダルを見ながら言う。
「ルルイエ神殿ですか?」
阿部が口をはさむ。
「ルルイエも魅力的なんだ。しかし本当はクロスエレメントというものがほしいんだ。そうすれば兄貴たちを呼べる。そしてこの地球を飲み込んで我々のものにできる」
マークスはニヤニヤ笑う。
言葉を失う阿部。
マークスが宇宙人なのは知っている。しかし今の地球の科学では太刀打ちできない。勝てる秘策なんてあるんだろうか。
「そんなことさせないさ!!」
濃密な霧の奥からぬうっと現われる戦艦大和と巡視船「こうや」と観光船「ロイヤルウイング」とユニヴァーサル号。船内から舞い降りる芥川、和田、杉本。
「来たんだね」
ウイルパーは笑った。
「三神君、和田君。海上保安庁なんかやめて私の会社で働かないか?」
マークスは誘った。
「やだ」
きっぱり断る三神と和田。
うまい話には何か裏がある。
「杉本君。小田急なんかやめてうちに来ないか。給料はいいよ。家族だってもっとマシな暮らしができる。長島君もうちの会社の観光部門で雇うけど」
クスクス笑うマークス。
「外国はやだな。言葉通じない」
嫌そうな顔の長島。
「私には難しいことはわからない」
肩をすくめる杉本。
この不況じゃあどこも同じだ。
「戦艦大和。私の会社に来ないかね。そうすれば今までの疑問や謎が解けるだろう」
誘うマークス。
黙ってしまう大和。
「そんなに誘ってどうするの?君の会社はたくさん従業員がいるじゃん」
それ沈黙を破ったのは芥川だ。
「Tフォースだ。おまえたちは包囲されている」
テレポートしていくる護衛艦「しらね」「みょうこう」「さわゆき」「あまぎり」のほかに軍用オスプレイが何機か出現した。
雪風は舌打ちした。詠唱していた呪文を唱え、金メダルを高く差し上げた。
阿部は雪風に飛びついて金メダルを奪い取った。
空に雷鳴が鳴り響き、風が吹いてきた。暗雲たれこめた雲が渦巻いた。
「しまったあ」
アメリカ沿岸警備隊の巡視船「ハミルトン」
がくやしがる。彼は警備隊員のウイロである。
「地球の命運は尽きたな。他の世界にいる兄貴たちの手を煩わせることなく私のものになるんだ」
マークスは笑いながらどこかへテレポートしていく。
「また会おう」
ウイルパーは笑みを浮かべながらどこかへ飛び去った。
地響きを立てて何かが浮上しつつあった。
雪風は駆逐艦に変身するとその島へ走っていく。
「鬼界島だ」
「やしま」こと沢本隊長が言う。
「あの島へ行こう」
思い切って言う三神。
「そうしよう。チーム7はあの島へ行く」
戦艦大和は腹を決めたように言う。
深くうなづく阿部、芥川、杉本。
「僕もなんとかがんばるよ」
自信なさげに言う長島。
「クリスタルがあの島の中心にある祭壇に置けって言っている」
芥川はバックから竜ヶ岩洞でもらったクリスタルを見せた。
和田は巡視船「あそ」に変身した。
「上陸したら私がそこへ走る」
杉本は真剣な顔になる。
阿部と芥川、杉本は「あそ」に乗った。
霧の奥からコウモリの翼を生やしたタコがたくさん飛び出した。邪神眷族群だ。あの姿はクトウルーの眷族だ。彼らは主である邪神クトウルー同様の姿をしている。
飛翔音がして戦闘機のミュータントがミサイルで眷族群を撃ち落していく。
「沿岸部には魔物警報が鳴っている。自衛隊やTフォースに出動命令が出ているから心配するな」
「しらね」こと志村はミサイルで空飛ぶタコを打ち落としながら声を荒げる。
その後方にリリスが合体するQE2や他の客船が見え、霧の奥から魔術師たちやTフォース隊員たちが空を舞いおのおのが持っている魔術や武器で撃ち落すのが見えた。
三神、戦艦大和、和田、ロイヤルウイングは霧の奥へ進んだ。
しばらく行くと深い霧からなにか船舶が現われた。
立ち止まる三神たち。
沢本隊長や志村たちははるか後方で邪神眷族群と戦っている。それに襲来のときは自衛隊も出動する。前方から来るものは援軍ではない。
