閉塞感が漂うと言われるようになってから久しい日本ですが、どうしたらこの状況を打破できるのでしょうか。
世界3大投資家の一人と言われ、日本贔屓としても知られるジム・ロジャーズ氏が、日本の若者に向けたメッセージがこちらです。
「内向きと言われている日本の若者も、外へ出て、誰も知り合いがいなくて言葉も通じない国へ行ってみるべきです。冒険しないと、つまらない人生になってしまいますよ」(『世界的な大富豪が人生で大切にしてきたこと60』ジム・ロジャーズ著、2015年、プレジデント社)
ロジャーズ氏は、『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』(ジム・ロジャーズ著、2019年、講談社)の中で、「日本の内向き思考は、パスポートの取得件数にも表れている」と言い、2017年は22.8%にとどまっていることを挙げています。
日本人のパスポート保有率が2割を切ったのはコロナ禍の2021年のことでしたが、コロナが明けてからも、回復していません。
アメリカの保有率が約5割、韓国が4割、台湾が6割と比べると、2割にも満たない現状は、まさに今の日本を物語っているようにも感じられます。
ロジャーズ氏は、冒険投資家として知られています。例えば1988年に中国をバイクで横断した際に、「これからは中国の時代が来る」と中国の台頭を肌で感じ、投資をして資産を増やしています。
度々、周りから「あんなところに投資をするなんて、どうかしている」と言われながらも、大きな成功を収めてきたわけです。
本書の発行はコロナ前の2019年ですが、すでに「日本の経済を復活させるにはインバウンドに頼るほかない」と発言するなど、実際に世界を見てきたロジャーズ氏ならではの未来を予測した分析が興味深いものとなっています。
これは、若者だけに限った話ではありませんが、個人的には、現状を打破する方法として、過去の自分を捨て去る勇気が必要だと思います。
かつて、日本企業は世界市場を席巻しましたが、当時のハードが中心だった世の中から、現在はソフトが中心の世の中へとシフトしています。
現在、世界で日本企業の重要度が低下してきているのは事実であり、そうであるからには、その中で働いている私たちも、「この先、自分のキャリアのレールは途中で途切れる可能性がある」「そうなった時、自分はどのような身の振り方をするのか?」ということを、考えておくべきでしょう。
私自身、社会人としてスタートした時の目標は、「大企業に入ること」でした。幸い、希望は叶いましたが、入ってみると言いようのない違和感を覚えたものです。
最初、私はその環境に順応しようとしましたが、結果的には抗う道を選びました。さもなければ、今頃はまだ、会社から与えられるわずかばかりの恩恵にしがみつきながら、大企業の中で不満を抱えていたのかもしれません。
「自分のレールの先にあるものは期待なのか?それとも絶望なのか?」と、考えてみてください。
もちろん「レールを変えるのは大変だから」と、見て見ぬ振りをすることはできます。けれどそのまま歳をとり、結局、自分が何に振り回されてきたのかもわからないまま、一生を終えることほど辛いことはないのではないでしょうか。
俣野成敏
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《参考文献》
日経新聞Web版:2025年2月20日、他