個人事業主の方の中には、自分で記帳を行い、確定申告もしている人がいるのではないかと思います。

 

 もし、副業を事業所得にして税務的メリットを受けたいのであれば、青色申告(複式簿記方式)による申告が必須ですが、たとえ事前に青色申告承認申請書を提出したとしても、いい加減な記帳をしていると、後になって青色申告承認を取り消されてしまう場合があります。

 

 サラリーマンのAさんは、無地のスニーカーを買ってきて、自分で色染めして、オリジナルのスニーカーを制作するのを趣味にしていました。

 ある日、試しに自作のスニーカーをハンドメイドサイトに売りに出したところ、思いがけず人気が出たため、これを副業にすることを思い立ちました。

 

 初年度は10万円以上を売り上げたので、2年目以降は課税が発生すると見込んだAさんは、開業届けと青色申告承認申請書を提出したところ、知り合いから「副業をするには取引記録が必要」とのアドバイスを受けました。

 

 しかし数字が苦手なAさんは、やらなければと思いつつも、記帳を先延ばしにしてしまい、期末になって慌てて作った帳簿は歯抜け状態に。

 結局、税務署に持って行っても、「これではダメ」と突っぱねられ、節税メリットがほとんどない白色申告(簡易簿記方式)で確定申告をすることになってしまったのでした。

 

 現在、国税庁から副業を事業所得と認めてもらうためには、2つの条件が提示されています。

 

《副業を事業所得と認めてもらうための2つの条件》

1、帳簿書類の保存

2、副業収入で本業の年収の10%以上の売上を上げていること

 

 かつて白色申告には、記帳等の義務はありませんでしたが、2014年以降、白色申告か青色申告かに関係なく、記帳と帳簿書類の保存が義務化されました。

 しかし個人事業主の中には、いまだに帳簿をつけていなかったり、領収書を取っておかなかったり、という人が散見されます。

 今後、この義務を怠った事業主は雑所得の扱いになりますから、注意が必要です。

 

 では、Aさんのように数字系が苦手な人は、どうすればいいのかというと、自分でやろうとせずに、外注することをお勧めいたします。

 

 個人事業主の中には、「何でもかんでも自分でやらなければならない」と思い込んでいる人や、「他人に頼むのはお金がもったいない」などと考える人がいます。

 なるべく経費を節約しようという気持ちはわかります。しかし、たとえ経費を払ったとしても、その分、事業で売り上げを上げられれば、そのほうが良いのではないでしょうか。

 記帳や確定申告などを、外注に依頼すれば、記帳漏れや手続きミスなども防げますし、精神的にも不安なく事業に邁進できるでしょう。

 

 ただでさえ、サラリーマンの余暇は限られています。

「自分の貴重な時間をどこに費やすのか?」というのは、事業主を志すビジネスパーソンにとっては、非常に重要な問いの一つです。ぜひよく考えてみていただければと思います。

 

俣野成敏


 

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