それは旧日本海軍の艦船だった。駆逐艦「愛宕」や「戦艦陸奥」を先頭にいろんな種類の艦艇が隊列を組んで航行する。
上空を機首を並べてゼロ戦の編隊が飛んで行く。
「大和。これは幻だ」
三神は目を吊り上げた。
一式陸攻の窓から古賀峰一長官や山本五十六長官が手を振っている。
黙る大和。
隊列の中に戦艦武蔵がいた。どこにも欠けた所はない。そんなハズはなかった。自分はファンタムの映像で沈むのを見たし、実際の戦場でも武蔵がやられるのを見ている。
「消えろ!!幻め」
大和の主砲が火を噴いた。隊列を組む艦隊に向かって青白く光る三式焼夷弾が炸裂した。
かき消すように消える艦船群。
「行くぞ」
大和はスピードを上げた。三神たちもついていく。
濃い霧の向こうに途方もなく巨大な岩柱やアーチ型の門が見えた。すべてが大きかった。門や通路だけでも東京ドームが丸ごと入りそうなほど大きかった。
「これでルルイエの一部なんだな」
声を震わせる和田。
伝承と書物だけでその存在すら幻でないかと言われていた島が浮上したのだ。
島は運河で結ばれているようだ。
大和たちは奥へ進む。
川岸には半漁人たちがうろついている。彼らの手には銃が握られ防弾チョッキを着用していた。
運河を進むと二つに分かれた運河が現わる。
「俺は右を行く。あの方向にあいつがいる。あいつとケリをつける」
大和は口を開く。
「俺たちは左を行く。生きて帰ったら宴会をやろう」
三神は言う。
「そうしよう。幸運を」
大和はそう言うと右の運河を進んだ。
しばらく行くと東京ドームが二個入りそうな部屋に出た。そこに駆逐艦「雪風」がいた。
「雪風。おまえは俺に会いたいわけじゃない。あいつに会いたかったんだろ」
疑問をぶつける大和。
「そうさ。ワシが会いたいのは速水少尉だ。おまえなんかじゃない!!」
目を吊り上げる雪風。
「そうだと思ったよ。おまえはあいつに惚れてたんだ。だがおまえはあいつを蘇らせることはできずに邪神を復活させることに変更した。でも復活はしない。金メダル一つでは浮上しない。おまえの企みは消えるんだ。幸運の駆逐艦「雪風」すっかり幸運に見放されたな」
大和はビシッと主錨で指をさした。
「幸運は消えはしない。ワシはこれでも邪神ハンターの端くれ。おまえも道ずれにしてやる」
雪風は声を荒げた・
左側の運河を進んだ「こうや」「あそ」ロイヤルウイングの三隻は行き止まりの岸壁に上陸した。
「あそ」から降りる阿部、芥川と杉本。
杉本は電車に変身した。
ミュータントに戻った三神たちと一緒に阿部たちも車内に乗り込む。
石畳の上を走行するロマンスカー。
「小田急の沿線以外の所を走るのははじめてだ」
つぶやく杉本。
木々は捻じ曲がり草は渦巻き霧の中を半漁人たちがこちらの様子をうかがっている。
「なんでジジイたちは俺をおまえのチームに入れてくれたんだろう」
ふとつぶやく和田。
「桑名さんたちに役に立つからといわれて入れた。君は役に立っている」
三神はフッと笑う。
今思うと落ちこぼれだけど役立っている気がする。
「そう言われたのは始めてだ」
うつむく和田。
最初から海保や邪神ハンターになるつもりはなかった。なる前はチンピラ。祖父と父親の進めで入隊した。邪神ハンター試験にも受かった。初めて組んだ相手がこいつだった。こいつの祖父が凄腕のハンターとは初めから知っている。祖父にさんざん耳にタコができるほど言われた。
「おまえっていい奴だな!!」
思わず抱きつく和田。
「やめろ。気持ち悪い」
押しのける三神。
自分はそんな趣味はない。
「僕たち殺人事件に巻き込まれただけなのにものすごいことになっているね」
長島が車窓を眺めながら言う。
「そうね。私は大和事件に巻き込まれた」
阿部がポツリと言う。
