前回までのメルマガでは、クラウドファンディング型不動産投資の構造的な脆弱性について触れてきました。

なかでも象徴的なのが「みんなで大家さん」問題です。

 

名前こそ“大家さん”と付いていますが、実際には不動産を所有しているわけではありません。

投資家は、匿名組合を通じて資金を出しているだけの“出資者”であり、建物や土地の所有権を持つわけでも、賃貸経営の決定権を持つわけでもありません。

 

この“名称トリック”こそ、多くの人が「理解したつもり」になる最初の罠です。

 

今回はその“次の一歩”として、構造ではなく心理面から見たリスク──

つまり、後発クラファン企業がどのように“効率よく資金を集めるのか”に焦点を当てます。

 

🔹高利回りで惹きつける

 

「年利10%」「配当保証」といった数字は、投資家心理に最も強く響く訴求です。

しかし、実際には、その前提条件や算出根拠が開示されていないことが多い。

 

🔹短期運用で安心感を演出

 

「6ヶ月で償還」など、期間の短さが安全性の証のように見えます。

しかし、短期案件ほど資金繰りに依存しやすく、運転資金が止まれば延長は容易です。

 

🔹少額投資でハードルを消す

 

「1万円から投資可能」と聞くと、リスクが小さく感じられます。

ところが、小口投資家が分散するほど監視の目が弱まり、声が届かなくなるという逆説があります。

 

🔹社会性ワードで善意を誘導

 

「地域創生」「再エネ」「空き家再生」など、社会的意義を前面に押し出す。

しかし、社会性と安全性は別問題。目的が立派でも、資金構造が脆弱なら結果は同じです。

 

🔹“特典”や“流行語”で安心感を上乗せ

 

「Amazonギフト券がもらえる特典」「抽選方式で当たる楽しみ」「クラウドファンディングという流行り言葉」──

これらは投資そのものよりも“参加の楽しさ”を演出するための仕掛けです。

人は「自分が選ばれた」「お得を得た」と感じると、リスク認知が下がります。

つまり、特典や流行語は安心の演出であり、実際の安全性を保証するものではありません。

 

一部には「透明性の高い情報開示」や「担保付き」といった表現も見られますが、その多くは“見せ方としての透明性”に過ぎず、第三者機関や外部評価を伴うものではありません。

 

極論を言えば、運営会社が倒産すれば法的に回収が困難になるケースもあります。

信託やエスクローの有無は、倒産時に投資家資金がどう扱われるかを左右する重要な分岐点です。

 

“大家さん”という言葉に安心し、“高利回り”という数字に惹かれる。

しかし本当に見るべきは、仕組みの裏側と資金の出口です。

 

一昔前に流行したソーシャルレンディング然り、この手の手法は、次から次に世に出ては消えていきます。

だからこそ、投資家自らが学び続け、リテラシーを磨くことが、自分の資産を守る唯一の防衛線となるのです。