「時間がない」状態とは、たいていの場合、自分のやるべきこと、やりたいことが、時間に対して多過ぎることを言います。

 

 社会人であれば、多かれ、少なかれ、時間がないものですが、この状況を解消する手立てはあるのでしょうか。世界3大投資家の一人と言われるジム・ロジャーズ氏の言葉をもとに考えてみましょう。

 

「本当に忙しい人よりも、実は暇な人の方がいつも『時間がない』と言っているのです。要するに、忙しくない人というのは怠惰で時間管理能力が低いのです。私はリタイア直後にこのことを思い知りました。退職後の数ヶ月間、時間はたっぷりあったのですが、何も成し遂げることはできなかった。仕事で忙しい時のほうが、よほど効率的に動けたのです」(『世界的な大富豪が人生で大切にしてきたこと60』ジム・ロジャーズ著、2015年、プレジデント社)

 

 ロジャーズ氏は、かつて同じく世界3大投資家の一人と呼ばれるジョージ・ソロス氏と共にクォンタム・ファンドを立ち上げ、10年間で4200%という驚異的なリターンを上げた後、37歳で一度、現役を引退しています。

 この名言は、引退当時の話です。

 

 40歳にもならずして、お金も、時間も、たっぷりある生活。ところが、ロジャーズ氏は数ヶ月で飽きてしまい、以後、冒険投資家に転身しました。

 

 大富豪・ロジャーズ氏の日常とは、毎日6時に起床し、午前中はエクササイズをしながらニュースやメールをチェック。合間にヘッドフォンを付けて電話インタビューを受けたり、電話会議をしたり。

 午後から夕方にかけては、自宅で会議を開くこともあるそうです。

 

 ロジャーズ氏ほどの有名人であれば、取材の申し込みやビジネスの依頼がひっきりなしでしょうが、意外に健康的な生活を送っていることがわかります。

 運動しながらニュースやメールのチェックをするというのは、大富豪には似つかわしくない“ながら仕事”ですが、そのほうが集中できるという、引退時の経験からくるものでしょう。

 どうやら、自分自身を忙しくしていることが、ロジャーズ氏の時間管理術のようです。

 

 実際、忙しい時のほうが、かえって時間を有効に活用できることは、誰もが経験しているでしょう。それは忙しい時のほうが、活発に頭や体を使っているため、その勢いで、何をするにもテンポよく行動できるからかもしれません。

 

 たとえば私も投資家ですから、時間はほぼ自由です。でも、私はあまり忙しくしているのは性に合いません。ですから、定期的に自分のスケジュールに空白の時間を作っておき、そこで調整するようにしています。

 

 私の時間管理術とは、他人と約束することです。私にもルーティンはありますが、それ以外をフリーにしてしまうと、行き当たりばったりになってしまいますから、約束を入れることで、行動に強制力を持たせているわけです。

 

 このように、時間を無駄なく使えるようになるためには、ある程度の“型”が必要です。時間がないとお悩みの方は、まずはご自身の型作りから始めてみてはいかがでしょうか。

 

俣野成敏


 

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