昨今のインフレは、消費者としては頭の痛い問題ですが、「この状態が続けば、日本の状況は改善する可能性がある」と言っている人もいます。世界3大投資家の一人とされるジム・ロジャーズ氏です。
長年、日本政府と日銀は、デフレ脱却のために、年間2%のインフレ目標を掲げたり、金融緩和政策を行ったりしてきましたが、結局、デフレを脱却することはできませんでした。
ロジャーズ氏は、「長年にわたる日銀の金融政策の失敗が、将来に対する消費者の見通しを不安にさせた」と述べています。
とはいえ、インフレを引き起こしたければ通貨を増刷すればいい、というのは確かです。
通貨といえども、需要と供給で成り立っています。インフレとは、通貨価値の下落ですから、通貨量が増えれば、その分だけ価値が下がるのは当然、ということです。
だったら、なぜもっと早くインフレが明らかにならなかったのかというと、発行された通貨の多くが、日銀の当座預金に眠っていたからです。
よく、ニュースなどで「金融緩和政策によって、通貨がどんどん刷られた」などと言いますが、実際に紙幣が印刷されて、世の中に流されるわけではありません。
現在のお金の多くは、預金です。預金とは、実体のないバーチャル通貨であって、振り込みも、銀行口座の付け替えに過ぎません。
世の中の取引の多くは、銀行振込でやり取りされていますから、金融緩和などと言っても、本当に紙幣をばら撒くわけではないのです。
本来、当座預金のお金は、銀行が企業などの求めに応じて貸し出し、それで経済が回っていきます。しかし、銀行がそれをしなかったために、当座預金からお金が出て行きませんでした。
当座預金からお金が動かず、世の中のお金の量が変わらなかったのですから、なかなかインフレが起きなかったのも当然なのです。
結局、日本で体感できるインフレが起きるには、コロナやウクライナ戦争という、対外的要因が波及してくるのを待たなければなりませんでした。
もちろん、当座預金のお金を無理やり貸し付けて、強制的に市場に流すという手もあったかもしれませんが、バブルで手痛い目に遭った後でしたから、金融機関がそれを躊躇したのも、無理のないことかもしれません。
それだけ、日本は需要が不足していたということであり、“デフレスパイラル”とは、よく言ったものです。
ロジャーズ氏のおっしゃる通り、インフレが続くことで、本当に日本経済が上向くのかどうかはわかりません。しかし、氏の言う「消費意欲が低い状況から抜け出すには、(日本は)投資を増やす方法を見つける必要がある」という意見には一理あります。
少子高齢化が進む今の日本で、革新的な企業などが出てくる可能性は低く、今後もサラリーマンの収入はなかなか増えないでしょう。インフレによる手取り収入の目減りを抑えるには、資産運用を行って、将来への備えとすることが必要なのは間違いありません。
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俣野成敏
《参考文献》
DIAMOND online:2025年4月13日
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