「僕はクリスタルの声を聞いただけだ」
芥川が言う。
「・・・つながり。私たちはつながっているのよ。私の祖母は大和と仲良かった。しかしその大和は奴ら・・・たぶん宇宙人に暴走するように改造された。そしてあなた方はカルト教団を壊滅させたチームの孫。そのカルトを操っていたのも邪神を復活させようとしたのもマークスみたいな宇宙人よ。彼らの企みを阻止しないとまずいわ」
阿部は真剣な顔で言う。
「もちろんそのつもりでいる」
三神が言う。
「でもゼウスグループには優秀な弁護士が何人もついていて起訴することは難しいそうだよ。相手は世界的に有名な企業だから一筋縄にはいかないと思う」
杉本が車内アナウンスでわりこむ。
「それはそれで邪神の復活を阻止して遺跡、遺物を守れればいいさ。俺たちは自分たちでやれることをやろう」
三神が強い口調で言う。
それしかないだろう。
和田たちは深くうなづいた。
「あの神殿だよ。あそこへ行って」
車窓を眺めていた芥川は指さした。
雪風は呪文を唱えた。彼の周りの海水が津波のように立ち上がり両側から大和をはさみこみ龍のように巻きつく。
「ぐああ・・・」
万力で全身を締め付けられるような痛みに声を上げる大和。
雪風は別の呪文を唱える。赤い光る槍がいくつも現われて動けない大和の船体を貫いた。
くぐくもった声を上げて暴れる大和。
雪風の主錨といくつかの鎖が赤く輝いたかと思うと彼が動いた。
大和の船体中央部にナイフで深くえぐったような傷跡があらわになる。
「暴走しないのか?」
雪風は笑いながら大和のコアをつかんで力を入れた。
大和はうめき声を上げてよろける。
「ワシはおまえを蘇らせたのにおまえは速水少尉を消した。だから返すべきなんだ」
雪風はコアを引っ張った。
「と・・・取られてたまるか!!」
大和は怒りをぶつけた。青白い閃光と衝撃波が雪風を弾き飛ばし数百メートル離れた壁に激突した。
大和は雪風に向けて副砲や機銃を撃つ。
雪風は間隙を縫うように走り呪文を唱えた。大和の回りに竜巻がいくつも現われた。その竜巻が大和の船体をその先端部でえぐる。それも一つだけであなく竜巻は意志を持つかのように次々えぐった。
思わず声を上げてもがく大和。
「そのコアはワシのものだ!!」
雪風はえぐった大和の船体に再び鎖を突き入れてコアをつかむ。
「おまえのものであるわけがないんだ」
大和の主錨が青白く輝き雪風を殴りつかみ壁にたたきつけて放り投げた。
主砲を向ける大和。彼はひらめいた。
「魔光裂光弾」
彼の主砲が火を噴く。弾は黄金色に輝いている。雪風は別の場所にテレポートした。しかし徹甲弾も軌道を変えて雪風に命中した。そして黄金色の閃光が走り風船が破裂するように四散した。
景山からもらった変化の地図を見る三神。
地図は日本地図ではなくて鬼界島の地図に変わっていた。
神殿の前で停車するロマンスカー。
車外へ出て神殿に入る阿部、芥川、長島、三神、和田。
ミュータントに戻って追いかえる杉本。
神殿はギリシャにあるバルテノン神殿に造りが似ている。しかし途方もなく巨大だ。そのそもこの島も建物も眷族群用に造られているからだろう。
部屋の中央に祭壇がある。
部屋の奥から山口号と新幹線700系が出てくる。テロ組織「ロイヤルズ」のボスとメンバーなのは知っている。700系の運転席の窓に輝く二つの光は赤く輝き、SL山口号の前照灯も赤く輝く。
「ここでおまえらは終わるんだ」
山口号はビシッと鎖で指さす。そして姿が崩れ蝕椀が飛び出す。
700系も同様に新たな器官が生え膨れ上がり拡大して触手が生えた大木のような物になり二つともくっついて一つになる。
丸太のような蝕椀を振り下ろた。
飛び退く三神たち。
阿部と芥川は巨大柱の影に隠れる。
「バルカン砲」
三神は片腕を機関砲から16連射バルカンに変形させ山口と700系だった大木を撃つ。
