1991年
アッと驚く指名だった。練習試合とはいえ十一、十二日の試合では古田、池山ら主力選手も出場している。一軍はおろか、二軍でも1試合も公式戦の登板経験がない大内にとって、これは大きなチャンスでもあり、また試練の場でもある。二軍戦では、ネット裏でスコアラーを務めていた男なのだ。「今しかないチャンスです。(ヤクルトの)主力は一生懸命じゃないでしょう。向こうが手を抜いていようが関係ないですよ。抑えりゃ自信になるし、ヤクルトの主力を抑えたって言われるし…。こっちは本気でいかなきゃ」1989年、東海大四高からドラフト外で入団の右腕。背番号は91。エリートとは程遠い。浮上といえるのが、今年、アリゾナ教育リーグに選ばれたこと。しかし、6試合に登板したものの、防御率は5点台。宮崎秋季キャンプのメンバーには入れず、居残り練習の日々を送っていた。そんな大内にとって幸運だったのは、木田の腰痛が思わしくなく、キャンプから強制送還されたことだ。すでにキャンプは後半に入っていたが、首脳陣は渡辺と大内を呼び寄せた。「言われたのは四日か五日です。でも代わりとか、そんなことは関係ないです。チャンスはチャンス」補欠合格ではあるが、一軍でやれるのは大きい。そしてこの抜てきだ。しかし、今はスタートラインにようやく立った段階。十二日、藤田監督は「意外にまとまっている。いいね」と評価したが、続けて「それより渡辺が良かったよ」とも言っている。まだまだ、の印象も強い。「(首脳陣が)どこを評価して起用してくれたのかは今はいい。投げてから、外から評価される方がいい」球種はカーブ、スライダー、ウイニングショットのシュート、そして「いいときで142~143㌔」のストレート。これらを武器に新しい星が生まれるか。