ビジネスの場面でよく耳にする苦言があります。それは、「話が長い」。
会議でも、商談でも、飲み会の席ですら、この一言をもらってしまうと場の空気が凍ります。本人は熱心に伝えているつもりでも、聞き手からすれば「結論が見えない」「何を言いたいのか分からない」と感じられているのです。
では、なぜ人は「話が長い」と言われてしまうのでしょうか。実はそこには明確な共通点があります。
第一に、背景説明が延々と続くこと。相手がまず結論を知りたいと思っている段階で、経緯や詳細を長く語ってしまう。聞き手の集中力は冒頭で尽きてしまい、その後の大事な部分が頭に入らなくなります。
第二に、情報を整理せずに思いついた順に話してしまうこと。頭の中の流れをそのまま口にするため、話が前後し、聞き手が迷子になってしまう。本人は「全部伝えた」と思っていても、相手は「結局何が言いたいの?」と疑問だけが残ります。
第三に、自分の中での“オチ”が弱いこと。最後まで聞いても「だから何なのか」が伝わらない。話の締めが曖昧だと、どれだけ長く話しても印象は薄れます。
私自身、セールスの現場で数多くの失敗例を見てきました。せっかく良い提案をしているのに、前置きや補足に時間をかけすぎてチャンスを逃してしまう。あるいは、自分の努力を説明したい気持ちが強すぎて、相手の興味が薄れていく──そんな光景は決して珍しくありません。
さらに厄介なのは、「自分では長いと思っていない」ことです。本人の中では筋が通っているつもりでも、聞き手にとっては要点が見えない。ここにギャップがある限り、いくら熱心に話しても相手には届きません。聞き手の集中力は商談の最重要事項です。
だからこそ、「話が長い」という指摘は改善のチャンスだと受け止めるべきなのです。
大切なのは、「話が長い」と指摘されることを単なる性格の問題だと片づけないことです。そこには必ず「構造上の欠陥」があります。だからこそ改善できるのです。
まずは一度、自分の話し方を振り返ってみましょう。背景説明から入っていないか? 情報を順序立てずに話していないか? 最後に結論がぼやけていないか? この三つをチェックするだけで、話の無駄は大きく減らせます。
次回は、「どうすれば短く、的確に伝えられるのか」を具体的に意識すべきことを具体的な改善方法として解説します。ほんの少しの工夫で、「話が長い」と言われる人から「分かりやすいね」と言われる人に変わることは十分可能です。
相手にとって心地よい会話を届けることができれば、信頼関係は一気に深まり、ビジネスでも人生でもチャンスは確実に広がっていきます。