弾は青白い弾が連続で連射される。
大木の怪物にすべて命中した。
すげえ。思ったとおりに変形する。
和田は長剣を抜くと触手を切って行く。
「ファイア」
長島は腕輪をはめると呪文を唱えた。バスケットボールほどの大きさの火の玉が切断した傷口を焼く。
紅ひょうたんを出す杉本。
行く前に基地でもらった。ひょうたんの蓋を取るとバズーカー砲が飛び出す。これも魔弾銃である。死んだ結城が持っていた武器と同じものだ。
杉本は触手をよけながら撃った。弾は凍りの弾である。怪物の枝に当たると凍る。
大木の怪物は口や蝕椀が火を吐いた。
たちまち部屋の温度が上がる。
「ブリザド」
「吹雪」
和田と長島が呪文を唱える。
部屋内に雪や氷のかけらが吹き荒れて温度が下がる。
阿部と芥川は柱から柱へ隠れ、触手をかわしながら祭壇に近づく。
柱を背に炎をかわす三神。
このままじゃあ拉致が開かない。バズーカーみたいな物があれば吹っ飛ばせる。
三神がそう思った時である。虚空から魔弾バズーカーが出現した。彼は目を丸くしてそれをおもむろに肩にかつぐ。バズーカーからプラグが飛び出し彼の背中に接続される。
「魔光衝破弾」
三神は精神を振り向けた。
バズーカーから青白い光線が飛び出し広がった。大木は青白い光線に焼かれ塵になった。
阿部と芥川は柱から飛び出し祭壇へ行くとクリスタルを据えつけた。
三神は胸を締め付けるような痛みにひざをついてバズーカーを落とした。バズーカーは落とすと消えた。
「大丈夫か」
駆け寄る和田。
うなづく三神。
痛みはすぐ消える。
「大きなパワーを使ったからだと思う」
長島が気づいたことを言う。
杉本は紅ひょうたんを持っていたバズーカーに向けると吸い込まれた。
なかなか便利なひょうたんだ。
「みんな旧神が来るわ。脱出よ」
阿部が叫んだ。
杉本は電車に変身して車体からいくつもの鎖を出して三神たちをつかんで車内へ入れて走った。
神殿を飛び出すと虹色の光線がいくつも降り注ぎ空の彼方から人間に似た炎の生物がやってくるのが見えた。両端の尖った円筒状のものにまたがり腕に似たしなやかな付属器官に司教杖を持ちその杖を振るうと青白い光線が放出される。その光線を浴びた半漁人たちは塵と化した。
その光線を縫うように走行する杉本。
地面に大きな断層が走りさっきまでいた神殿が崩れた。
「もっとスピードでないの?」
長島がそわそわしながら言う。
「私は新幹線じゃない。それ以上でない」
きっぱり言う杉本。
地割れがすぐそこまで迫っている。
この祠の向こうは岸壁である。
そのつもりで来たが岸壁が崩れて海になっていた。海面はあっちこっちで渦潮ができている。
「まずい。ユニヴァーサル号呼ぶうちに沈むぞ」
三神が身を乗り出して叫ぶ。
和田はひらめいた。
「レビテト」
空を飛ぶ呪文を杉本にかけた。フワッと浮かぶロマンスカー。
「デムスウイング」
長島は風の呪文を唱えた。強風が車体を押して飛んだ。さっきまであった地面が崩れ海に没した。島から遠ざかる杉本。
閃光とともに衝撃波が同心円状に広がった。
背後で不気味なキノコ雲が上がる。
しばらく飛ぶと濃い霧が晴れて太陽が見えた。朝日である。
「夜明けだぁ」
車内で喜んで抱き合う三神たち。
立ち止まって向きを変える杉本。
濃密な霧が晴れて霧の奥から巨大な艦影が遠ざかっていくのが見えた。
戦艦大和である。
思わず三神に抱きついてキスをする阿部。
口笛を吹く和田。
「やめろよ」
赤面して押しのける三神。
まだ好きでもなんでもない。
「危険の中で生まれたロマンスは長続きしないもの。だから好きは言わない」
じらすように言う阿部。
「俺だって好きは言わない。もうちっといい女はミュータントにもいる」
意地をはるように言う三神。
あきれかえる杉本と芥川。
「とりあえず基地へ戻ろう」
杉本は言った。