かつては似たような立場の人間しかいなかった日本の職場も、今ではすっかり様変わりし、非正規社員や外国人、自分より年上の部下など、マネジメント対象者も多岐にわたるようになっています。
産業能率大学総合研究所が行った「第7回上場企業の課長に関する実態調査(2023年)」によると、50%以上の課長が「年上の部下がいる」と答え、他にも「テレワークをしている部下がいる」「時短勤務をしている部下がいる」など、多くの管理職が、多様な勤務形態の部下を持ち、管理する立場にあると回答しています。
最近、よくある管理職の悩みとは、「部下が自分より年上の場合に、どう接していいのかわからない」というものでしょう。そうでなくとも、部下から「何であんな奴が俺の上司なんだ」と思われたり、言うこと聞いてくれなかったり、というのを心配される方は多くいます。
長年、マネジメントを行ってきた私の経験から述べると、実のところ、自分が上司だからといって、「部下に敬ってもらわなければ言うことを聞いてもらえない」とか、「部下に好かれなければ動いてもらえない」という考えは思い込みに過ぎません。
人間として好かれたい気持ちがあるのは当然ですが、相手が嫌だと言っているのを、役職で何とかしようとしても、どうにかできるものではありません。
そこはひとまず置いておいて、仕事における部下の判断基準を「仕事の役に立っているか、立っていないか?」という軸にシフトさせるべきだと考えます。
身も蓋もないことを言うようですが、マネジャーは「人は自分が得することでしか動かない」ということを肝に銘じておくことです。
つまり、「自分は部下に嫌われているから動いてもらえない」のではなく、部下に「この人の言うことを聞いたら自分が得をする」と思わせていないから、相手は動かないわけです。
結局のところ、自分が部下を動かそうとしているのは、自分が困るからであって、相手が好きだからではないはずです。
仕事で組んでいるチームは、友だちの集まりとは違うわけですから、仕事で成果を出すことに集中すれば、もう少し穏やかな気持ちでいられるのではないでしょうか。
相手に動いてもらいたいと思うなら、いかに「相手に先に得をしてもらうか?」が大事です。まずは部下に得をしてもらい、それによって彼らが会社に貢献し、その結果が自分に返ってくる、という流れです。
部下に「これは得だ」と感じさせる要素は、いろいろあると思います。たとえば出世、ボーナス、昇給、昇進、報奨旅行、食事に招待、希望部署に異動できるチャンス等々、多くのインセンティブが会社の中には用意されているでしょう。
こうしたものを活用し、手持ちの仕事の中から相応しい業務と部下の能力をマッチングさせ、部下に活躍してもらうこと。これが、マネジャーたるあなたの役目なのです。
もちろん、部下に接する際は、インタレスト(相手への興味)とリスペクト(敬意を払うこと)を忘れずに。
俣野成敏
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